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LTRコモンカードPauper評価

2023年6月23日発売の新セット『指輪物語:中つ国の伝承』の全カードが公開になりました。
コラボセットかつポスト『モダンホライゾン』なセットということで注目を集めていましたが、見たところ通常セットに近いカードパワー、そしてEDH意識なカードが多くモダン環境への影響は大きくなさそう?
一方でPauper環境に影響を与えそうなカードが何枚かありましたので、今回もコモンカードのファーストインプレッションを書いていきます。

https://twitter.com/mtgjp/status/1667203066033213440

指輪物語:中つ国の伝承のメカニズム

指輪

2段階目と4段階目が鍵

「指輪があなたを誘惑する」という能力が解決されるたびクリーチャーにより強い能力を付与するメカニズム。
重ねれば重ねるほど強く、主にクリーチャーを強化するという点でステッカーに近いかと思いますが、ランダム性がないため、よく言えば癖が無く、悪く言えば爆発力や予想外のシナジーが起きにくいです。
1段階目では指輪所持者に《喪心》が効かなくなり、多少ブロックされにくくなる程度のメリットしかないので、早いターンに2段階目まで強化してバシバシ殴っていかないとゲームへの影響が少なすぎるため採用する価値がなさそうです。
一方で、指輪所持者が除去されたりしても指輪の強化段階は記憶され、ゲームの終盤になればパワー1のクリーチャーを指輪所持者にして(ほぼ)ブロックされない4点クロックとかにもできるのでゲームをクローズする力はありそう。
しかし、指輪の強化は4段階目まで、かつ、指輪所持者を2体以上並べることもできないので、手札に貯まりすぎても持て余してしまいそうなのが難点でもあります。

オーク動員

『灯争大戦』のゾンビ動員のオーク版。
数値がデカければ単純に強いので、強く作ろうと思えばいくらでも強くできるのでしょうが、開発が結構ちゃんと調整しているっぽく目立って強力そうなカードはなし。

土地サイクリング

各色に1種類ずつ存在。
直近セットの『機械兵団の進軍』で起動コストが2マナのものが同様に存在しましたが、こちらは全て起動が1マナになっていて殆どテンポロスが気にならなくなっています。
個人的に本セットの最重要カード。

注目カード

《北方の大鷲》

全体強化がアグロのマナフラッド受けとしてマッチ

能力からして白単アグロのようなクリーチャーを並べるデッキと噛み合っています。
アグロデッキの性質上マナフラッドはしたくないですが《金切るときの声》を採用することが多い白単アグロでは土地をやや多めに採用されることが多いですし、赤単ほど遂行力も早くないのでどうしてもマナフラッドし易いのでしょう。
そういった意味では土地の枚数を抑えつつフラッドを受けられるカードの需要はありそうです。
中盤は《のどかな農場》をサーチすることで実質0マナで+1/+1カウンターを1つ置くことができると考えると柔軟性も十分です。

《誕生日の旅立ち》

最軽量かつ対象不要かつキャントリップ

ほぼリソース消費なしで指輪を進めることができます。
1段階目は大して強くないので1ターン目に撃ってしまうのも視野かもしれません。
青には《深き刻の忍者》など攻撃を通す価値の高いクリーチャーも多数存在するため、相性が良さそうです。
しかし、他の青の指輪関連のカードの性能がイマイチなため、2段階目以降の能力が使えるかが微妙になりそうなのが引っ掛かるところ。

《ロリアンの発見》

《渦まく知識》を始めシナジーが多すぎます

個人的には今セット最強カード。
ソーサリー5マナは隙が大きいとはいえ3ドローは得られるリソース量として《熟考漂い》にも近いものがあり、色拘束の問題などありますがコストパフォーマンス的に高水準と言って差し支えないものです。
本来こういった重量級のドロー呪文はそれを採用すること自体が構築への負担となるハズが、1マナの土地サイクリングによって寧ろデッキの安定化に寄与しています。
軽いコストでのデッキシャッフルの《渦まく知識》との相性は言わずもがな、《汚染された帯水層》のような多色土地をサーチしつつ墓地のインスタント・ソーサリーのカウントを増やす動きは《トレイリアの恐怖》が正に欲しかったものです。
基本的に青を基調とした多色デッキ全般に適性があり、Pauperで頻繁に見かけるカードになることは間違いなし。

《キリス・ウンゴルの巡回兵》

Pauper界の《魔女の大釜》!?

