見出し画像

緊急!前頭葉会議の全容1

前回の記事「もう1人の自分」の続きです。

私の中にはもう1人の私がいるという話を前回しましたが、1度だけ、7人くらいの私が頭の中に出てきたことがあります。

それは、小学校6年生の時、エレクトーンコンクール全日本大会の演奏中に起こりました。

小学校最年長であり、今まで3回全国大会にきてた私にとっては特に思い入れのある年でした。
全国大会に行く前にも左手小指を骨折したり
そこそこ前途多難な中もぎ取った全国大会の切符。

なんとかたどり着いたその本番の演奏中に、「こと」は起こりました。

エレクトーンという楽器は、いわゆる電子楽器。
パソコンやスマートフォンなどと同じ精密機械です。精密過ぎるが故に、誤作動を起こすこともあります。

なんと、

用意していたリズム(シーケンス)のスイッチを入れても音が鳴らない!!!

というアクシデントが発生いたしました。

当時私はクラシックのオーケストラの曲をエレクトーンにアレンジしたものを弾いていて、後半盛り上がるにつれて、シンバルや大太鼓など、ドンシャンドンシャンという音が増えていくんですね。

コンクールなので、盛り上がる方が良いわけです。

で!!!

序盤でそのシンバルの音などが鳴らないということは、フルバンドなのにドラムが突然演奏中にボイコットして居なくなってしまったライブのような感じになってしまうのです。

それは…まずい。。

この時、演奏を始めてから30秒以上が経過していました。

コンクールの規定としては、当日私の部門は5分以内と決められていました。勿論短すぎても長すぎても、審査からは減点されてしまう為、大体5分ギリギリを攻めて設定します。

しかも、私のこの時の曲の原曲が10分以上のクラシック音楽だったため、かなり削って削ってむりやり絞り出したような5分だったので、

演奏し直しをする=タイムオーバーにより失格

という事が目に見えていました。

突然ドラムが消えてしまったバンド状態でこのまま演奏するか、
コンクールを無視して演奏し直しをさせてもらうか…

この間にも演奏自体は続いています。
緊急事態です。仕方がないので、飛行機の自動操縦のように、脳内で演奏を自動演奏モードに切り替えます。

「手さん足さん、あとよろしく!!」

状態です。

さて。どうしようか。
前頭葉会議が始まりました。

エヴァンゲリオンのゼーレのような、ひとつひとつ分かれている椅子にひとりの「すずきゆい」が座っています。ひとりずつ上からスポットライトがあたっているような雰囲気です。

ゆいA「どうする?」
ゆいB「そりゃコンクールだもの、演奏やめちゃダメでしょ」
ゆいC「だよなぁ。でも、シンバルとか鳴らないんだよ?どれだけ練習したと思ってるの?」
ゆいD「弾き直しだけでも基本アウトなのに、かなり弾いちゃったから時間的にもアウトで全然ダメじゃん?」
ゆいE「けどこのリズムの音だって何ヶ月もかけて完成したものなんだよ、、?それを発表せずに終わるの?」
ゆいF「そうだよ。大体リズムなしで盛り上がりが半分しかなくて演奏しても、賞を貰えるとは限らないでしょ」
ゆいG「けどここまできて演奏やり直しさせてもらえるかどうか…」

この時7人くらいのすずきゆいが、口々にこんな事を言っていました。その間10秒ないくらいだったと思います。

ゆい裁判長「バンバンっ!
えー、オホン。そなたたちの言うことはよーくわかった。ではこれはどうじゃ。もう一度だけリズム(シンバルの音等)をスイッチで入れる場面がある。そこでもまた音が出なかったら、
全てを諦め、一か八かで演奏しなおししようじゃないか。折角今まで何ヶ月もかけて作ってきた音。沢山の先生にみていただいて、リズム込みでの演奏を追求してきたのだ。
それを、全国大会という最高の場で披露できなければ、リズム達も浮かばれんじゃろうて。たとえリズム無しで何かの賞に選んでいただけたとしても、そなたたちはそれで嬉しいか?
違うじゃろ?コンクールは賞をいただく目標で来ているが、今ここにいるお客様は全国大会を聞きに来たのであって賞をとる人だけを観てるわけではない。
来てくださった方の心に残る演奏をする事が、本当の目的ではないのか?」

ゆいA-E「異議なし!」

と、いうことで、コンクールという土俵から降りる決意をした私は、いよいよ運命の2度目のリズムスタートの場面を迎えたのです。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?