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丁寧な描写が世界観を生み出している:読書録「高瀬庄左衛門御留書」

・高瀬庄左衛門御留書
著者:砂原浩太朗
出版:講談社(Kindle版)

藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」を思わせる
と言う評をどこかで読んで、気になって購入してしまいました。
読み始めて、一気に読了。
好きですね、こう言うの


藤沢周平にしても、池波正太郎にしても、物語としての面白さに加えて、描き出すその「世界観」への共感が根底にあります。
「あ〜、ここへ行って、縁側でゴロゴロしてぇ」
…みたいなw。


本書にも確かに通じるものがあって、特に丁寧な風景描写が、読むものをその世界に誘ってくれます。
クド過ぎず、平易な文章で、それでいて「味わい」のある筆致。
まあ「ファンタジー」なんですが、一抹の苦さもあるその匙加減がナカナカです。


ストーリー的にはどうかなぁ。
時代小説って、「男(おっさん)のファンタジー」っぽいところがあると(個人的には)思ってるんですが、本書もそういう傾向はあるかな、と。(特に死んだ息子の嫁との関係)
<そこ>を飲み込めば、抑制の効いた良い物語だと思います。
個人的には<そこ>をもっと抑えても良かったとも思うんですが、それじゃあ枯れ過ぎかもしれんねw。


「三屋清左衛門」が、そうは言っても、ある程度の「成功者」であったのに対して、「高瀬庄左衛門」の人生には「悔い」と「不運」が付き纏います。
「それでも」
…と言うのが読ませどころかな。
それこそが「ファンタジー」なのかもしれませんが、んなこと言ってたら、こう言う小説を読む醍醐味がなくなりますがなw。



#高瀬庄左衛門御留書
#砂原浩太朗


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