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七夕とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~ササノハ祭りで悪霊退治!~】

「そろそろ次の街が見えてくる頃だな」
夏のよく晴れた爽やかな日差しに照らされて街道を歩く3人組。先頭を歩くのは、胸にサラシを巻いて竹の軽鎧に身を包む、ギザギザ歯で長身のバンブーエルフ、メンマだ。

「メンマ、いつもより張り切ってる気がすゆ」
メンマの後ろに続くのは、ミスリル銀の保管箱を背負う、ズングリとしたポテサラエルフのポテチ。顎の力が弱く舌っ足らずで、ポテトサラダを主食とするエルフだ。

「なんたって、アレがあるからね~」
最後尾を歩くのは、ボサボサの金髪に簡素な貫頭衣でニコニコ笑う、クソバカエルフのハカセ。クソバカエルフなんて名前だが、別名”森の賢者”とも呼ばれる叡智に満ちたエルフだ。

「アレってなんだゆ?」
ポテチは首を傾げるが、すぐにその答えがわかった。
「うおー!見ろ見ろ!」
はしゃぐメンマが指差す先には街があった。そして、その街はバンブーに囲まれていた。

ヒューマンならざる旅エルフの三人は、エルフがヒューマンの良き隣人であることを知らしめるために旅をする。ゆく先々でヒューマンを助けることでお互いを知り、エルフの森焼きを防ぐという大役があるのだ。

そんな三人がやってきたのは、バンブーに囲まれた街。はたして、どんなことが起こるやら……。


「うおー!見渡す限りのバンブー!懐かしいなあ!おい!」
メンマは、久しぶりに見る自生バンブーに、生まれ故郷を思い出し、一人で盛り上がる。
「ここに来たのは初めてだゆね?」
ポテチがメンマを見上げる。
「おう!だけどよぉ、ポテチだって、見渡す限りのポテト畑があったらどうだよ?」

「み、見渡す限りのポテト畑……!」
ポテチは脳内で想像する。故郷のポテト畑にも引けを取らない大規模ポテト畑で、思う存分ポテサラを作る自分の姿を幻視した。
「でへへへへ……」
あまりに都合の良い妄想に、顔が緩みきるポテチ。

「ポテチ、戻ってきて!」
ハカセの声にハッと我に返るポテチ。
「メンマの言う事、とても、とても分かった気がすゆ……」
あんまりにも緩みきった顔をしていたことを自覚してか、とたんに恥ずかしくなったポテチはもじもじする。

メンマは街の中を見渡す。
「へー、家もバンブーでできてるじゃねえか。ますます懐かしいな……」
恥ずかしさを誤魔化そうと、ポテチはメンマに疑問を問いかける。
「そ、そういえば、バンブーは鋼よりも硬いはずだゆ。どうしてヒューマンが加工できゆ?」

バンブーエルフの扱うバンブーウエポンは様々あるが、どれも鋼鉄に引けを取らない(あるいはそれ以上の)頑丈さを持つ。しかし、この街で資材として使われているバンブーは、特別な加工をした痕跡はない。
「それはねー、魔力がないからだよ」
ハカセがサラリと答える。

「どういうことだゆ?」
「メンマはいっつも魔力を使うでしょ?ここのバンブーには魔力がないんだよ」
「ゆ???」
ポテチはうまく説明を飲み込めない。クソバカエルフは凄まじい頭脳を持つが、それゆえに会話では説明が足りず、理解してもらえないことが多い。クソバカエルフと呼ばれる理由の一つがそれだ。

「ポテチにもわかりやすいように説明するとだな……」
メンマが説明サポートに入る。
「アタイらが使うバンブーは、土地の魔力を吸って固くなる。バンブーエルフの土地は、魔力がいっぱいあるから強いバンブーになる。だけど、魔力が少ない土地なら、ヒューマンにも簡単に切れちまうバンブーが育つってわけ」

「ようは土壌養分の差ってことゆね」
「そういうこった」
さすがはポテト生産が生命線の農耕民族ポテサラエルフ。こういう理解は素早い。
「それは分かったんだけゆど、あれはなんだゆ?」
ポテチは立ち並ぶ家々の玄関前を指差す。そこには、色とりどりの短冊が結び付けられたバンブーが飾られていた。

