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魔法学園RPGハーベスト 劇場版小話①「虚空を漂う夢を見る島~The Dream of a Butterfly~」

※本記事は、魔法学園RPGハーベストの劇場版シナリオ「虚空を漂う夢を見る島~The Dream of a Butterfly~」のネタバレを含みます。シナリオをプレイされた方のみご覧ください。

こんにちは、魔法学園RPGハーベストデザイナーの涼宮隼十です。

今回から、備忘録も兼ねて、劇場版シナリオと呼ばれているシナリオ群の裏設定や作成秘話などを公開していきたいと思います。
4年以上前に書いたシナリオもあるので、うろ覚えの部分もありますが、実際のシーンを追いながら記述していこうと思います。

シナリオ構想について

このシナリオは、記念すべき最初の劇場版です。実は、シリーズ化するつもりはありませんでした。最初は、長い時間をかけて、じっくり物語に入りこむことができるシナリオを1本書こうと思って書いたものでした。

劇場版シナリオの中で、このシナリオのみ、明確な元ネタがあります。(ぶっちゃけまだハヤトが未熟だったのでその頃は元ネタありきのシナリオばっか書いてました)
その元ネタは、ゼルダの伝説夢を見る島です。最近Switchでリメイクもされたので、ぜひお時間ある方は遊んでみてください。めっちゃ面白いです。

シナリオのテーマが夢なので、タイトルはめっちゃ胡蝶の夢に寄せてます。

シナリオ内容について

シーン1
PC1の回想シーンですね。夢の中です。
普段の姿と比べるとめっちゃ違和感のあるドロシーですが、劇4をプレイした方ならご存知の通り、幼い頃の本来のドロシーに近いです。
そして違和感の通り、このシーンにおけるドロシーは、本物のドロシー・フロム・オズではありません。

実はこのシーンが本シナリオで最も大切なシーンです。

モルフェスは、シーン23の最後において、「初め私は暗い森の夢を見ていた。そこには、少女1人しかいなかった。」と発言しています。
このシーン1は、夢を表現しているシーンです。つまり、シーン1におけるドロシーは、本物のドロシーではなく、モルフェスの夢の中のドロシー(以下、『夢ドロシー』と呼称)なのです。
なぜ、モルフェスの夢の中に最初に生まれた少女が、ドロシーそっくりだったのか、というと、モルフェスはそもそも、七つの大罪であるレヴィアタンに器として身体を乗っ取られたことによって夢を見せられているんですね。
ワールドパートの七つの大罪のページを読むとわかりますが、レヴィアタンは夢を操る能力を持ちます。その能力で、生物に夢を見させ、その夢の大きさに比例した魔力を手に入れています。
そして、モルフェスが見る夢には、モルフェスに寄生しているレヴィアタンの意識も大きく影響しています。
その影響の結果として、レヴィアタン含め七つの大罪を封印し欠片とした憎き魔法使いである「ドロシー」の姿がレヴィアタンを通じて表現されているため、ドロシーそっくりの少女「夢ドロシー」がモルフェスの夢の中に表れました。ただし、「夢ドロシー」は、「ドロシー」と全く異なるかというとそうではありません。このあと、pc達がモルフェスの夢の中に入り込んでいく中で、pcたちの知る「本物のドロシー」のイメージも合わさって、混ぜこぜになっている部分があります。つまり、夢ドロシーは、「ドロシーであるが、ドロシーではない」というなんとも哲学的な状態になります。難しくてよくわからんという方は別人と思ってくれて大丈夫です。

ただ、ここで大事なのは、モルフェスの夢は、モルフェスやレヴィアタンなど、夢を見ている人がもともと持っていたイメージを組み合わせただけの世界でしかないんですね。つまり、セイレーンやザン、セレナ、アケロウたち夢の世界の住人たちは、そのモデルとなっている人物が確かに魔導次元のどこかに存在している(いた)ことになります。

シナリオ中では言及されていませんが、モルフェスを器としたレヴィアタンは、魔導次元のさまざまな街を襲ったりしていたため、もしかしたらその中に、セイレーンやザンそっくりの少年少女がいて、それをレヴィアタンがモルフェスの夢の中に具現化したのかもしれません。
そうすると、このシナリオ後、セイレーンやザンに見た目がそっくりな人間とpcたちは魔導次元で出会うかもしれません。中身はまったく別人かもしれません。そういうこと考えてるとわくわくしますね。または新しい腹パンの匂いがしますね。そういうシナリオをまた書くかもしれません。

