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アニメ『アースグランナー』への失望

アースグランナーのPVを見たときから不安が大きかったけど、実際にアニメを見てみると……予感は的中。
アースグランナーのアニメには、少なからず失望したというのが正直なところ。

1.やる気を感じないアニメーション

まず最初に、トミカのアニメにもかかわらず一般車両にサイドミラーが付いてるとは、作り手は何を考えているのか。
トミカは小さな子どもでも安全に遊べるよう、サイドミラーが付いていないのは世界の常識だ。
なのに、トミカ50周年記念作品の『アースグランナー』に登場する車両には、堂々とサイドミラーが付いている。

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この点に関しては作り手の正気を疑う。
YouTubeで配信されているトミカハイパーシリーズのウェブアニメでは、きちんとデフォメルされた車両が出ているのに、なぜTVアニメで同じことができないのか?

できない理由など無いだろう。要は作り手にやる気がないだけだ。
『アースグランナー』はロボットのアニメではなく、トミカのロボットのアニメのはずだ。
何も考えず、惰性で作るからこういうことになる。

もちろん、アニメを単体の作品として作るために描写をリアル寄りにすることもあるだろう。
『シンカリオン』が好例だ。
もともとロボットのデザインありきで始まった経緯もあるが、アニメのシンカリオンはかなり複雑なデザインをしている。
玩具化にあたり、プラレールのバランスにデザインを調整し、変形も簡易化された。
が、玩具ではプラレールから未就学児でも安全に遊べる難易度の変形をするが、アニメでリアルな新幹線が多層装甲のロボットに変形することで世界観のリアリティを担保したため、玩具の魅力が何倍にも増したように感じる。
玩具と映像のギャップが大きすぎると玩具がチープに感じられるが、『シンカリオン』はこのバランスが非常にうまかった。
玩具の完成度が高ければ、映像作品では玩具よりもリアル寄りのデザインにしても魅力は損なわれない。むしろ相乗効果で魅力が増す。
シンカリオンしかり、戦隊ロボも、勇者ロボもそうだった。
アースグランナーの玩具も、非常に完成度が高い。アニメ化にあたって多少アレンジが加わっても、玩具の魅力は輝くだろう。

が、実際にアニメ『アースグランナー』はどうか?
車はリアルに描写されているが、ロボは玩具とまったく同じデザインで統一されていない。
この点はドライブヘッドも同様だった。ウェブアニメではロボと世界観が統一されていたのに、TVアニメになった途端にちぐはぐになった。
そういう間違った前例があったにも関わらず、『アースグランナー』は同じことをしている。
この熱と愛と玩具への敬意の無さが非常に腹立たしい。

いいアニメを作ってやろうという気骨はカケラも無く、スポンサー様の要望をこなすだけの事なかれ主義がスケスケだ。
一般的にロボットアニメは通常より予算がかかるのは承知だけど、なればこそ尖った面白さが必要では?

作り手は本当にこのアニメが面白いと思っているのか?
駄アニメを作業的にこなして誰が得をするのか。
『アースグランナー』には、「何が何でも面白いアニメを作ってやる!ちょっとムチャをして怒られても、圧倒的な面白さでスポンサーを黙らせてやる!」というやる気がない。
『ゾイドワイルドZERO』は玩具設定ガン無視のスケール感を出しているぞ!
(もちろん、ワイルド以前のゾイドを踏まえた上で許されるだろうという打算があってのこと。こういう大人の立ち回りも、アニメを面白くする要素だと思う)

2.玩具とアニメ、媒体間の齟齬

また、玩具の練度は非常に高いが、ライダーや戦隊を参考にしすぎたためにアニメという媒体とミスマッチが見られる。

マスク姿のヒーローはスーツアクターの繊細な演技があってこそ成立するものだが、細かな動作で劣るアニメでは、表情が見えないと感情が伝わらない。
マネキン人形が腕をバタつかせるような印象で、率直に言って不気味だ。

変身ブレスや武器の使用も、機微に欠けるアニメで毎回バンクを見せられても、商品の魅力を訴求しきれていないように感じる。
カットが単調なので、大仰な動作が空々しくなってしまう。
”乗り物”や”相棒”といったモチーフがかぶるだけに、裏番組のキラメイジャーの魅力が引き立ってしまうという皮肉な結果になってしまう。

肝心要のロボも、まず合体音声がクドい。
「レオ!チーター!レオチーター!キズナキズナ!レオチ~タ~!」は単語の単純な反復で引っかかりが無い上に、主張が強すぎてメカとメカがぶつかる興奮を阻害する。
せめて、メロディがあればBGMになっただろうに……。

これに対して、直近の戦隊ロボの合体音声を思い返すと、その洗練度合に改めて感動する。

・クセのある話し方で強い印象を残しつつ、短い名乗りで合体シークエンスを阻害しないタイプ……『キラメイジャー』『ルパパト』『キュウレンジャー』等
・にぎやかなメロディで合体シークエンスを盛り上げ、ピークで名前を名乗るタイプ……『ニンニンジャー』『キョウリュウジャー』等

この合体音声という点では、『シンカリオン』でも若干のぎこちなさはあったものの(合体完了時、BGMが終わってから決めポーズ固定で名乗るため、流れを止めてしまう。一回だけ名乗り時にもBGMが流れ続けたことがあったが、なぜかその後は戻ってしまう)、機械的なシステム音でメカっぽさを強調していたためギリギリ許容範囲だったと思う。
この点は、タカラトミーのロボット玩具の今後の課題ではないかと感じる。
長い歴史を持ち、完成度が極めて高い戦隊ロボの合体音声を、もっと露骨にパクってもいいのではないか、と個人的には思う。

デザインも記号的で、「勇者ロボっぽい」というよりむしろ「勇者ロボのパチもん」に感じる。
戦隊ロボであれば、未就学児でも「ココがポイントなんだ」と分かるキャッチーなデザインがあるし、勇者ロボは現実の乗り物の意匠をデザインに取り込み、動物の顔で強い印象を与える素晴らしいバランスだ。(勇者ロボのデザインは多種多様なので一様に語ることはできないが、とりあえず勇者ロボと聞いて多くの人が思い浮かべるであろうガオガイガーとマイトガインを想定。まあ、個人的にはこの二作を勇者ロボらしいと呼ぶことには抵抗があるが……)
が、アースグランナーは100%架空のデザインの上、モチーフの動物もかなり抽象化されているのでインパクトが弱い。
カッコいいといえばカッコいいが、よくあるヒーローロボの範疇な気がする。
戦隊ロボのような突き抜けたインパクトは無いし、勇者ロボのようなリアルさとヒーロー性を高度に両立させた職人芸も無い。シンカリオンのように象徴的な強いモチーフも欠ける。

戦闘も、タメが短くてあっさり気味。
必殺技→爆発(敵脱出)→見栄まで含めて様式美だと思うので、技を出すところで終わると肩透かし感。
残心は大事ですよ。

結論:シンカリオンのアニメ終了で失ったものは大きい。

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