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あなたの孤独に寄り添う映画『思い出のマーニー』

こんにちは、すずちん(千寿)です^^

この度は、私の小説『光の輪』を読んで頂き、ありがとうございます!!

まだ読んでない方はこちら↓
https://estar.jp/novels/25743842

こちらの小説は、私の所属するかんころ編集部というオンラインサロン内の企画で『わたしの好きな映画』をテーマに書き上げたものです。

ジブリ映画『思い出のマーニー』

読者の皆さまはご覧になられたことはございますか?

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私は、初めて観たのは今から6年前。上映中の映画館で、当時は大学生でした。見た感想は、なんだか静かで柔らかい、素敵な物語だなぁ、という漠然とした印象。特別な何か感情や感想を抱くことはありませんでした。


……けれど、時が経つにつれて、『あぁ、あの映画やっぱり好きだなぁ』『大ヒットとかはしてないけど、私は好きだなぁ』と、折に触れて、何度も何度も噛みしめるようにそんなふうに感じることが多くなりました。


……なぜ、あの映画に惹かれたのか?


初めて見たときはよく分からなかったけれど、今ならその理由が、よく分かります。


それは、主人公である杏奈(あんな)
私にとって、とても身近な存在だったからです。


ジブリのヒロインといえば、ナウシカやシータなど……凛としていて男前で、気品や誠実さを持ち合わせる、正統派な女性が多い印象ですよね。しかし、杏奈は全く違います。


思春期の杏奈は、複雑な家庭環境を重く受け止め、自分の殻に閉じこもってしまいます。『私が私のことが嫌い』だと、モノローグで語っています。

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また、彼女の為を思っての大人の親切な行為にも、『お節介だ』と、愚痴を吐いたり。杏奈のそういった不器用で、決していい子とは言い切れない部分が、なんだか等身大でリアルで、とても共感してしまうんですよね。


周りの状況や自分の置かれた環境から、ふさぎ込んでしまったり、素直に助けてと言えなかったり。そのくせ大人の親切は、うざいと感じたり。思春期を経験した人なら……いや、大人になった今でも十分、杏奈のそんな人間らしいちぐはぐな部分に、自分を重ね合わせてしまうのでは? と思うのです。


私は杏奈と違って、養女ではありません。学校でも、人間関係にあまり苦労をしたことがありません。それでも、杏奈という少女の言動に、『あぁ分かるなぁ』と、共感してしまうことが何度もありました。


だからといって、杏奈がすごく悪い子か?というと、全然そんなことない。誰でも小さく持ち合わせている未成熟で繊細な心を、杏奈もまた持ち合わせているだけ。


……つい、周りから距離を置きたくなる瞬間や、大人に対しての警戒、素直に愛情を受け取れないもどかしさ。一言では言い表せられない自分の複雑な環境や悩みや心持ちを、杏奈は、マーニーとの出会いを通して少しずつほどいていきます。

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  (左:杏奈       右:マーニー)


マーニーという少女との出会いを通して、暗かった杏奈が少しずつ感情を表に出して、笑顔を見せてくれると、なんだか見ているこちらまで、あぁよかった、と心が潤います。ただのシンデレラストーリーじゃない。杏奈は杏奈の中で悩みながら、マーニーに手を引かれて、自分なりの答えを見つけていく。そんな彼女の成長が、たまらなく愛おしい。

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何かに行き詰まったり、現実に疲れてしまったりする瞬間に、私は、彼女たちに会いに行きたくなります。彼女たちが懸命に『自分』を生きようとする姿に、心が洗われるから。


大きな事件や劇的な展開は起こりません。だけれども、映画の中での杏奈とマーニーたちの交流を見ていると、自分の中で濁っていた気持ちが洗われて、それまでしかめ面だった表情筋の力が抜けて、ゆっくりと、優しく柔らかく希望を持てるのです。闇に飛び交う蛍を眺めるように。

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……また、そんな映画で感じた自分なりの想いや考えを、白川や三上を通して描きました。


二人とも『いろんなものに恵まれているけれど、なぜだか苦しい』そんな境遇にあります。なかなか、周りから見ると理解されにくい心境です。


けれど、そんな二人だからこそ、お互いの悩みや心の在り方について、他の人よりほんの少しその形や質を掴みやすかったり、理解しやすかったり。また、それまでの学生生活であまり関わりがなかった距離のある者同士だからこそ、心を素直にオープンにできてしまう一面もあったり。


