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魔法学園RPGハーベスト 劇場版小話2 ②「星のない空に輝く光を ~Dance with Dead」

※本記事は、魔法学園RPGハーベストの劇場版シナリオ「星のない空に輝く光を ~Dance with Dead~」と「彼岸花の咲く頃に ~Live & Learn~」のネタバレを含みます。両方のシナリオをプレイされた方のみご覧ください。

 こんにちは、「魔法学園RPGハーベスト」デザイナーの涼宮隼十です。 前回に引き続き、備忘録も兼ねて、劇場版シナリオと呼ばれているシナリオ群の裏設定や作成秘話などを公開していきたいと思います。 

 今回は劇場版2弾です。劇場版5弾とつながる部分が多すぎて、ネタバレが大量に入っています。繰り返しになりますが、両方のシナリオをプレイされた方のみご覧いただくことをおすすめします。もしまだ5弾をプレイされていないという方はぜひ遊んでみてください。

シナリオ構想について

劇場版第2弾「星のない空に輝く光を ~Dance with Dead~」について

劇場版第1弾が元ネタありきの作品だったので、オリジナリティを出したいなと思って考え抜いたのが第2弾です。とはいえ、当時流行っていた「火属性のお嬢様系ヒロインの着替えを除いたことが原因で決闘を申し込まれる系ラノベ」の文脈をオマージュしたり、細かいところは既存作品にインスパイアを受けてる部分もあります。ただ、大テーマ自体はオリジナル。 当時のメモを今見返すと、めちゃくちゃプロット練り悩んでましたね…すごい文量のアイデアの羅列がある……。ただ、間違いなくこの頃から、いわゆるエモ・しんどみ系シナリオの書き方みたいなのにハヤトが慣れてき始めてます。

各シーン解説「星のない空に輝く光を ~Dance with Dead~」

ではまず、劇場版2「星のない空に輝く光を ~Dance with Dead~」から見ていきましょう。 

 シーン1 

 トトとPC1が出会い、子猫「ベレト」を託されるシーンです。 雨が降っているのは言わずもがな、アマリリスのことを暗示してます。 ハーベストが空に輝く満月なのに対して、アマリリスはそれを覆い隠す雲のイメージをこの頃から持ってました。 ベレトの怪我は、実はスバルの最後のハーベストムーンで負ったものです。処置したのはもちろんトト。ただ、トトはスバルによる怪我であることは知りません。 

 そもそもこのシナリオの根幹にかかわることなのですが、何故アルフレッド・アンネ夫妻の3年前のカース事件が未解決のままで終わったかというと、ここでトトがPC1にベレトを託しているからです。
基本的に、クリーチャーが自力で現実世界に行けないようになっている世界なので、カース事件は、魔導次元内でしか捜索されず、結果として現実世界にいたベレトに誰も気づけなかったのです。
 ただ、このときのベレトはもちろんカースを放っているクリーチャーなので、現実世界でもカース感染は起こります。ベレトが現実世界でPC1と暮らしていたころも、きっと、PC1の周りで不審死が気づかぬうちに起こってるんでしょうね。カース事件とは扱われないので、きっと精神疾患による自殺とかそんな風に扱われるんでしょうか。ちなみにカース感染には適性があるので、PC1が、大切な人を失っている設定だとしても、PC1がカース感染することはシナリオ的に絶対ありません。 

 シーン2 

 食べかけのホットドッグくれる愉快なドロシーとのシーンです。 発動体を買いにいくところがありますが、これ邪眼だったらどうするの?ってことには回すまで気づきませんでした。 

 シーン4 

 言うまでもないですが、シーン17の直前のシーンです。 カメラで撮った写真は、PC3のエンディングにつながります。詳しくはそこで。 

 シーン5 

 正直、スバルはこの時点で死期を悟っていたと思います。 このことを説明するには、まず天王寺帝の動きについて説明しなければなりません。 

天王寺帝は、もともと、アルフレッドに、ベレトを使ったクリーチャーの研究を命じていました。シーン17でアルフレッドが電話していた相手は天王寺帝です。
ただ、劇5で明らかになっている通り、そこにスバルというスパイが入り込みます。スバルは、ナーブとしてハーベストの潜入調査を行っており、その中で天王寺帝とアルフレッドの行っていた研究に気づき、その内容をトトに報告していました。
その結果、トトはスバルからの連絡をもとに、ベレト解放のために動きます。それが実際に起こったシーンがシーン18です。スバルが直接やると、スパイであることが露呈してしまう可能性があるため、ここはトトが直接介入しました。(かなり危険な行為なので、トト的にもアマリリスの面々にやらせるわけにはいかなかった) 

