見出し画像

『ゼンカイジャー』に不安を感じた3つの理由

いよいよ3月から放送開始予定の『機界戦隊ゼンカイジャー』。
シリーズ45作記念作品ということでレジェンドとのつながりも深く、また設定面では他に類を見ない新機軸が盛り込まれており、今から期待大の作品である。

残念ながら、いまスーパー戦隊シリーズの売上は芳しくない。これは個人的な好みや評価の問題ではなく、純粋に数字の問題だ。
そんな中でアニバーサリーのお祭り企画となれば、相当力を入れていることだろう。
が、『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』でテレビ放映に先駆けて登場するゼンカイジャーの活躍をみて、一抹の不安がよぎった。「コレ、大丈夫だろうか?」と。

映画『MOVIEレンジャー』について

キラメイジャー、リュウソウジャ―、ゼンカイジャーの三本立てとなっている『MOVIEレンジャー』であるが、映画としては正直ボリューム不足な内容であった。
『キラメイジャー』は単独の映画としては100点満点の面白さだったものの、今回のお祭り映画の柱としては物足りず、ゼロワンとの併演で見たかったというのが正直なところ。
『リュウソウジャー』はTV本編の描写と整合性を取るためナダが変身できないのはわかるが、話もアクションもキャラ描写もこじんまりとしてて、オマケ感が強い。

そして件の『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』であるが、去年のキラメイのような本編を補完する内容ではなく、ちょっと派手めの新作紹介といった程度の内容。
懐かしの悪役がぞろぞろ出てきて楽しいし、基本的には面白いものの、作品の設定を詳しく説明したり、ストーリーの踏み込んだりはせず、あくまでキャラクターの紹介に留まる。
必然、アクションが見どころになる構成なのだが、「人間1人+ロボ4人の構成」と「歴代戦隊との絡み」という『ゼンカイジャー』の特徴に、なんだか気になる点を感じてしまった。

違和感①ギアトリンガーの形状によるアクション時の問題

ゼンカイジャーは銃型のアイテム「ギアトリンガー」によって変身・戦闘を行う。しかし右側に回転レバーがある形状のため、通常攻撃は右手、変身や必殺技では左手に持ち替えながら使っており、アクションを見ているとちぐはぐな印象だ。
もちろんメタ的に解釈して「子供の遊びやすさを優先して、利き手の右手側にレバーを配置して回転ギミックに集中しやすくした」という意図は理解できるのだが、「銃を持ち替える動作」への違和感、さらに言うと「用途に応じていちいち持ち替えさせる形状のガジェット」の設計思想に対する違和感が強い。

画像1

通常はギアトリンガーを右手に持っているが、変身・必殺技時のみ中央のゼンカイザーのように左手で使用する

『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』でも同様の問題はあったが、基本的に左手で構えるのは変身時に小型アイテムを装填する時のみで、変身・通常攻撃・必殺技のすべての場面で引き金を引く時は右手に構えていた。銃としての基本設計は崩していないため、全然アリだ。むしろ、VSチェンジャーの二種類の持ち手の内、本体後部の持ち手は変身時しか使用しないため、「変身でのみ特定の動作を要求する二要素認証」のようなニュアンスが感じられる。ガジェットっぽさが増してカッコいい。
『キュウレンジャー』でも変身アイテム兼銃のセイザブラスターを左手に構えていたが、あれはあくまでガントレット型アイテムであり、持ち替えることは想定されていない。銃要素はオマケであり、攻撃能力を持った変身ブレスと言えるため、左右どちらでも問題はない。

ギアトリンガーの操作について、玩具の写真を見たときには全く気づかなかったのだが、いざ映像で見てみるとかなり気になる。
レバーの回転やガブガブアクションといった玩具的ギミックは一種のフィクションとして脳が処理するため問題無いのだが、銃という現実に存在する道具の使い方にウソが混ざると、どうしても「うーん……」と感じてしまう。
しかも、回転ギミックの都合上ギアトリンガー本体に拡張性は無いだろうから、この問題が解決される見込みは薄い。ゼンカイジャーは、来年の今頃までずっと銃を左右に持ち替え続けるのだ。あまり歓迎できたものではない。

違和感②ロボ4人によるアクションの見栄えの問題

『ゼンカイジャー』単体で見た時の最大の特徴といえば、やはり「人間1人+ロボ4人」というメンバー構成だろう。
これまでも設定上は人間(現代人)ではないメンバーや、何割かがデフォルトで着ぐるみのキャラクターといったシリーズはあったが、ここまで大胆な人員構成は前代未聞である。
この設定自体には全く文句は無い。着ぐるみやプロップを生き生きと見せる演技について東映特撮ヒーローはピカイチだし、過去作の多く信頼と実績がある。むしろ、どのようなストーリーや演出になるのか楽しみな気持ちのほうが大きい。