自分の気持ちや心を晒すって、とても勇気がいるし、ちょっぴり恥ずかしいこと。ある意味、裸を見せる感覚に近いのかもしれません。


だからもしあなたの前に、心の内を見せてくれる人が現れたときは、生まれたての赤ちゃんを抱っこするように、そっと優しく、受け止めてあげてほしいです。

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ちなみに、思い出のマーニーの主題歌は洋楽なのですが、これがまた映画の世界観と綺麗に重なり合っていて……優しくて、でもどこか寂しげな曲調や歌い方、また、歌詞に込められた意味なんかも、杏奈の心境に通ずる部分があり、本当にこの映画にぴったりな曲です。ぜひ聴いてほしい。

https://youtu.be/Yb2arWjBhp0
(↑今回の小説やこのnoteの記事も、この曲を流しながら書いています)


世の中には、色んな形の素晴らしい映画がたくさん存在します。


その中で、こんなふうに、『振り返りたい』『語りたい』と思うぐらい『いいなぁ!』と感じられる作品に出会えたことって、実はとても貴重で、尊くて、恵まれたことなんだなぁ、と思うのです。


「そういえば私の好きな映画って何だろう?」と考えたとき、何かしらの作品が浮かんだ人は、ぜひその作品への想いを大切にしてみて下さい。


そんな風に好きだと感じてくれる人間がいるという事実が、映画を作っている人たちへの最高のプレゼントです。彼らにとって、あなたのそんな想いが何よりの喜びであり、勇気と自信と、また新たな創作意欲に繋がりますからね。


また、パッと思いつかない人は、これから時間をかけてゆっくり見つけていくのもいいかもしれません。


私は、話題作は見に行こうかなーぐらいの普通の人間で、映画通というほど詳しくはありません。


……が、それでも今までいろんな映画に出会う中であまりの衝撃に、見終わったあとも現実世界になかなか意識が戻ってこなかったり、魂を掴まれ揺さぶられ、涙と嗚咽が止まらなかったり、たまらなくエキサイティングでハラハラドキドキさせられたり……二次元という平面世界から放たれる、身体じゅうの細胞をぞくぞくと震わせられるような、稀有な体験を、何度もしています。


映画というフィクションの世界でありながら、現実世界の自分の心が行ったり来たり、揺さぶられたりする。そういう体験ができるのが、映画の醍醐味なのではないかな、と思います。


また、もし私の小説やこの記事をきっかけに、思い出のマーニーに興味を持って、観ていただけたら、とても、とても、嬉しいです。


『思い出のマーニー』は、あなたや、誰かの孤独に寄り添ってくれる作品です。


私は、自分が辛いときに、なかなか他人にそのことを打ち明けられません。言えると癒える、なんて言葉もありますが、どうしても、心の奥で何かが引っかかって、喉から、その弱音を吐き出すことができないのです。


他人に頼れない理由は色々とあると思いますが、その一つに、『この吐き出した本音を誰かに否定されたり、適当に扱われて、傷つくのが怖い』というものがあります。


だからこそ、私には、この映画が響くのかもしれません。『思い出のマーニー』は、私の孤独に寄り添ってくれるけれど、決してそれを否定したり投げやりに扱わないから。


ただただ……『あぁそうだったんだね』『辛いことがあったんだね』『一人で抱えているんだね』『じゃあしばらくの間、あなたと同じように孤独を感じている彼女たち(杏奈やマーニー)の交流をそばで眺めていようか』って、声をかけてくれる感覚があるのです。

思い出のマーニーに限らず、フィクションの作品というのは、他人と分かち合えなかったり、誰にも言えないあなたや誰かの心のそばにいてくれる、そういう側面があると思います。相手が人間でないからこそ、傷つけられる心配がなく、安心して自分の心を委ねることができるからなのかもしれません。


……たかがフィクション。されどフィクション。


私は、フィクション作品との出会いによって、人生を大きく変えるきっかけをもらった人間です。だからこそ、フィクションという創造世界の素晴らしさを知ってほしいし、あなたにも体感してほしい。


――どうか、今のあなたの心に寄り添ってくれる、素敵な映画と巡り会えますように。


長くなりましたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございます^^

この小説を通して、思い出のマーニーについて触れ、自分の想いをひとつの形にできたことに、感謝して。


――そして、この小説を通して、あなたと出会い、繋がれたことに、感謝して。

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すずちん(千寿)

画像引用:ジブリHP

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