 ただし、天王寺帝は、ベレトが脱走したことから、トトに情報を流している何者かがいることに気づきます。そして、それがスバルであると「仮定」しました。 そして、アマリリス、トト、スバルに対する憎悪の念を深め、天王寺帝は彼らに裁きを下そうとします。(スパイがスバルであると断定していたわけではないのですが、彼はそれでも手を下す男です)
 まず、スバルに対して、クリーチャーハントを命じました。もともとスバルはスパイであることを隠すためにあえてクリーチャーハンターをしていたこともあり、ベレトの依頼をするのも決して不自然なことではありません。 ただし、この任務は、シーン20でドロシーがキレたように、到底学生に任せていいような内容ではない。ただし、天王寺帝は巧みな話術で理事会を言いくるめ、スバルとPC3にこの任務をやらせることにします。
スバルはそこまで気づいていて、ベレトとの戦闘で自分が死ぬことを予期します。ここで、スパイをやめてアマリリスに帰るという選択肢もあるのですが、スバルにはそれができません。何故か。PC3がいるからです。
もし自分がこの任務を放棄していなくなれば、その負担はPC3に降りかかることになるかもしれない。そもそも、この任務が無謀であることを理解している学生は自分ひとり。
だからこそ、彼は、PC3だけを逃がして、自分が死ぬことを選びました。 PC3の存在が、天王寺帝からの殺意に対する人質みたいになってたわけです。 ただ、それだけ彼の中でPC3の存在が大きくなっていたことは言うまでもありません。だから、彼はこのシーンで、もう一度PC3と桜の木を見に来ました。アマリリスのスパイであった彼が、本当に信頼し合えた相棒、それがハーベストで出会ったPC3だったのです。 

 シーン6 

リライヴセレモニーの伏線を張る大事なシーンですが、何より、シャルロッテとPC3が感染するシーンでもあります。 また、このときベレトは、シャルロッテの膝から「さまざまな生徒の膝を移動して」、PC3の顔を蹴り上げて外に出ています。 つまりこれは、シャルロッテとPC3以外にも感染者がいる可能性があるということ。 もしPCが、シャルロッテとPC3が、カース感染することを望んだとしても、ほかにもいっぱい感染者がいる可能性がある以上、このカース事件は解決しなければならないものになります。 

 シーン7 

 ベレトのトランペットですが、ベレトと仲良しのキャラクターほど聞こえるという裏設定があります。スバルとPC3だと、スバルの方が早く聞こえ、シーン26だと、PC1が真っ先に聞こえます。 アトラクナクアは、サンプル1のボスですが、ドロシーはほとんど見たことのないレアなクリーチャーです。なのにこういろんなシナリオでかませのように出てくることが増えたな……
 スバルの発動体がハンドスピナーなのはこのシナリオ書いてたハヤトの目の前にハンドスピナーがあったからです。アスタリスクの関係から紋章であることは決まってたので、何にしようかなーって迷った結果雑に決めました。でも紋章が高速回転するハンドスピナーってほら……なんか強そうじゃん……
スバルが攻撃を受ける場面ですが、
 氷のつぶて ⇒ アバランシュブレイク
 熱線 ⇒ インフェルノストライク
 足場が凍る ⇒ アブソリュートゼロ
 邪悪に黒く輝く大剣 ⇒ アクアエクスカリバー の演出です。
 実際に効果を確認すると如何にえげつない殺し方してるかがわかります。 また、この時のスバルは、ハーベストムーンを発動しますが、それには「彼がハーベストの学生である」ことを強調する意味があります。 もともとアマリリスのスパイである以上、クリーチャーは基本傷つけたくない。(ハントをしていたのは、怪しまれないためのカモフラージュです)
 ただ、今の彼は、PC3を守るために戦う学生の一人でした。そのPC3もアスタリスクで転送しましたが、ハーベストの学生として、最後の一撃だけでもベレトに負わせたいという気持ちが芽生えています。(もちろん殺すつもりがあったわけではない) 