が、実際に戦う姿を見ると、なんというか……モッサリしているのだ。
ロボの着ぐるみが太いので、全身タイツのスピード感が失われ、動作の一つ一つに苦しさを感じてしまう。各部のシルエットが四角いので、なんだか鈍重そうだ。
変形ギミックがあるので、プロポーションが太めになってしまうのは理解できる。これが巨大戦であれば、迫力が増すので何の問題も無いだろう。しかし等身大戦となると、動きのぎこちなさは「なんか弱そう」な印象につながる。
いや、もちろん今までだって太い着ぐるみで等身大戦をこなすキャラクターはいた。『カクレンジャー』のニンジャマン、『オーレンジャー』のガンマジン、『ボウケンジャー』のズバーンなどなど、言うほど珍しいわけではない。
ただ、ゼンカイジャーのように①直線を基調としたプロポーションで、②二の腕や太ももの全周を装甲で覆い隠して、③ディティールは控えめで、④胴体が大きく腰のくびれが無いと、途端に重そうな印象になってしまう。これらはすべて、巨大ロボ的な印象を与える要素だからだ。

画像2

等身大戦をメインにするなら逆に、①丸みを帯びたプロポーションで、②二の腕や太ももはスーツのみor前面にアーマーを付けるのみで、③装飾を施し、④人体に近いスリムなシルエットにする必要がある。
具体例を挙げるなら、『カーレンジャー』のシグナルマンや『ギンガマン』のブルブラック、『マジレンジャー』のウルザードのような方向性があっただろう。『キュウレンジャー』などもそれに近い。
そうしなかったということは、実は『ゼンカイジャー』は巨大戦のほうに注力している(なりきり玩具よりもロボ玩具をメイン商品と捉えている)のかもしれない。

しかし、こと等身大戦のみに着目すると、引っかかる部分が大きい。
着ぐるみがデカいので、重要なアイテムであるギアトリンガーがボリューム負けしてしまう。ゴツいロボがちっちゃい銃を振り回しても、あまり強そうには見えないのだ。『ソルブレイン』のメディカルスキャナーをカッコいいと思う人がどれだけいるだろうか?

画像3

小さい武器で相手を倒すロマンを否定するわけではないが、武器の魅力=商品価値にはつながらない。

共通武装のギアトリンガーの他に、ロボは変形時の余りパーツを個別武器として使用するが、DXシリーズで商品化されるのかは怪しいし、仮に商品化されても大きなギミックも無く単価は低いだろう。商売としてはギアトリンガーを一番かっこよく見せるべきなのに、ロボが使うと魅力的に見えない問題が発生する。
着ぐるみヒーローは手首から先の表情付けで細かな演技を見せることが重要だが、肩~前腕にかけてボリュームがあると、相対的に手首が小さく見えてしまう。太いロボの着ぐるみでは、トリガーを引いて反動で腕がブレる、ギアを回転させるときの指の動きといった細やかな演技が見えづらいので、ちまちました印象になってしまう。
ついでに言えば、ゼンカイザーも肩アーマーが胸と一体化しているため、腕を上げづらそうにしている。ダース・ベイダーのように、肘から先だけの小さな動きになってしまわないか心配だ。

とはいえ、映画では巨大戦が無かったためモサい印象が強く残ってしまったが、TV放送が始まれば大きく印象が変わる可能性は大いにある。
また、メカがロボに変形し、さらに合体する構成はオーブロッカーロボやVRVロボを思わせ、とても遊びごたえのある玩具になるだろう。
ただ、思い切った構成にした反動と言うか、等身大戦をもっとどうにかできたのでは?と思わなくもない。TVではどのように描写されるのか、始まる前から戦々恐々だ。

違和感③ゼンカイジャーのキャラの弱さ

特別編や映画といった一時的なコラボではなく、他作品・過去作品との絡みを前提にした作品はいくつも例がある。それらはいずれも、生意気な俺様の『ディケイド』や『ゴーカイジャー』、ナチュラルにクレイジーな『ジオウ』など、レジェンドと並んだ時に迫力負けしないようにパンチのあるキャラ付けがされていた。
一方『ゼンカイジャー』はといえば、極めて普通だ。普通にいい子で、地味な印象を受ける。詳しい背景や動機が明かされていないのでよく分からない面が大きいとはいえ、短い尺の中でインパクトのある言動を残せないようなキャラクターでは、お祭り企画を引っ張れるのか不安になる。
歴代レッドが勢揃いした場面では頭数を揃えただけのお仕着せな印象で、レジェンドと比べてゼンカイジャーが特別であるように感じられない。
おそらく特殊なメンバー構成とデザインによってこの点を補強する意図なのだろうが、残念ながら見た目の派手さは慣れる。1年も見続ければ、「4/5がロボ」とか「見た目がゴツい」といった外見の特徴は見慣れてしまうだろう。
レジェンド要素を抜きにした単体で見た時に強烈なキャラクターが無ければ、レジェンドに埋もれてしまう。『ジュウオウジャー』出演時に変わらぬインパクトを見せつけたゴーカイジャーや、毎年映画などに顔を出してムチャしては「まあディケイドだし」と許される空気のディケイドなどに比べて、ゼンカイジャーはぶっ飛び度合いがまるで感じられず、キャラクター、引いては商品の魅力をアピールできるのかと気になってしまう。

とはいえ、まだ始まってすらないので

ゼンカイジャーはかなり楽しみではあるものの、今回の映画を見た限りでは期待よりも不安な点のほうが多く出てきてしまった。
感染症予防のためにでゲストを頻繁に出せないため、話作りも従来とは変わってくるだろう。作品内外で過去と異なる要素が多いので、どうなるのか読めない面が大きく、それが不安として感じられるように思う。
いざテレビ放送が始まればこんな話など笑い飛ばせるくらい面白くなることを期待しつつ、1話目を座して待ちたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?