「ああ、ありゃあ……」
メンマが説明しようとしたその時、一人のヒューマンが声を上げた。
「あ!バンブーエルフ様だ!バンブーエルフ様がいらっしゃったぞ!!」
「なんだって!?」
「バンブーエルフ様が!?」
途端に人々が集まり、あっという間にメンマたちは囲まれてしまった。

「おいおいおいおい!なんなんだよ?」
最も困惑しているのは、渦中のエルフであるメンマだ。
「メンマ、昔この街に来た?」
「んなことあるかよ」
ハカセの問にメンマは首を横に振る。そうこうしているうちにも人々が集まり、このままでは街中の住人が集まりそうな勢いだ。

「これこれ、皆の者、落ち着かんか!」
群がるヒューマンの中から、ひときわよく通る声が響く。その声を聞いた人々は落ち着きを取り戻し、声の主に道を開ける。
「よくこの街においでくださった。私は代々ササノハ祭りを仕切る者です」
「ササノハ祭り?」
メンマは首を傾げる。

「はい。この街で毎年盛大に行われている祭りでして。詳しい話は我が家でお話いたします。長旅でお疲れでしょう。さあ、どうぞこちらへ」
代表者らしき人物は、メンマ達を案内する。メンマとポテチは最初はちょっぴり怪しいと思ったが、ハカセが何も疑わずについていったことで、安心してついていった。


場所は変わって、代表者らしき人物の家の中。
「こりゃあ、すげえな……」
メンマは調度品に目を奪われる。それらはすべてバンブー製で、物によってはメンマの加工力を超えて繊細な細工が施されたものもある。
「さあ、どうぞおかけください」
代表者らしき人物は三人をテーブルに案内し、ササノハ茶を出す。

ササノハ茶を一口すすったメンマは目を見開いた!
「う……」
「ど、どうしたんだゆ!?」
ポテチが慌ててメンマを見る!
「う……」
「う?」
ハカセもメンマを覗き見る。
「う……うまい!!」
メンマは溜めに溜めた感嘆を解き放った。
「「ズコーッ!!」」
ハカセとポテチはずっこけた。

「喜んでいただけて何よりです」
代表者らしき人物が、にこやかに答える。
「いや、こりゃあウマい。よくこの味を、アンタ……えっと……」
「ああ、申し遅れました。私はバンと申します」
代表者らしき人物、バンが名乗った。
「バンさん、いやぁ、本当にうまいよ」

「ササノハ茶の作り方は、バンブーエルフ様に教わったものです。……と言いましても、実際に教わったのは私の祖父ですが」
「祖父ゆ?もしかして、しばらく前にバンブーエルフがやってきたゆ?」
ササノハ茶をすすって落ち着いたポテチが質問する。

「しばらく……ええ、皆さんにとってはしばらくですが、我々にとってはだいぶ昔のことです」
バンは自分の半生を思い出すように、目を細める。ヒューマンが代替わりするほどの長い時間であっても、長命で時間感覚が長いエルフ達にとっては、”それなりの時間”なのだ。

バンは思い出を振り返るように、歴史を語る。
「私の祖父がまだ若い頃、このあたりは魔力が多く、モンスターも多く発生していたそうです。それでもどうにか小さな村で生活していたようですが、ある日、バンブーエルフ様がいらして、バンブーを植えてくださったのです」

「ほう……」
興味深く効くメンマを見て、バンは更に続ける。
「バンブーは余剰な魔力を吸って育ち、おかげで魔力を狙うモンスターも減りました。そして、育ったバンブーを資材として村は発展し、やがて大きな街になったのです」
「そういうことだったんゆね」

「はい。そしてそれ以降、バンブーエルフ様への感謝を忘れぬよう、毎年こうしてササノハ祭りを開いているのです」
「なるほどねえ……」
メンマはようやく事態を飲み込んで納得した様子だ。ハカセはさっきから話を聞いているが、おおよそのことはすでに先んじて"理解"しており、黙ってニコニコしている。

「そういうわけでして、今はちょうどササノハ祭りの真っ最中というわけです。どうでしょう?偶然とはいえ、バンブーエルフ様がいらっしゃいましたわけで、明日の夜は盛大に祝いの席を設けさせていただきたいのですが」
バンの提案に三人は顔を合わせる。

「いいんじゃないかゆ。ポテチもたまには楽しみたいゆ」
「ほいほーい!さんせーい!」
ポテチとハカセは、まんざらでもない様子だ。普段は旅から旅への野宿続き。辛い旅で頂いた好意は、頂かなければ損だし無礼というわけだ。
「よし。そうときまりゃあバンさん、ひとつだけ条件があるんだが……」

