無題

ヒーリングっど♥プリキュア1話目の感想

ヒーリングっど♥プリキュア1話目がスゴかったので、感想をまとめる。

最も驚いたのが、主人公が妖精の存在を認知していない状態で怪獣の暴れる公園へ向かった点。
自分から能動的に状況へ飛び込んだ結果プリキュアになることで、従来の”たまたま妖精と出会い、成り行きでプリキュアになる”受動的な展開から脱却。(ただ、僕が今まで見たシリーズは無印、プリアラ、ハグプリ、スタプリの4作のみなので、断定はできない)
(あえて曲解すれば)”頼まれたから” ”目の前に襲われる妖精がいたから”といった理由は、”断りきれない” ”受動的な” ”従属的な”……等の保守的な女性観の肯定につながりかねない。
そこでヒープリでは、主人公の主体性をパートナー妖精と共鳴した要因にすることで、視聴層の子供に対して自分から行動を起こすことを肯定的に見せる。
花寺のどかがキュアグレースになったのは、頼まれたからでも、選ばれたからでもない。プリキュアにふさわしい行いをした結果、プリキュアになったのだ。

さらに妖精側の描写に時間を割いているのも、非常にユニークな点だろう。
妖精が危機的状況から逃れるために保護者を探す展開は従来も見られた。
だが、人間に話を聞いてもらえないコミュニケーション不全や、理想を語り、自らの未熟さを痛感する自己認識など、キャラクターとして非常に深堀りをしている。
ただ単に守ってもらう(=プリキュアの戦う動機づけ)だけの存在なら、こんなにもじっくり時間をかけて描写する必要はない。
1話目でこなさなければならない展開が山積みにもかかわらず、ここまで妖精の描写に尺を割くのは、彼らが単に庇護されるだけではなく、主体性を持った存在であることを伝えるためである。

主人公と妖精、双方の主体性にじっくり時間をかけて描写していることから、今年のプリキュアは、妖精とプリキュアが対等な関係のバディものであることが分かる。
保護する/庇護される関係を崩したのは、”地球をお手当て”という要素にフィーチャーする目的もあるだろう。
”プリキュアが妖精を守る”(=一対一の個人間の関係)ではなく、”プリキュアと妖精が力をあわせて地球を守る”ということだろう。
従来の”日常を守る”プリキュアシリーズにはなかった公的な思想をどのように描いていくのか、今後の展開を想像するとワクワクする。

さらに、ある意味では異常と言えるほどの主人公の積極性が、過去の怪我か病気の反動であることを見せることで、危うさを感じさせる。
怪獣が暴れる公園に突っ込んだのは明らかに無思慮・無鉄砲だが、一方でそれによって彼女はプリキュアになれた。
単純な良し悪しの価値判断をせず、主人公の二面性を巧みに見せる展開が見事。
さらにさらに、キュアグレースの登場を見た敵が、先代プリキュアの存在を示唆する台詞を言った。続けて「人間がそんなに長生きできるはずがない」とも。
プリキュアを死と結びつける、この不穏な台詞。
主人公の性格・過去の出来事と合わせ、1話目でこれほどハラハラさせる展開は異様である。
先が気になってしょうがない。

強いて気になった点を挙げるなら、アイテムの使用法についてやや段取り臭いというか説明台詞が多い気がした。
ただ、キャラクターの描写に時間を割いたしわ寄せなので仕方ない部分ではあるし、エレメントなどロジカルな設定を採用しているため違和感は少ない。

ただ、これは看過できない点だが、変身バンクが異様に短い。
前作スタプリが特に長かったこともあるが、それにしても短いように思う。

キュアホイップ(プリアラ):71秒
キュアエール(ハグプリ):58秒
キュアスター(スタプリ):83秒
キュアグレース(ヒープリ):49秒

時間で比較しても短いが、そのうえ、
①ラビリンの描写・台詞に計10秒ほど使う
②衣装が段階的に変化しない(リボンが追加されるのみ)
③のどかのアクションが無い(リボンやアクセサリーが勝手に装着される)
④白衣を広げる、花の中から現れるなど、引きの絵が多い
など、アニメ的なアクションに乏しいため、いささか物足りなく感じた。正直、ハグプリ1話目の変身シーンで感じた物足りなさを上回る。
しかし、「プリキュアオペレーション」「エレメントレベル上昇」など、ロジカルな要素を強調した台詞は非常に好みであるし、ヒープリの非常に大きな特徴だろう。
変身シーンに関して、時間といい描写といい、前作スタプリと非常に対照的である。
まあ、単体での変身が短くても、仲間が増えればバラエティが増すし、後半からは短縮される。
残る二人、そしてまだ見ぬ追加戦士の変身シーンがどのようになるか、楽しみである。

こうした主人公の描写、大人っぽいテーマに加えて、OPのややトリッキーなアクションや、EDのテンポが早いダンスやカットから、未就学児のみならず小学校低学年程度の高年齢層も視野に入れいてる気がする。
アッパー系のスタプリが終わった反動でロスが大きかったが、ヒープリはガラッとカラーを変え、大河ドラマを予感させる1話目でワクワクが止まらない。

そんなわけで、ヒーリングっど♥プリキュアの1話目は、控えめに言っても最高だった。

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