クリーチャーを生け贄に捧げて食物を生成するということで《大釜の使い魔》を無限にグルグルさせることができます。
本家の《魔女の大釜》と比較して5倍も重く、破壊され易く出したターンに起動できないクリーチャーであり、起動にマナもかかるなど、際限なく扱いづらくなっていますが、大釜にはないドローが追加されているので、エンジンが完成さえすればゲームに勝ち得る性能です。
とは言え、5マナの黒のクリーチャーとしては《吸血鬼の君主》という絶対的なエースもいるため、単体では性能が微妙かつ除去されたときの裏目も大きいこれを採用するには構築の腕が試されそうです。

《いとしいものを取り返す》

指輪関連カードの基準となりそう

インスタントでないのが残念ですが、対象を選ばない除去に指輪がついていて使い易そうです。
盤面に直接干渉できるので、それ自体が指輪所持者の攻撃を通すサポートになっているという噛み合いの良さもあります。
単純に1:1交換をする《喪心》のような除去でも基本的には問題はないですが、こういったアグロ戦略を後押しする+αのある除去が選択肢に入るのは嬉しいことです。

《死者の沼地の亡者》

実質の指輪関連カード

回避能力がないのが残念ですが、戦場に出たときの占術1を加味すれば及第点。
指輪所持者がいればマナだけで墓地から戻せ、その都度、占術をできると考えると中長期のレンジでの採用を考えたくなります。

《サムの捨て身の救出行》

軽さは評価

これも最軽量の指輪呪文ですが、対象を要求するため狙ったタイミングで指輪所持者を作れない懸念があります。
特に最序盤にマナを余らせるくらいなら撃っておきたいという場面で歯がゆい思いをしそう。
《通りの悪霊》などを採用すればそういったリスクを減らすこともできそうですが、それはそれで痛いのが考えもの。
一方で、指輪所持者が除去された後の追加戦力を確保できるというのは終盤で光る要素。

《カザド=ドゥームのトロール》

沼の代わり兼フィニッシャー

重いと言えば重いですが相応の打点もあります。
黒いので《殺し》が効かず、《感電破》を耐えるタフネスもあることから黒系のコントロールデッキで1~2枚採用しておくと邪魔にならず、終盤の良い決定力となってくれそうです。
1マナで墓地にファッティを送りつつ《沼》をサーチできるということで、いきなり2ターン目に《死体発掘》で釣り上げるような動きも見えますが、回避能力こそ素晴らしいもののパワー的に4回パンチが必要で、かつ、《ウラモグの破壊者》のようなライフ以外のリソースを削る要素もないことからデッキの中心に据えるほどではなさそう。

《火の中へ投げ捨てる》

アーティファクト追放がひたすら優秀

破壊不能のアーティファクト土地が重宝されているPauper環境では赤単に《破壊的一撃》が採用されることがままありましたが、赤単で使う限りではクリーチャー除去のモードを持つこれは上位互換となります。
《両手撃ち》のモードは《呪文づまりのスプライト》や《ティタニアの僧侶》といった部族シナジーに対して大きな効果を発揮。
何より親和とフェアリーという2大有力アーキタイプに対して共通の枠でサイドボードを用意できるのがとても重宝し、墓地対策の《大始祖の遺産》やダメージ軽減対策の《鋭い痛み》などピンポイントな対策をより広く厚く採用できるようになりそうです。

《間に合わせの棍棒》

ダメージは4点だけどこれもまたヨシ

クリーチャーもコストにできる《爆片破》ということで親和のようなデッキには5点ダメージのほうが嬉しかったかもですが、赤単《カルドーサの再誕》のようなデッキではより唱えやすいのが嬉しかったりします。
安定してアーティファクトの生け贄手段を用意できれば《胆液の水源》のようなカードの採用も候補に入るので、よりバリエーションが豊富になりそうです。

《角笛城での結集》

《ドラゴンの餌》に速攻が付くだけでも優秀

速攻のない《ドラゴンの餌》から始まり、『カルドハイム』の《禁じられた友情》で片方だけが速攻で殴れるようになり、遂に両方が速攻で殴れるようになりました。
それだけに留まらず速攻の付与は人間クリーチャー全体に及ぶため、特に《炎樹族の使者》から展開したときの爆発力は凄まじいものがあります。
『機械兵団の進軍』での《レンの決意》の登場から、やや速度が緩めの赤単が増えていましたが、こちらはより高速に特化した赤単の起爆剤になりそうなカード。

《不死者の討滅》

3点ダメージ・破壊不能はPauper意識?

