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忍偵ヌンチャック非公式スピンオフ「ピストル探偵シキベwithガンドーチイサイ~ピストル探偵シキベ、オキナワリゾート大暴れ!~」

ここはおなじみネオサイタマ……ではなく、遠く離れたキョートシティ……でもなくさらに遠く離れたオキナワ?
「久しぶりのオキナワ・リゾートっすねえ……」
黒縁メガネで海を眺めるのはシキベ。彼女はこう見えても探偵なのだ。
「久しぶり……じゃねえよ、シキベ=サン。今日はビズだろ?」

シキベの肩にヤカガラスドロイドが止まる。
「そうっすね!ガンドーチイサイ=サン」
「だからその名前で呼ぶなっていっただろうがよ!」
「イテッ!突かないでくださいッスよ!」
胸にデカデカと『シキベ』と書かれたスクール水着を着たシキベの側頭部をガンドーが突く。

「だいたい何だその水着はよぉ?そんなんじゃ誰も引っかかってこねえぞ?」
「し、仕方ないじゃないっすか!これしか持ってなかったんスカら!」
シキベがプンスコする。

ここはキョートシティにあるオキナワ・リゾート・ランド。年中無休で常夏の海を楽しめる人気のレジャースポットだ。
「……でも、本当にいるんスかねえ。ザイバッツの……」
「バカ!軽々しく口にだすんじゃねえ!」
ガンドーが突く!
「イテっすよ!」

ザイバッツ!キョートの裏を牛耳る巨大犯罪組織だ!シキベとガンドーはもともと人間だったが、彼らのせいで機械の体になってしまった。だが、それを悔やむ二人ではない!機械の体だからこそできる事があるのだ!
「……とにかく調査だ。行くぞ」
「はいッス!」

……1時間後!そこには、浮き輪にすっぽりはまってプカプカ波に揺られるシキベとガンドーがいた。
「いやー、全然見つからないっすね……」
ザザー……。波に揺られて体が上下する。
「ううーん、もしかして感づかれたか?」
ガンドーも空からの偵察を諦めてぼんやりモードだ。

だが、その時だ!
「フィヒ……」
突然シキベの足先にガスマスクの紳士が顔を出した!
「どわあああ!」
驚きのあまりひっくり返って転覆するシキベ!SPLAAAASH!幸いここは浜辺に近く、そのままうつ伏せで砂浜に打上げられる。
「フィヒ!お久しぶりザンス」

「テメーはジェントルマスク!やっぱりお前か!」
ヤタガラスドロイドがジェントルマスクの前に飛び塞がる。
「?なーに言ってるザンス?私は目麗しい乙女に目を取られて……」
「ぷはーッ!」
シキベがもぞもぞと起き上がり、砂を払う。
「「……ってアンタは!!」」

先に構えたのはシキベ!
「観念するっすよ!」
右太もものハッチが開き拳銃が飛び出す!キャッチしてジェントルマスクに照準セット!
「ま、まあ落ち着くザンスよ」
ガスマスクに海パン一丁という異様ななりのジェントルマスクがハンズ・アップする。

「どういうことだよ?」
ヤタガラスドロイドのガンドーがジェントルマスクを睨む。
「私は今日は休暇ザンズ」
「は?休暇?」
「そうザンス。悪の組織だって休暇はあるザンス。目の保養重点な……」「「……」」
シキべとガンドーはお互いを見て呆れる。

「あー、じゃあ、情報はやっぱりガセだったんスぁねえ」
「いや、ザイバッツはこいつだけじゃねえ。他の奴っていう可能性も……」
その時だ!
「ファハハハハハ!」
人工海プールから響く笑い声!

「おおっと。私がいるとややこしいザンスからね。カラダニキヲツケテネ!」
ジェントルマスクはいつの間にか撤退!
「あ、逃げられたっス!」
「オイオイオイオイ!それよりあれを見ろ!」
ガンドーが見る先は海の上!波がさざめき、何かが現れる!

「ファハハハハハ!」
海上に現れたるは妖艶なビキニ水着の上半身。そして、それに繋がる異様なるタコ下半身!レディ・テンタクルだ!
「さあて、罠に引っかかった愚かなカラスは誰かしら?」
狙いはあからさまにシキベとガンドーだ!

「ウワーッ!」
「バケモノナンデーッ!」
オキナワリゾートの利用客が次々と出入り口ゲートに殺到!
「再入場はできませんドスエ」
合成マイコ音声の注意アナウンスが虚しく響く。

……人っ子一人いないビーチ、否!浜辺に一人と一匹、構えるものがいた!ピストル探偵シキベwithガンドーチイサイ!
「最初っから私達が狙いだったんスね」
「ファハハハハハ!そのとーり!さあ、遊びましょう!」
レディ・テンタクルのタコ触手が襲いかかる!