メンマが真剣な顔でバンに問う。
「な、なんでしょうか……」
緊張するバン。
「ササノハ茶と同じくらいウマいササノハ酒は、もちろんあるんだよな?」
メンマがギザギザの歯を見せてニヤリと笑う。


「いやー、明日が楽しみだなぁ!」
上等なササノハ酒があると聞いたメンマは上機嫌で竹林を歩く。
「こら、油断するなゆ」
浮かれるメンマポテチが抑える。
「ああ、悪い悪い……よし、一仕事やっちまおうぜ!」
メンマは気合を入れ直す。バンの家から出た三人は、街を囲む竹林の調査に向かっていた。

バンブーエルフのバンブーは土地の余剰魔力を吸う。土地を流れる魔力の質や量は、場所によって異なる。おそらく、この土地にはバンブー成長に適した魔力が流れているのだろう。それが自然な流れであれば問題ない。だが、もしそれ自体が、知的モンスターによる策略だったら……。

メンマはそれが気になっていた。故に、調査したかった。
「よし、ここらへんを見てみるか。ポテチ、ハカセ、頼むぜ」
「んゆ」
「ほいほーい」
メンマの声にポテチとハカセが頷く。メンマは一本のバンブーを掴むと、目を閉じて意識を集中する。

バンブーエルフの魔法系統は、大きく分けて二つある。一つはバンブーに直接魔力を流す魔法だ。これによってバンブーを鋼鉄以上に強化したり、あるいは生息バンブーに異常がないかを調べることができる。……のだが、メンマはバンブーエルフの中でも魔力量が少なく、一人では広域を調べることはできない。

そこでハカセの出番だ。クソバカエルフは膨大な魔力を持つ。ハカセはその魔力をメンマに分け与えることでバンブー魔法をブーストする。これでバンブーに異常がないかは分かる。だが、土地そのものはどうか。そこでポテチの出番だ。

「ムニャムニャ……」
ポテチはヒューマンには聞き取れないムニャムニャ声で呪文を唱えながら地面に埋まる。ポテサラエルフの魔法系統は、大きく分けて二つある。その一つが、大地と自身の魔力を循環させる魔法だ。これによってポテトを急速成長させたり、あるいは土地に異常がないかを調べることができる。

三人の共同作業により、バンブーと、そして土地の異常を調査することができた。
「……おい」
「……んゆ」
「……たいへんだ」
メンマとポテチとハカセは顔を見合わせる。その顔はかなり深刻だ。

「どうすゆ?」
ポテチはメンマに問う。
「どうするって言ったって……」
メンマはハカセの方を見る。
「決まってるんでしょ?」
ハカセは逆にメンマを笑顔で見返した。
「ああ……決まってるよ……」
メンマは気合を入れて拳を握りしめる。
「この土地の悪霊、アタイたちが退治してやる!」


場所は変わって、再びバンの家。
「なんと!!」
三人から報告を聞いたバンは驚きを隠せない。
「つまり、この土地の魔力の正体が、長き眠りについていたモンスターだと……」
「ああ、そういうことだ」
メンマが念を押すように頷く。

「しかも、しかもですよ。そのモンスターが目覚めるのが、明日だというのですね……」
「ほぼ間違いないゆ」
土地の魔力を最も敏感に感じていたポテチが答える。
「ああ、祖父から受け継いだこの街が、私の代で終わりだなんて……」
半ば絶望するバン。だが、三人が諦める様子は微塵もなかった。

「実はな……」
メンマはバンに向かって語りだす。
「アタイらが今日ここに来たのは、偶然じゃあないんだ」
「え?」
バンが顔を上げる。
「故郷を出る時の言いつけでね。今日この時、この街に来るのが、アタイの旅の目的だったんだよ」
メンマは旅立ちの日を振り返るように、目を細める。

「そ、そうだったんかゆ……」
ポテチは目を丸くして驚く。驚くポテチを一旦置いておいて、メンマは続けてバンに話しかける。
「安心してくれ。この街は絶対に助ける。その代わり、ちょっとお願いがあるんだけど、頼めるかい?」
「ええ、ええ!もちろんです!」
版は即座に了承した。


