DSKコモンカードPauper評価
2024年9月27日発売の新セット『ダスクモーン:戦慄の館』の全コモンカード(C枠81種類+L枠10種類)が公開されました。
つい先月に『ブルームバロウ』が発売され、11月には『ファウンデーション』の発売を控えているという新セット発売ラッシュのと真ん中ですが、果たしてパウパー環境に食い込めるカードはあるのでしょうか。
セットの雰囲気としてはお化け屋敷のようなホラーの世界観ということで『ブルームバロウ』からの高低差で耳鳴りがしそうですが、意外にもエンチャントが中心のテーマということなので『テーロス還魂記』や『エルドレインの森』などのカードと新しいシナジーが生まれたら嬉しいですね。
ダスクモーン:戦慄の館のメカニズム
部屋
分割カードのようなレイアウトのエンチャントで、それと同様にコストの片方を支払うことで唱えることができます。
戦場に出た際に支払われた側のドアが開放され、常在能力がアクティブになったり、開放されたときの能力が誘発します。
ここまでなら分割カードをエンチャントにしただけですが、戦場で開放されていない側のドアは、そのコストを支払うことで後から開放することができ、それにより追加のバリューを獲得できる仕様となっています。
デザインとしては、分割カードを発展させた融合カードのエンチャント版、それでいてコストの支払い方がフレキシブルに改良されていて、1枚のカードを2度使える出来事や作製のようにも機能します。
個々のコストは少し割高ではあるものの、作製のような追加のコストもなく構築に制約を課されないのは嬉しいところです。
なお、《運命のちらつき》などで明滅させた場合は両方のドアが閉鎖された状態になるため、再度の開放ができるメリットはありますがマナ効率はすこぶる悪いです。
戦慄予示
予示の効果を少しだけ向上させたもの。
2枚から1枚を選ぶためクリーチャーをヒットさせ易くなり、選ばなかった1枚は墓地に置かれるのでリソースとして活用する道があります。
とはいえ単体では2/2トークンを生成するものと大差がなく、戦慄予示だからと特筆すべきことは殆どありません。
アンコモン以上のカードには、戦慄予示をしたり裏向きのカードを表向きにした際にアドバンテージを取れるカードも多く、戦慄予示であることそのものにトークン生成以上のメリットがありますが、残念ながらコモンには存在しません。
生存
生存を持ったクリーチャーが自分の第2メイン・フェイズにタップ状態だと能力が誘発します。
誘発させるためには殴るのが手っ取り早いでしょうが、《バネ葉の太鼓》のようなタップアウトレットと組み合わせられるとより確実です。
しかし、生存によりカードを得られたり、+1/+1カウンターを継続的に乗せられるような能力はコモンになく、どれも通常セットのリミテッド用らしいカードパワーに収まっているため、敢えて採用を検討することもなさそうです。
違和感
既存のメカニズムである星座に部屋を完全に開放したのときの誘発がプラスされただけのもの。
性能的にも特筆するものがありません。
他にも赤と緑を中心に昂揚カードが何枚か収録されていますが、公式の『ダスクモーン:戦慄の館』のメカニズムのページでは触れられていません。
リミテッド視点であれば、戦慄予示により通常は墓地に落とし難い土地を落とせ、昂揚を達成し易いというシナジーがあるのかもしれませんが、パウパー視点では構築に制約をかけてまで使いたいカードはありません。
新規のメカニズムでは、部屋は少し複雑そうでコモンには収録がないかもと思っていましたが、セットの目玉ということなのかコモンにも無事に収録されて良かったです。
一方で、最初のカード公開の際に注目を集めた兆候はハイレアリティのみにしか存在しない……というより神話レアの大主サイクルのみが持つ能力だったのは少し残念でした。
注目カード:白
《大玄関》//《優雅なる円形広間》
クリーチャー生成側で1枚分のカードの働きができているのであれば、もう一方の3マナで+1/+1カウンターを2個は後付けの強化としては悪くない性能でしたが、肝心のクリーチャー生成側が実質2/1/1なので構築での使用に耐えられるかは疑問。
1枚で2つのエンチャントを展開できるということで《上天の鎧》とは相性が良さそうですし、ささやかながら布告除去への対策にもなりますので、緑白呪禁や白単英雄的とはカードの方向性だけ考えれば性能がマッチしていそうです。
《画面の中への幽閉》
よくある《払拭の光》系統の除去ですが、護法によりシンプルに追放したパーマネントを解放され辛くなっています。
