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書記が法学やるだけ#13 取消訴訟の判例-2(原告適格)

重要判例の中で,簡単に暗記してはいけないものをいくつか扱う。


問題


解説

(1)正しい公衆浴場法の適正配置規定について、適正な許可制度の運用によって保護されるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護される法的利益と解するとして、既存業者には、他業者への営業許可に対する取消訴訟の原告適格は認められている(最判昭37.1.19)。本判例は公共の福祉の見地において重要。

(2)誤り文化財保護法は、文化財の研究者が史跡の保存・活用から受ける利益について、同法の目的とする一般的、抽象的公益のなかに吸収・解消させ、特に文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしている規定を置いておらず、史跡を研究の対象とする学術研究者には、史跡の指定解除処分の取消しを求める原告適格が認められない(最判平元.6.20)。

(3)正しい保安林の指定解除により直接の影響を被る一定範囲の地域に居住する住民は直接の利害関係を有する者に該当し,解除処分取消訴訟の原告適格を有する。ただし,いわゆる代替施設の設置によって洪水、渇水の危険が解消され、保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、防止上の利益侵害を基礎として保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格を認められた者の訴えの利益は失われる(最判昭57.9.9)。問題では原告適格と訴えの利益が跨っており,文章を読んで条件をよく確認する必要がある。

(4)誤り:(旧)地方鉄道法に定める料金改定の認可処分に関する規定の趣旨は、もっぱら、公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではないから、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者であっても、当該認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということはできず、認可処分の取消しを求める原告適格は認められない(最判平元.4.13)。

(5)正しい航空法は、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含む。よって、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する(最判平元.2.17)

(6)誤り自転車競技法施行規則第15条1項より,位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。一方で,場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される(最判平21.10.15)。本判例は原告適格を有するものと有しないもの両方が示されていることに注意。


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