 シーン8 

 シャルロッテが聞こえた声は、カース感染の前兆です。というかこの時点でもう彼女は感染し、発症しはじめています。 

 シーン10 

 死んだはずのスバルが現れます。もちろんカース感染の影響で見えている幻覚ですが、感覚そのものも誤認するので、触れるし、あらゆる応対にリアルに返してきます。 そして何より、このスバルはPC3にとって都合の良いスバルです。 ハヤトは大学で学んでいた専門が精神保健福祉だったんですが、そのとき学んだことが強く表れてます。
精神病の妄想っていうのは、本人にとっては現実。 

 シーン15 

 シャルロッテの母親は、流産してます。それがシャルロッテのお姉ちゃんであるはずのマリーでした。 

 シーン17 

 天王寺帝は、劇5で明らかになった「死霊魔導の研究」のため、クリーチャーの生態に関する情報を欲していました。それを学園に秘密裏に進めさせていたのが、このアルフレッドの研究室です。 

 シーン18 

 トトちゃん激おこシーン。ただし、ベレトが彼女の言う通り、恐怖と絶望を感じていたのか、そうでないのかは誰にもわかりません。 しかし、それであっても、トトの信条として、クリーチャーが天王寺帝の実験材料にされることだけは許せないのです。 

 シーン19 

 シャルロッテの両親がマリーの幻覚を見るシーン。愛があればあるほど、狂ってしまったときの狂気は強くなるんですよね。 

 シーン20 

 天王寺帝初登場シーンです。この頃は名前もないモブキャラでした。 ただ、このシナリオをプレイしたとあるPLが、「こいつぶん殴りたい」っていってたので、ぶん殴れるシナリオを用意したのが劇5です。 

 シーン21 

 スバルが死ぬシーンは2、3回描写しておきたかったのでせっかくの機会にと思って入れました。あと、このときのスバルの一撃がベレトに怪我を負わせます。もちろん殺すつもりはなかったけれど、PC3を守るという想いの上での行動です。

 シーン27 

 このシーンのスバルは、「PCの知らない情報」を何故か知っていました。 しかし、カース感染による「自分にとって都合の良いスバルの幻影」であれば、「PCの知らない情報」をPCに伝えることなどできるはずがありません。 なので、このシーンのスバルは、「カース感染によって出現したスバル」ではないということになります。
 ただし、この世界に幽霊はいません。 スバルの想いが風となって、PCの元に届いた……というような感じですが、一応そういうふわっとしたもの以外に明確な答えはあります。
それは、劇5の中で、死体として死霊魔導で動かされているスバルの存在です。彼は、死後、天王寺帝と行動を共にしていました。 そのためもちろん、正体を隠しながらハーベストにいたことも多かったでしょう。 そして、劇5の時間軸は、劇2とほぼ同じです。この2つの物語は、表裏のような関係性にあります。 死体としてのスバルは、劇2で何が起こっていたかを知っていて、劇5の事件が起こる前に、自らの意思をなんとか保ちながら、この劇2の最後のシーンに現れ、最期の言葉を「幻影のフリをしながら」PC3に向かって放ったのではないかと考えられます。 

おまけ話

このシナリオは、たぶん僕がTRPGやってて世界で2番目に多く回したシナリオです(一番はハーベストのサンプルシナリオ1)。
だからすごい思い入れもあるし、PCの設定次第で色々な物語が見れるので、GMやってて楽しい作品でもあります。
スバルという存在は、「死」というテーマでシナリオを描くという点で、僕の出せる一番の回答だったんじゃないかなと今でも思います。
今、これ以上の面白いシナリオを描くことはできても、スバルほど「美しい存在」は作れないかもしれないと思ってます。
ハーベスト世界の闇を色々と背負わせてしまったのが心苦しいですが、スバルに対してRIPの気持ちを常に心に持っています。
(でも、もう一回くらいどこかのシナリオで出せないかなーとか思ってるのはホントです)

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