それだけでは3マナのソーサリーという重さと釣り合いが取れているかというと微妙ですが、近年のカード性能の向上を感じさせてくれます。
何気に対象が「土地でないパーマネント」ではなく「アーティファクトやエンチャントやクリーチャー」であるため、《鉱滓造の橋》を始めとした破壊不能を持つアーティファクト・土地に対処可能な点は素晴らしい。
注目カード:青
《食肉用冷凍室》//《冠水した食堂》
青の部屋のまだマシなほう。
5マナのソーサリーなら普通に3枚は引いて欲しいですし、もう一方の麻痺カウンター2個も強力ではありますが、構築で3マナもかける価値はなさそう。
とはいえ、この性能のドローがパーマネントに内蔵されているのは初めてのことですし、なんとか再利用する道があれば……かも?
《現実の歪曲》
『サンダージャンクションの無法者』にも《幻影の干渉》がありましたが、開発では打ち消しとクリーチャーを抱き合わせにするのがブームなのでしょうか?
プレイ・ブースターでコモンの収録枚数が減っているため限定的な効果のカードは刷らないという方針のようですが、それの現れなのかもしれません。
3/2/2瞬速+切削1は、お世辞にも強力とは言えませんが、上手く相手の攻撃に合わせてトレードができればインスタント1枚以上を含む3枚分も墓地が肥やせるので、《思考掃き》で墓地リソースを積極的に溜め込むようなアーキタイプには方向性があっているのやも?
《声も出せない》
クリーチャーを1/1にする《証人保護》からサイズが変更されて0/2になっています。
1/1と0/2の違いはパワーの有無という点で大きいですが、特に《月回路のハッカー》との相性関係が逆転しているところは注目です。
《トレイリアの恐怖》を採用するタイプの青単には《ひどい出来》が『モダンホライゾン3』で加入したこともあり特段の影響はないでしょうが、《呪文づまりのスプライト》と忍者の組み合わせで攻めるタイプの青単のサイドボードなどに良さそうです。
サイズ変更に付随してアーティファクト化する部分は《証人保護》の名前変更と同じくフレイバーの域を出ないでしょう。
また、パウパーでの裏向きのクリーチャーの採用頻度を考えれば下のテキストは殆どインクの染みです。
注目カード:黒
《見捨てられた屋根裏部屋》//《見晴台》
マナ効率こそ悪いですが、能力的には《夜の囁き》を内蔵しているため完全に腐るということは考えづらいです。
もう一方も速度は遅いですが、毎ターンの攻撃でブロッカーとのトレード or ダメージを強要し、着実にリソースを削りにいく立ち回りが可能になります。
こちらはリミテッド用のアンコモン以上のカードにまま見られた能力ですが、果たしてコモン構築で通用するのかどうか。
《コーの空漁師》で回収してのドローの再利用は、コストの面でもライフの面でもだいぶキツそうですが、生け贄のコストとしてはカードのロスがなく使い易そうでもありますので、協約などと組み合わせられると良いのかもしれません。
《抜歯への恐怖》
《脚光の悪鬼》の能力に1点回復が上乗せされて若干の強化。
些細な違いですが、元々タフネス2までのクリーチャーと相打ちを取れたり、タフネス1のクリーチャーを2体持っていけたりと対アグロの要素が強かったクリーチャーなので、地味ながら方向性にマッチした性能向上がされていると言えます。
エンチャントのタイプも追加されているので、エンチャントを参照したりコストとして要求するカードとの相性が良くなっている点も含め評価がどうなるか。
ちなみに、これに限った話ではありませんが死亡時に飛ばすダメージにも絆魂や接死が乗るため、《毒素の分析》と組み合わせると除去範囲の向上+追加のライフ回復が計れ、決まれば強力だったりします。(決まるとは言っていない。)
《無害なネズミ》
《スゥルタイの使者》の予示が戦慄予示になった純粋なアッパーバージョン。
クリーチャーの生け贄シナジーを利用したアーキタイプへの適性が高く、予示も《鋸刃蠍》などの死亡誘発能力を持ったクリーチャーとの相性が良いので、それらをヒットさせ易くなっているのは嬉しいところ。
とはいえ、10年前(『タルキール覇王譚』は2014年9月発売、予示の収録された『運命再編』は2015年1月発売)にはちょくちょく見かけた《スゥルタイの使者》も、令和の世では使っている人が殆どおらず、予示だと弱くて使えないけど戦慄予示なら通用する……ということがあるのかは疑問。
(むしろ8枚体制になるからこそアーキタイプが成立するという可能性もある?)