シーン2
「親方!空から女の子が!」をやりたかっただけのシーンです。劇場版に限らない話ですが、PCがドロシーと出会って魔導次元入りするシーンは積極的に入れるようにしています。魔導次元という新たな世界に入り込む「儀式」というイメージと、ボーイミーツガールによる物語の始まりを意識させるための仕掛けみたいな感じです。
ちなみにこのシーンのドロシーに対して、「夢であった?」と告げても、彼女はきょとんとします。
夢であったドロシーは、あくまで夢ドロシーなので。

シーン3
ドロシーに夜呼び出されるという公式ではよくあるシーンです。毎回思うのは、こいつ自分から呼び出しておきながら遅いとか待ってたとか眠れなかっただけとかだいぶ無茶苦茶なことほざいてますね…pcはキレてもいい。
ただ、ある意味それがドロシーという少女の、寂しさというか、不安定さを表してる部分でもあります。あと、裏設定として「ドロシーは眠れない?」という小ネタもあったりします。このへんは正直明確にしたくないのでとりあえずここでは割愛します。

シーン4
「ハーベストの外」を明確に書こうと思ったのはこのシナリオがはじめてです。学園もののゲームなので、基本は学園をベースにするのが当然なのですが、まぁ魔導次元の中を色々旅行するシナリオがあってもええやろということで、その模範になるようにという気持ちがこもってます。
スカイドライブリヴァティなぁ……せっかくの設定なのでもっかいくらいどこかで活かしたい気持ちもあり。

シーン5
ドロシーの痛車。正直なことをいうと、このシナリオができるまでドロシーのキャラ性ってだいぶ右往左往してたんですが、この痛車を繰り出してきたあたりから決まってきましたね。ああ、こういうことする感じの子なんだなーって。
ちょっと優先したい用事というのは、もちろんシーン3のpc1との会話です。pc1とどうしても話したかったのか、単純に面倒でさぼったのかどうかは皆さんのご想像にお任せします。

さて、このシーンでは、キーワードとなる「カモメ」と「蝶」が現れます。カモメはもちろんザンとセレナ、蝶はセイレーンを表現しています。
ちなみに、突然出てくる魔物の祟りの話ですが、もちろんこれも無意味ではありません。これこそ、レヴィアタンがモルフェスを操って、さまざまな人を襲ったり、夢の世界に引き摺り込んだりしているということを表しています。

そして白い霧を境界線に、このシナリオはモルフェスの夢の中に入り込んでいくことになります。

シーン6
セイレーンとの出会いのシーンです。セイレーンがハーベストについて知らないことに関してですが、ぶっちゃけ魔導次元の人間でハーベストについて知らない人は滅多にいません。
あと、pc1、pc2、pc3でそれぞれ目覚めた後の待遇を対比させてます。pc2が最も運が良かった。

シーン7
PC2に対して遭難後の待遇が悪いシーン。ここで、モルフェスの神話についての話が出てきます。モルフェスは後に出てくるクジラに似た魔法生物ですが、そのモルフェスが見ている夢の世界なので、この世界を構築しているモルフェスは必然的に神となります。神殿のお告げは、それそのものが、モルフェスによる「早く目覚めたい…」という意思です。「お告げ」なので、モルフェスくんも必死でレヴィアタンに足掻こうとしているのが言葉となって夢の中に現れているのです。

シーン8
pc1が夢の中で夢を見るシーンです。今後の不吉な展開と、夢ドロシーの死を暗示しています。
このシナリオのもともとのコンセプトが「ドロシーを殺したい」だったんですけど、ドロシー本人はもちろん殺せないので、その代わりとして夢ドロシーを作りました。死ぬために生まれてきたって考えるとなんかものすごく悲しくなってきますね。
もとい、私は、「ドロシー」という、PLにとって「死ぬ」と思えないようなキャラクターの死を与えることで、PCはどのような反応をするのか、を見たかったわけです。

シーン9
このシーンでは、シーン7のザンがいったお告げの言葉の解釈が街と村で真逆となっていることが明らかになります。といっても、この解釈の違いは、そっくりそのまま「夢から目が覚め、この世界が消えることを救済と捉えるか崩壊と捉えるか」の構図です。

シーン10
見慣れない果実、パイムは魔導次元には存在しない食べ物です。だがしかし、セッションのときはイメージが大切。そのため、ハヤトがこのシナリオを回すときは、「見慣れない果実」で画像検索して、出てきた適当な果実をこんな感じですっていってplに見せています。