時は変わって翌日の夜!本来であれば、盛大な宴が開かれている町の大広場だが、今は人っ子一人いない。その代わり、光源となるバンブー細工の提灯が、あちこちに配置されている。暗闇をバンブー提灯が静かに照らす中、静寂が続いた。だが、その静寂は、街の外側から聞こえた、ガチャリ、という特徴的な音でかき消された。

「来たぞ!構えろ!」
号令と共にメンマはバンブートンファーを構える。
「んゆ!!」
ポテチは見るからに頑丈そうな杖を構える。その杖の先端は、ポテトを潰す道具に似ていた。
「いっくぞー!」
ハカセは全身に魔力をみなぎらせ、汎用臨戦態勢だ。

ガチャリ、ガチャリという音が、しだいに大きく、そして、多くなってくる。そして、その音の正体がバンブー提灯に照らされた!
「ハイヤー!」
真っ先に飛びかかったのはメンマだ!バンブートンファーで音の正体を叩き割る!それはスケルトン!だが、ただのスケルトンではない。古の鎧をまとった怨霊だ!

この街の異常な魔力は、自然の流れではなかった。どれくらい昔かは分からないが、この土地は古戦場だった。そこで死んだ数多の兵士が怨霊となり魔力を引き寄せていたのだ。

"しばらく前"にやってきたバンブーエルフは、おそらく怨霊を倒す術を持っていなかった。だから、バンブーを植えることで怨霊への魔力共有を抑えて時間を稼ぎ、後の旅エルフに悪霊退治を託した。そして、メンマたちが丁度、その役割を担うことになったわけだ。

「ハイハイハイハイ!!ハイヤー!!」
メンマはバンブートンファーとバンブー脚甲の四肢連撃で次々と鎧スケルトンを粉砕!
「くそっ!多いんだよ!」
メンマは悪態をつきながらも連撃を続ける。もちろんハカセとポテチも全力だ!

「えーいやー!」
ハカセは溢れる魔力を運動エネルギーに変えて鎧スケルトンを殴りつける!クソバカエルフは膨大な魔力を持つが、魔力の扱いはかなり苦手で、誰かに魔力を分け与えたり、自分の肉体を強化するのがせいぜいだ。だが、それでも十分すぎるパワーがあった。

「やー!」
クソバカエルフの魔力パンチ!鎧スケルトンは兜ごと頭蓋骨を貫かれて戦闘不能!
「おりゃー!」
クソバカエルフの魔力キック!鎧スケルトンは鎧ごと背骨を砕されて戦闘不能!単純でシンプルな魔力物理攻撃ほど恐ろしいものは無い!

もちろんポテチも負けてはいない!
「んゆ!」
ズン!ポテチが地面を踏みしめ、そのまま杖で鎧スケルトンを殴り抜ける!その杖は一見すると軽そうに見えるが、実はそうではない。旅するポテサラエルフは、頑丈なミスリル銀の背負い箱を持ち歩く。

ミスリル銀の背負い箱は、魔法によって見た目以上に多くの荷物を積み込める。だが、その荷物の重量が魔法で消えるわけではない。ヒューマンでは背負うことすら困難な超重量の背負い箱を持ち歩くポテチには、見た目以上の怪力がある。ポテチの杖は、その怪力でもって、全力で振り回しても壊れない。

つまり、ポテチの杖による攻撃は、恐るべき超重打撃なのである!無論、その打撃を持ってすれば、スケルトンの鎧を砕くことなど、茹でたポテトを潰すより容易だ!
「んゆ!んゆ!」
ポテチは小柄な体を生かして低い位置から杖をかち上げ、次々と鎧スケルトンを粉砕していく!

あらかたスケルトンを倒したといったところで、ハカセは街の外を見る。
「来るよー!」
ハカセの声に、メンマとポテチが身構える。三人が見据える方向には、月光に照らされた巨大なスケルトンの姿があった。その大きさたるや、頭蓋骨が家ほどもある。

「ハカセ!ポテチ!打ち合わせどおりに頼むぜ!」
「ほいさ!」
「うんゆ!」
メンマはしばしその場を離れる。その間にポテチは地面に両手を付き、ヒューマンには聞き取れないムニャムニャ声で呪文を唱える。
「ムニャムニャムニャムニャ……」