性能だけを見れば本体が生け贄コストとして利用でき、かつ、戦慄予示で捲れたときのリターンが大きいという点で《湿地帯のグロフ》と相性が良さそうです。
注目カード:赤
《機械仕掛けの打楽器奏者》
1/1/1速攻で死亡時の誘発能力を持つクリーチャーは《攻め立てられる槍護衛》などがあり、《怒り狂うゴブリン》の強化型として少しずつ増えていきそうですが、ここまで強力なものは今後も少ないのではないでしょうか。
アグロ寄りの1/1クリーチャーは全体除去で流され易いのが弱点ですが、それをカバーできる能力は戦略に非常に噛み合っています。
死亡時に得られるのは衝動ドローではありますが、次の自分のターンの終了時までプレイできるため通常の1ドローと遜色ない性能です。
そして、特筆すべき点としてアーティファクトであるため《カルドーサの再誕》の追加コストに対応している点が素晴らしい。
最序盤はクロックとして、必要に応じて《カルドーサの再誕》のコストとして、雑に盤面に出しておいても全体除去へのリカバリーになり全体的に隙の無い性能をしています。
これ自体が相手のライフを大きく削り取るような役割ではありませんが、赤単というデッキに欲しい要素を広くカバーしているため、《ヴォルダーレンの美食家》と並ぶユーティリティなツールとなるでしょう。
《ガラス工場》//《粉々の作業場》
序盤は除去として使用し、終盤にダメージソースとしての展開が可能ということで《税血の刃》に似た性能です。
除去としての性能はテンポ的に優れているとは言えませんが、除去できる範囲だけ見れば悪くありません。
クロックとしては《貫かれた心臓の呪い》相当と考えると単体では重すぎるということになりますが、《税血の刃》の作製の使われ方を見るに除去のオマケとしては悪くないでしょう。
また《税血の刃》と異なりクロックとして展開しておき、後からドアを開放して除去として使う選択肢もあり、(公式の説明によると設置済みの部屋のドアの開放はスタックを用いない特別な行動となっているため)その場合は基本的に打ち消されないのが嬉しい。
コストが少し重い分《コーの空漁師》での出し入れは《税血の刃》より難儀ですが、ロングレンジのゲームでは十分に狙えそうではあります。
《目標の強奪》
《答えの要求》や《街道筋の強奪》などの《苦しめる声》系統のルーティング呪文は《こそこそサクサク》の登場で再評価されましたが、それらにまた新しく強力な選択が加わりました。
前述の《こそこそサクサク》に加え、《台所のインプ》《血管の施し》《癇しゃく》を採用するマッドネス系統のアーキタイプと追加の2点ダメージは方向性が完全にマッチしているため、採用する大きなメリットになり得ます。
ゲーム終盤に土地を捨てる場合に何も起こらないのが残念ではありますが、見方を変えれば《答えの要求》であっても土地を捨てる際には何も起こらないわけで、そういった意味ではデメリットとして捉えるほどではなさそうです。
ソーサリーという難点はありますが、やはり追加の2点ダメージという恩恵は目に見えて大きく、個人的には第一候補だと考えています。
注目カード:緑
《肉潜り虫》
今までいそうでいなかったコモンの接死持ちの熊が遂に登場しました。
単体でも《ボーラスの占い師》などの序盤の1/3で止まらず、中盤以降も《マイアの処罰者》や《トレイリアの恐怖》などの攻撃を抑制できるため攻守に優れています。