スクール水着シキベに迫りくるタコ触手!
「イヤーッ!」
鮮やかにアクロバット回避してピストルをセミオート連射!KBAM!KBAM!KBAM!タコ触手を3本連続破壊!
「ンアーッ!」
レディ・テンタクルが身悶える。

「いいじゃない……アナタ、ゾクゾクするわ!ンンン……!!」
レディ・テンタクルが力むと、打ち崩した触手が再生!何たる耐久力か!
「ウ、ウェー……」
シキベも冷や汗だ!

「仕方ねえ!アレをやるぞ!シキベ=サン!」
ガンドーが呼びかける。アレとは、ZBRを使用することでガンドーの意識をシキベのボディに移す最終手段だ。だが!
「アー……更衣室に……オイてきちまったんスよね……」

「なんだって!俺の……あー、いやいや、俺たちのZBR!を置いてきただって!?」
ヤタガラスガンドーがプンスコ怒る。
「だ、だって仕方ないじゃないっすか!このボディにそんなもん入れとく隙間無いっすいよ!」

そうこうしている間にさらなるタコ触手の追撃!
「うわっとっと!」
どうにかシキベも避ける!
「あー……。チクショウ!待ってろよ!」
ガンドーが飛び立った!
「ZBR取ってくるからそれまで時間稼ぎしておけよな!」
「ハイっす!」

「あらあら?お連れのカラスはサヨナラかしら?」
「いいえ、所長は私を見捨てないっスっよ」
シキベが拳銃を構え直す。
「フォハハハハ……。それじゃあ、その強がりがどこまで持つかしら」
レディ・テンタクルの足元からさらなる触手が舞い上がり……
「イヤーッ!」一斉にシキベに襲いかかる!

一方その頃!ガンドーはヤタガラスドロイドの飛行昨日を巧みに使いシキベのロッカーにたどり着いていた!だが!
「チクショウ!このロッカー暗証番号システムかよ!シキベに鍵を渡されない段階で気がつくべきだったなクソ!」
ガンドーの金庫破りが始まった!

シキベの方はと言うと
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
KBAM!KBAM!KBAM!必死に触手を撃ち落とす!足元に忍び寄る触手!
「イヤーッ!」
KBAM!破壊!腰に巻き付こうとする触手!
「イヤーッ!」
KBAM!破壊!

「ファハハハハハ!さあて、いつまで持つかしら!」
レディ・テンタクルがさらに触手数を増大!もはやタコのそれを遥かに超えている!
「アー……(ガンドー=サン!早く来てくださいっス!)」
もはや手一杯だ!

一方その頃、ガンドーはロッカーと戦っていた!「42」ブガーッ!ロッカー警告音!「4643」ブガーッ!ロッカー警告音!「66」ブガーッ!ロッカー警告音!
「チクショウ!なにが暗証番号なんだ!」
キョートシティの娯楽施設のロッカーは遥かに頑丈であり、もはや入力ミスは許されない!

「アー!キクショウ!どうすりゃいいんだ!」
ヤタガラスドロイドのガンドーが無人のロッカールームを歩きながら考える。
「いいか。考えろ、シキベ=サンなら何を暗証番号にする。なんかあるだろ。シキベ=サンの好きなものの語呂合わせとか……」
急げガンドー!そうしなければ、なぜなら……。

「ンアーッ!」
悲鳴を上げたのはシキベ!
「ファハハハハハ!つーかまーえた!」
無限に再生する触手に押し込まて、ついに四肢を捉えられたのだ!
「さあて、どう料理してあげましょうか、アカチャン?」
シキベ絶体絶命のピンチ!

「アーッ!なんなんだチクショウ!」
ガンドーはロッカールームをうろつく。
「こんな時にZBRがあれば……いや、待てよ」
ガンドーがはたと気づいた。
「俺にとってZBRは欠かせないもんだ。シキベ=サンにとって欠かせないモンっていったら……」
ガンドーは番号を入力!『315』キャバーン!

315!サムライ探偵サイゴを暗示する番号だ!ロッカーが開く!
「やったぜ!待ってろよ!」
ZBRを加えてガンドーが飛び立つ!

「ファハハハハハ!どうしたの?どうしたの!?もう終わりなのかしら?」
レディ・テンタクルの触手が次々とシキベにまとわりつく。もはやシキベも抵抗できないほどの触手量だ。
「むぐぐ……」
「さあ、降参すれば、悪いようにはしないわよ?」
レディ・テンタクルの甘い声。だが、その時だ!