おそらくPauperで初めてとなる破壊不能を喪失させる火力。
ダメージ量といい付随する能力といい《ケンクのアーティフィサー》でクリーチャーにした橋を除去しろと言わんばかりの性能。
今回のセットは全体的にケンクに厳しめなカードが多い印象ですね。

《ゴルゴロスの戦獣》

ハードルは高いですが無限を狙えます

単体のカードパワー的には疑問なラインですが、死亡するクリーチャーがトークン以外に限定されていないので、これを2体並べれば動員で出てくる4/4のオークを無限に生け贄にすることができます。
実用性は未知数と言うよりほぼなさそう。

《エルフの遠見》

《血清の幻視》程度のドロー操作力

トップにクリーチャーを置かないといけないという制約がありつつ、その後ろ2枚を自由に並べられるため実質的に《血清の幻視》くらいの性能になりそうです。
しかし安定させるためには25枚くらいのクリチャーの採用枚数が欲しいですし、それでも上3枚にヒットしなかったら見えない4枚目でギャンブルするか、ドローを諦めるという選択を迫られるのでリスクも大きいです。
また、クリチャーを大量に採用するデッキでのアドバンテージ源として採用される《暴走の先導》とは、先導これが捲れてしてしまう確率などもあり相性が良くなさそう?
可能性はありそうですが、採用できるデッキはあまり多くないでしょう。

《気前のよいエント》

無色から緑へのアクセスが優秀

緑を基調としつつ豊富な色サポートで多色に広げる構築はMTGの伝統。
そういったデッキでは、まず緑が出ないと話にならないのですが、マナ基盤が緑に偏ると他の色を出すのに難儀するため、緑以外のマナから森にアクセスでき、またデュアルランドを介して2色目3色目を探しに行けるという性能は結構大事だったりします。
本体の性能も5/7到達とブロッカーとして非常に優秀で、《苛立つアルティサウルス》あたりから捲れても嬉しい部類の性能なので、ランプ戦略や版図を生かすような構築で見かけることがあるかもしれないです。
個人的には古き良き緑系のトロンなんかで色マナを安定させるために使ってみたりしたいですね。

《数々の別れ》

某スタンダード禁止カードを思い出します

殆どフリーに近いコストで食物トークンを得られます。
緑には《お菓子の小屋》があるので実質土地から食物を得る手段が2種類になりますが、如何せん得た食物を有効に利用する方法に乏しいので何かデッキとして成立するかというと疑問。
しかし、食物としてでなく、単純に無料でアーティファクトを得る手段として考えれば《命取りの論争》など有効に活用できる手段も他の色には結構あるので、色々と試行錯誤のし甲斐がありそうです。
現在、黒メインでタッチ緑のコントロールデッキが有力とされていますが、緑メインにしてタッチ黒にしてみるのも面白そうです。
(全体的に緑のクリーチャーのほうが質が良く、フィニッシャーの《吸血鬼の貴族》は黒の信心を要求したりしないため。)

《レンバス》

《きらめく鷹》の餌

2マナの戦場に出た時にドローするアーティファクトは数多くあり、それを《きらめく鷹》や《コーの空漁師》で出し入れする動きはPauper界の伝統芸能ともいうものです。
このギミックにおいてドロー前に占術1が付くことによる恩恵はとても大きいものです。
出し入れして強く非常時にライフを得られる《レンバス》と出し入れするだけでなく自らを生け贄に捧げて1ドローできる《予備物資》がこれからの2枚看板になることでしょう。

《魔法使の打ち上げ花火》

スーパー《テラリオン》

出したターンに起動できないことを除けば《彩色の星》よりも柔軟性に優れた素晴らしいマナフィルター。
0マナで起動でき、カードが欲しい時に無駄に1マナ指定して起動ということをせずに済むというのも地味に嬉しいところ。
《命取りの論争》などのコストにする分にはタップインも気になり難いので、いくつかのデッキでは《彩色の星》からの置き換えがありそうです。

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