また、接死は《怨恨》のようなトランプルの付与とも相性が良く、さらに攻撃時には他のクリーチャーに対しても接死の付与が可能なため、全体の突破力を大きく向上してくれます。
そして、この接死の付与対象は攻撃している必要もないため、《農芸師ギルドの魔道士》などのティムとの組み合わせで接死ティムのコンボを成立させることも可能です。
このように純粋に性能の高いクリーチャーではありますが、採用できそうな緑単ストンピィは現在では下火のアーキタイプなのが残念なところ。
《朽ちゆくジム》//《ウェイトルーム》
マナ加速からの大型クリーチャー展開の組み合わせは《豆の木の巨人》を髣髴とさせます。
言わずもがなですが、マナ加速とマナのかかる大型クリーチャーの展開はシナジーがあり、単体で完結している点で使い易そうではあります。
出せるクリーチャーは6/5/5相当と平均よりやや下の性能ではありますが、マナ加速それ自体にマナの使い先が用意されているというのが大事。
また、戦場以外ではマナ総量が9もあるため、《苛立つアルティサウルス》などの続唱を阻害しないのも嬉しいかもしれません。
《怪物的出現》
これまでも格闘や噛み付きといった除去はいくつもありましたが、クリーチャーの展開すら不要で、手札からクリーチャー・カードをチラ見せするだけでダメージを飛ばせる除去が緑に来るとは驚きです。
この系統の除去が欲しい緑単ストンピィはパワー2~3程度のクリーチャーが多いでしょうが、《湿地帯のグロフ》を利用するなどすれば高出力を実現することが可能です。
また、通常の噛み付き除去と同様に戦場のクリーチャーを参照することもでき、この場合は《怨恨》等でパワーを上げることでリーチを伸ばすことができます。
その際も参照先のクリーチャーはダメージの発生源ではないため、対応して除去をされても問題なくダメージを与えられる点が既存のカードと一線を画します。
このダメージの発生源がクリーチャーでないという部分は接死や絆魂が乗らないというデメリットでもありますが、総合的にはデメリットより遥かに大きなメリットを持ったカードであるように感じます。
注目カード:その他
《剃刀罠の山峡》
新しいタップイン2色土地サイクルであり、コモンに数ある2色土地サイクルの中でも、条件次第でアンタップインが可能な2色土地は初となります。
ゲームが進行しライフが減少することでアンタップで出せるようになるという点でスローランドのような性能ですが、当然ながらいつアンタップインできるか不安定なのが如何にもコモンらしい性能です。
自分がコントロール寄りの構成のときに採用すると、相手もコントロール寄りであった場合にいつまでもアンタップインせず、何のために採用しているか分からないですし、逆に相手がアグロ寄りな場合は、サイド後に入れたいライフ回復系のカードと相性が悪いため、基本的にはアグロ寄りのアーキタイプでこそ採用するべきでしょう。
特にバーン系のアーキタイプでは、盤面の状況に左右されずに相手のライフを落とし込むことができるため、比較的いつ頃にアンタップインできるようになるかを計算し易くもあります。
『サンダージャンクションの無法者』で登場した《鋸歯の痩せ地》もタップインのデメリットがありながらマッドネスなどで採用されていますが、同様にアグロ向けの2色土地としてワンチャン採用される可能性もありそうです。
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