「シキベ=サン!」
空に響くはヤタガラスドロイドの声!
「ガンドー=サン!」
シキベも答える!
「行くぜ!口開きなあ!」
「ハイっす!あーん……」
ガンドーがZBRを投げる。シキベの口にナイスシュート!
「ZBRオン!」

シキベZBRを飲み込むと、何たることか!画面を塗りつぶすフラッシュ!
「な、こ、これは!」
レディ・テンタクルもうろたえる!
『イヤーッ!』
シキベを押さえ込む無数の触手がはじけ飛ぶ!

「ンアーッ!」
身悶えるレディ・テンタクル!
「お、お前は……」
レディ・テンタクルが見つめる先に立っていたのは、目つき鋭いディテクティブオーラをまとったシキベ!
『こっからきっちり3分、カラテタイムだ!』

「チ、チクショウ!ここでなら」
『ここでなら、ZBRは使えないと思っておびき寄せたのか?』
「ウッ!」
レディ・テンタクルがたじろぐ。
『ハッ!図星ってところだな』
シキベ……いや、ガンドーの意識が宿ったガンドーシキベがピストルを構える。
『こいよ。ワザマエを見せてみな!』

「言われなくても、やってやるわいよ!イヤーッ!」
レディ・テンタクルの触手軍団が迫る!
『ッハ、止まって見えるな』
ガンドーシキベは左太ももから2丁目の拳銃を取り出して構える!

『イヤーッ!』
KBAM!KBAM!一瞬で触手を2本破壊!
『イヤーッ!』
KBAM!KBAM!さらに触手を2本破壊!
『イヤーッ!』
KBAM!KBAM!触手を2本破壊!
『イヤーッ!』
KBAM!KBAM!2本破壊!

ピストルの反動を物ともしない連射に続く連射!生身だったガンドーではこの動きはできなかっただろう。
『これがテクノピストルカラテだぜ!』
触手の再生速度が追いつかない!

「そ、そんなバカな……」
いつのまにかレディ・テンタクルはもはや触手を生やすことができなくなっていた。
『で、どうするんだい?まだダンスをお望みかな?』
ガンドーシキベが2つの銃口をレディ・テンタクルの本体に向ける。

「……ファハハハハハ!」
レディ・テンタクルは高らかに笑った。
『何がおかしいんだい?』
ガンドーシキベは警戒を解かない。
「いえ、まさか私がかなわないなんてと思って、ね。いいわ。ここは私の負けよ。引きましょう」
『ずいぶんと引き際がいいんだな?』

「ええ、だって、捕まるのは嫌だもの。それに……」
レディ・テンタクルが不敵な笑みを浮かべる。
「……それに、アナタとは、もっと”楽しみたい”のですもの」
そう言うとレディ・テンタクルは人工海の底へを沈んでいった。

『気味悪いなオイ。グワ……』
ガンドーシキベが膝をつく。ZBRタイムアウトだ。3分の制限時間が過ぎ、シキベとガンドーの自我が元に戻った。

「なかなか手ごわい相手だったっすね」
シキベの自我が戻り、シキベが話す。
「ああ、奴はおそらくシテンノだろう」
ガンドーもヤタガラスドロイドに戻り話す。遠くからキョートケーサツのサイレンが聞こえる。
「それじゃあ、面倒なことになる前にずらかろうぜ」
「はいッス」

……翌日。
「『オキナワリゾートに現れた謎の怪物、撃退される』ですってよ」
黒縁の眼鏡を掛けて新聞を読むのはシキベだ。
「ですってよ、じゃねーよシキベ=サン。もう俺達の正体はバレちまってるんだぞ?」
ヤタガラスドロイドのガンドーが突く。

「イテッ!突かないでくださいッスよ!」
「まあ、今回は完全にはめられたってことだから仕方ねえっちゃ仕方ねえしな……」
ガンドーはバツが悪そうな表情をしようとした(でもヤタガラスドロイドなので表情はあまり変わらなかった)。

「これからは今まで以上に注意が必要ってことだな」
「ハイっす……」
ガンドーが諭し、シキベがちょっとしゅんとする。
「……あ!」
シキベが顔を上げた。

「ん?どうした?」
「ロッカー暗証番号、なんで分かったんスか?」
「あー、そりゃあ、あれだよ。えーっと、なんつーかだな……」
ガンドーの目線が揺らぐ。

「……!さては覗きを!」
「ち!違うに決まってんだろ!」
「じゃあなんでロッカーの番号知ってたんスか!」
「いやまあそれは探偵のカンっていうかだな……」
「ンモーッ!ごまかさないで欲しいっす!」

こうして今日もキョートシティの平和は守られた!ありがとう、ピストル探偵シキベwithガンドーチイサイ!


ピストル探偵シキベwithガンドーチイサイ

第二話『ピストル探偵シキベ、オキナワリゾート大暴れ!』

おわり

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