シーン11
はい、ドロシーガチ勢の皆様にはわかるかもしれませんが、もうこのシーンの時点で夢ドロシーです。まず、「ごめんね…私のせいで…」あたりからもう怪しいんですけど、夢ドロシーは本物に比べて自己肯定感がかなり低く、また、寂しがりやに拍車がかかってます。あと、「熱がある」描写もですね。ドロシーは風邪引きません。

シーン14
さて、少し飛んでシーン14です。どんどんヒロイン力を上げていくドロシー。このあたりから、PLさんがよくこいつドロシーじゃねぇって言い始めます。そして実際にドロシーではない。
ちなみに、なんで夢ドロシーもこんなにPCのこと信頼してるの?っていう件に関しては、最初のシーン1がその理由です。
PCは、シーン2でドロシーと再会したと思っていたけれど、実は夢ドロシーとの再会はシーン11なんですね。
ただ、このシーンの夢ドロシーは、先述したようにpcたちの記憶の中のドロシーが入り混じった存在なので、台詞も混じってます。

シーン15
魔物が街へ攻め込んできたのは、アケロウによると、今までなかった出来事。なのにそれが起こった理由はただ一つ。PCたちの存在です。もっといえば、ドロシーの存在も大きい。なぜなら、この夢をコントロールしているレヴィアタンが、夢を崩壊させる可能性のある使者たちであるPCたちを排除したいからです。

シーン16、17
このシーンは、PCたちの夢ではありますが、もしかしたらNPCたちも同じ夢を見ていたかもしれませんね。

シーン20
このシーンで、セイレーンの歌を聞いたPCの今後のエンドオブノクターン演出はセイレーンの歌になる人が多いです。セイレーンの歌の元ネタは夢を見る島の「風のさかな」なのでもしどんなメロディか困ったらこちらを検索してみてください。
ちなみにアサギマダラはハヤトもリアルで見たことあります。偶然飛んでた、めっちゃ綺麗だった。このシナリオ書いてたときに画像見てたのですぐわかりました。ふわりふわり飛ぶものだと思ってたけど、予想外にめっちゃ鳥みたいに滑空しててびっくりしました。

シーン21
もうここまで来ると、「誰だこいつ」ですね。PLの方にもよく言われました。夢ドロシーの意思がどんどん強くなり、PC1のヒロインとして完全に覚醒しています。最後の台詞は、ずっと独りぼっちだった彼女が最初に出会ったPC1への思いが溢れています。

シーン23
マンドレイクがこの部屋に入ると消えたのは、モルフェスが用意した狂言回しだからです。ここまで連れてくるのが彼の役割でした。
あと、このシナリオだとだいぶ小物っぽい喋り方をするレヴィアタンくんですが、レヴィアタンくんは取り憑く相手に応じて見た目や話し方を変えるタイプなので、ほかのシナリオだと普通に喋ってたりしてます。
そして、ここで夢ドロシーが死にます。
夢の中なので死体も残りません。彼女が「生きた」記憶は、PCたちの中にのみ残されることになります。
ちなみに戦闘終了後にエンドオブノクターンを残してると最高にエモい演出ができますが、問題はレヴィアタンがそれなりに強くて残してる暇がないことです。ここでエンノク使えたらグッドエンディングということで。

シーン24
先述のとおり、本物のドロシーはこの夢の世界に来ていないので、シーン24でようやく再会します。そう考えるとこのシナリオドロシーの出番少ないな…。
だから、彼女はこのシナリオで起こったことを何も知らない。でも、PCたちだけはそれを共有しています。
ちなみにあれから1時間、というのは、夢の世界と魔導次元の時間の進み方が違うことを示しています。

おまけ話
今思い返すと、夢ドロシーがほんとに救われないのがきつすぎるので、もし書き直すとしたらそこにテコを入れます。
ちなみに、セイレーンやザンたちの残留思念は、次元の狭間に記録として残っているので、劇4とかに彼らが再登場してます。
あと、劇3を書いた後くらいに、スタンスが登場したのですが、そのとき最初に構想していたのは実はホムンクルスだけでした。ただ、そのホムンクルスのルーツが劇3だったのもあって、じゃあ各劇場版から取ったら面白くね?と思って、劇1からパラレルリンカー、劇2からライトガーディアンの発想を生みました。

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