ポテサラエルフの魔法系統は大きく分けて二つある。一つは大地と自身の魔力を循環させる魔法、そしてもう一つが、対象を柔らかくする魔法だ。
「はあ!」
ハカセがポテチに魔力を流し込む。ハカセの魔力はポテチを通じ、柔らかくなった地面の隅々まで行き渡る。

準備は整った。そこに、短冊が山ほど結びつけられたバンブーを背負ったメンマがやってきた。その短冊には、バンに依頼して街の人々に書いてもらった願いが書かれている。『街を守ってください』『この街で生きていきたい』『先祖代々の土地を子孫に残したい』などなど。街を守りたいという思いが詰まったバンブーだ。

想いの力は精神の力。精神の力はすなわち、魔力である。
「よっしゃ!行くぞ!」
メンマは右手で短冊バンブーを地面に打ち立て、左手をハカセの肩に置く。
「ぜんかいだー!」
ハカセが全開の魔力を解き放つと、メンマの持つバンブーの短冊が光りだす!

さらに、ポテチを通じて街中のバンブーの短冊が光りだす!魔力が満ちたことを確認したメンマは呪文詠唱を開始する。
「ササノハサララ……」
バンブーエルフの魔法系統は大きく分けて二つある。一つはバンブーに直接魔力を流す魔法だ。そしてもう一つが、ゴシキノタンザクと呼ばれる呪符を使用した魔法だ。

本来であれば、ゴシキノタンザクは呪文と魔力を込めて真価を発揮する。だが、今回は街の人々の願いが呪文の代わりであり、街の人々の想いが魔力の代わりだ!
「……ゴシキノタンザク!!」
メンマの呪文詠唱が完了すると同時に、街中の短冊から五色の光の帯が解き放たれ、巨大スケルトンに直撃!!

「ゴオオオオオオオオオオ……!!」
巨大スケルトンは崩れ去った。三人の連携が、そしてなにより、街を守りたいという人々の気持ちが、恐るべき悪霊に永遠の眠りを与えたのだ。


「いやー!やっぱササノハ酒は旨ぇなあ!」
ササノハ祭りの主役となったメンマは、上機嫌で盃を飲み干す。巨大スケルトンを倒した時点で邪な魔力は消え去ったので、予定通り(むしろ予定よりかなり盛大に)ササノハ祭りが行われることになったのだ。

「あんま……飲み……過ぎんなゆ???」
メンマの横でササノハ酒を飲むポテチが忠告する。しかし、すでにポテチの方がだいぶ酔っており、フワフワしている。
「まーまー、たまにはいーじゃん!」
ハカセはいつものように、ニコニコ笑いながらみんなを見渡す。
「みんな楽しそうでよかったよかった!」

ハカセはササノハ酒をぐいっと飲み干す。よく見るとメンマより飲んでいる気がするが、顔色一つ変わらないのがクソバカエルフの恐ろしいところだ。
「おっしゃあ!今夜は飲み明かすぞぉー!」
メンマは住人たちから次々と注がれるササノハ酒を、グイグイと飲み干していった。


そして翌朝。三人は次の街を目指して街道を歩いていた。
「ぐえぇぇ……」
最後尾を歩くのはメンマだ。
「調子の乗って飲みすぎだゆ。見栄なんか張らずに、もう一日休めばよかったゆに」
一足先を歩くポテチに釘を差される。
「んなこと言ったって、バンブーエルフのプライドってもんが……」
二日酔いのメンマが答える。

「あー!ほらほら!この先に湧き水があるんだって!寄って行こうよ!」
先頭を歩くメンマが看板を見つけ、元気いっぱいに歩き出す。
「ったく。ハカセのやつ、アタイより飲んどいて平気なの、どうなってんだよ……」
「湧き水でも飲んで酔いを覚ますよいいゆ」
メンマとポテチも後を追って歩を進める。

「ほらほら!はやくしないと湧き水が枯れちゃうよ!?」
「枯れるわけねえだろうが」
「ぶつくさ言ってないで歩くゆ」
「うーい……」

先人の残した意思を受け継いで、街を救ったエルフたち。足並みそろえてえんやこら、種族は違えど今日もゆく。
三人のエルフの旅はまだまだ続く!

七夕とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~ササノハ祭りで悪霊退治!~】

おわり

(感想ハッシュタグは #エルフ三人娘 だと拾えるので嬉しいです)

以下、参考の集団幻覚


サポートされると雀botが健康に近づき、創作のための時間が増えて記事が増えたり、ゲーム実況をする時間が増えたりします。