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『砂の虚像』 ~あとがきのあとがき~

あとがきを書いて……まだ書き足りないので、こちらに色々と書き留めてみようと思います。笑

ありがたいことに『砂の虚像』は、私の中で最長の作品となりました。
以前は、一万字にも満たない短編を書くのにひいこらしていた私ですが……今回の作品で約四万字。自分は一生短編しか書けない人間だと思っていたので、こうしてボリュームのある作品を自分が書いたんだなと思うと、しみじみ、感慨深い気持ちになります。

あとがきでお話ししたとおり、この作品は、私自身の過去、大学をドロップアウトした経験がもとになっています。だからなのか、伝えたいこと、書きたいエピソード、シーン、心理描写、セリフがとにかくどんどんあふれてきました。結果的にそれらのほぼ全てを、作品内に収めることができました。作者としてとても満足しています。(その分めちゃくちゃ長くなりましたが……w)

物語を紡ぐとき、私の場合、おおまかな流れは決めますが、書いてみて初めて分かることの方が意外と多かったりします。

例えば洸太は、私の思った以上に精神的に強い子でした。私の中で、もしかしたら彼も薫と同じように限界がきてドロップアウトするかもしれない、ストーリーとしてそういうパターンも考えていたのですが、そうはなりませんでした。
やっぱり彼の生来の強さ、というか一本筋の通った、逞しく、強い人格が常時彼の中に必ず潜んでいて、彼のふとした行動や台詞で、それが垣間見えました。

最後、彼が出す決断も、書き進めていく中で、洸太自身が見つけていったものです。洸太が最後に、何を選ぶかは、私自身も最後まで分かりませんでした。

また、逆に薫は、洸太というしっかり者が横にいるせいか、私が想定していたよりもおっちょこちょいで天然さんになりました(笑)
(スマホ忘れたり、ウソにまんまと引っかかったり)

でも、それ以上に繊細で、人の痛みが分かる優しい男性でした。
彼は私の生き写し……というか、彼を通して私が伝えたいことをふんだんに盛り込んでいったのですが、私は彼みたいに優しい人間にはなれませんw

書きながら、どんどんと薫と洸太が寄り合わさっていく――洸太の弱さや脆さを、薫の優しさが包み込んだり、なかなか自分のことを気づけなかったり動き出せない鈍(にぶ)ちんな薫を、洸太がきちんと言葉で伝えて、動き出すきっかけを作ってくれたり――と。

真逆だけれど――どこかに、確かに、同じものを感じさせる二人が、そうやって補って寄り添い合いながら、それぞれの、自分にとっての幸福の道標を見つけていく姿を見て、私も嬉しくなりました。

三月洸太という人間を描くにあたって、私が影響を受けた人物が二人います。

ひとりは、手越祐也さん。一番最初、洸太のアイドルとしての器用で多才な姿を思い浮かべたとき、手越祐也さんが私の中でしっくりきました。

私にとって手越さんは歌もダンスもトークもうまくて、とにかく多才なイメージだったのです。
手越さんと洸太は性格や立場こそ全然違いますが、『アイドル・三月洸太』という人物像を作り上げていくにあたって、手越さんがテレビで活躍する姿を参考にさせていただきました。
(余談ですが、今、彼はYouTubeをはじめとしたSNSでとても活躍されてますよね。あんなスーパーポジディブで我が道を行く姿はとてもかっこよくて、めちゃくちゃ憧れます)

あと、もうひとりはアニメ『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスというキャラクターです。
知らない方も多いかと思いますが、これは私が『砂の虚像』を執筆している最中に、ちょうどハマって観ていたのです。笑

私の作品に登場する男性は、柔と剛だと、どうしても柔に寄りがちです。(美樹や、聖、蒼、そして薫ですね)
これは私がフィクションの世界で優男キャラが好きなのもかなり影響しています。笑

そんな中、洸太はとても強気で逞しい男の子。
アッシュも十七歳という若さでストリートの若者たちを束ねる天才です。
剛であるアッシュの喋り方や、まだ若いのに強く逞しい姿が、アニメを観ていて知らず知らずのうちに私が影響を受けて、洸太がアッシュ色に染まっている部分も実はかなりあります(笑)
(話は横にそれますが……BANANA FISHは本当に面白くて素晴らしい作品……名作なので、ぜひ見てほしいです!現在、アマゾンプライムやネットフリックスで配信しています)

また、洸太とは違って、薫にイメージキャラクターはいませんが、薫のイメージを膨らませるために『優しい』やら『包み込む』やら『柔らかい』やら『繊細』やら……ノートにずらずらとそれっぽい言葉を書き出していったのですが、『慮(おもんぱか)る』というフレーズがしっくりきたので、薫を描くときは『慮る』を常にイメージしていました。

また、最後の握手会のシーン。これは、当初予定になかった場面でしたが、実は、ある男性芸能人の握手会でのファンの方への素晴らしい対応・エピソードを知り、参考にさせていただきました。薫も彼のように心優しい、ファンの、その人の痛みを感じ取って、言ってほしい言葉をかけてあげられる人であってほしい、という願いも込めて。

……そして、毎度おなじみの青木ゆうですね。笑
彼は今回、作中ではサブポジションに徹していますが、作者としては、これぐらいのほうが書きやすいな〜、と、安心しています(笑)
(とにかく、前作『消えない灯火』で彼を中心に据えたら、書くのに悪戦苦闘を強いられたのでw)

話は飛びますが、スリーセブンズというアイドルグループ名……本当にダサいですよね(笑)コンビニじゃあるまいしw
もうね、私の壊滅的ネーミングセンス。いくら考えても、全っっ然いい名前が思い浮かばなかったんです。許してください(泣)

そうそう!今回の「砂の虚像」の時系列ですが、「藍色の向日葵」で藍子と青木ゆうが対談してから、エピローグで舞台終わりに彼らが再会するちょうどその空白期間に起こった出来事になります。本当は作中で明言できればよかったんですけどね~。読者さんの中には「これっていつの話だろう?」と気になっている方もいらっしゃるかもしれないのでここに書いておきます(笑)

私は小説を書くにあたって、あまりメッセージ性やテーマのようなものを意識しません。小説は私にとって娯楽という立ち位置でしかないので、最初にテーマをど~んと掲げて、考えさせられたり、問題提起をするような書き方はしないんですよね。イメージして、膨らませて、それらを書き落として、出来上がったものを見て「ああ、この作品はこういうものが軸になっているんだな」と初めて気づくというか……。

けれど今回この作品は、かなりメッセージ性が強いものになったように感じました。書き始めるとき、「こういうことを読者さんに伝えたい!」「皆に気付いてほしい!」みたいなことは実はあんまり考えていなくて……薫が洸太に伝えたいこと、言ってあげたい言葉、とにかくそれがたくさんあったので、それを書いていったら……「あぁ、これは私が、私自身に伝えてあげたかったことなんだ」と、途中で気が付きました。

私自身が過去に悩んだこと、苦しんだこと、それらを通して感じたこと……そういう人生経験がこうして小説という形で昇華されていくとは……人生って、不思議なものですよね。

……さて、ここまでつらつらと話し足りないことを書いてきました。昨日書き上げたばかりの作者の、思考の大掃除に付き合ってくださり、ありがとうございます。笑

もし、感想をくださる方がいれば本当に本当に、嬉しく思います。コメント欄に書いていただければしっかりと読ませて頂きますので!

本編以外にも、このあとがきのあとがきの、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

千寿(すずちん)

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