見出し画像

書記が法学やるだけ#14 取消訴訟の判例-3(訴えの利益)

問題


解説

(1)誤り運転免許停止処分に対し,停止処分の期間の経過により違反点数が消滅した場合は,道路交通法上の不利益を受ける恐れがなくなったことになり,取消の訴によって回復すべき法律上のの利益はない(最判昭55.11.25)。一方で,運転免許取消処分に対し,取消処分が取り消されば免許の更新手続きにより免許を維持できるため,訴えの利益は失われない(最判昭40.8.2)。運転免許に関しては肯定・否定の両方があり,各ケースをよく考えれば違いはわかる。

(2)正しい土地改良法に基づく土地改良事業施行認可処分の取消しが求められた場合において,本件認可処分が取り消された場合に,本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが不可能であるとしても,事業施工の認可処分を取消せば換地処分など他の法的効力にも影響するため,訴えの利益は残る(最判平4.1.24)。一方で,建築基準法に基づく建築確認の取消しが求められた場合において,建築確認はそれを受けなければ建築工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから,当該工事が完了した場合においては建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる(最判昭59.10.26)。建築に関しては,工事完了後に起こることを考えるのがポイント。

(3)正しい市街化調整区域内にある土地を開発区域とする開発許可に関して,工事が完了して検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われない(最判平27.12.14)。一方で,市街化区域に関しては訴えの利益はない(最判平5.9.10)。この違いは,市街化区域は「都市計画区域内ですでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る区域」,市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」,という違いに起因している。

(4)誤り朝日訴訟最高裁判所大法廷判決(最大判昭42.5.24)について。生活保護を受けるのは, 単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく, 法的権利であるが,この権利は被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられ一身専属の権利であって,これの譲渡・相続は認められない。よって,被保護者が死亡すると,取消しを訴える利益は消滅する。なお本判例では,憲法25条の法的権利性を否定しつつも裁判規範性を認めている(完全なプログラム規定説でない)

(5)正しい公開請求権者は,本件条例に基づき公文書の公開を請求して,所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し,又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきである。そのため,請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても,当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではない(最判平14.2.28)。


本記事のもくじはこちら:


学習に必要な本を買います。一覧→ https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/1XI8RCAQIKR94?ref_=wl_share