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2週間集中してVチューバーの動画を見た

ここ2週間ほどVチューバーの動画を見まくっているので、思うところを軽くまとめておく。

1.動画内容の分類

ある程度の数を見ていると、だんだん以下のようなパターンがあるようにわかってきた。

① 生配信
配信しながらVチューバーがおしゃべりをする動画。1~4時間程度配信し、アーカイブとしてそのまま残したり、切り出しや字幕など編集したりする。
生配信は、その内容によって主に2種類のタイプに分かれる。

①-1 雑談
配信しながら、視聴者のコメントにリアルタイムで返答していく。
配信者と視聴者の距離が近いため、ほとんど友達のノリになれる。
好きなキャラクターと仲良くなれたと錯覚できるので、視聴者は嬉しいのではないかと思う。

①-2 ゲーム配信
Vチューバーがゲームをしながら話し、その様子を実況配信する。
コラボとして他のチャンネルのキャラクターと複数人プレイをすることもある。
ゲームしながらコメントにも返事をするパターンも多く、友達と一緒にプレイする感覚に近いのかな?

僕はクリエイターと距離をとって作品を鑑賞したいタイプの消費者なので、生配信にはあまり魅力を感じなかった。
また、ゲームをまったくしないので、ゲーム配信にも興味がない。
コミュニティ内のノリがあるので、新規で入りづらい気もした。
アーカイブは非常に長く、だらだらと会話が続くだけなので、腰を据えて見る気も起きない。

② 企画動画
リアルタイムで楽しむ配信動画に対して、何らかのテーマ・話題に沿って作成・投稿された動画。
1本あたり数分程度、長くて20分以下。ほとんどは3~6分程度に収まるように思う。
とりあえず11パターンに分けてみたが、当然網羅しているわけではないし、1本の動画で複数のパターンを兼ねるものもある。

②-1 バラエティ動画
〇〇してみた、〇〇説、といったユーチューバーらしい内容が多い。
面白さはピンキリ。きちんと練った台本、作り込んだ映像の動画もあれば、手間のかかっていない映像の寒いコントもある。
バストアップや顔のアイコンが表示されるだけの場合もある他のパターンに比べ、全身を表示して表情や仕草を見せる動画もある。
どれだけ大量のアイディアを出せるのかという企画力と、キャラクターの魅力によるところが大きい印象。

②-2 知識・経験談
Vチューバーの個人的な経験をもとにしたトーク。
学生時代の失敗談のようなあるあるネタ多め。
大抵はサブだが、これをメインにするVチューバーはネタが濃い。
ネタ自体の面白さもさることながら、トークスキルや演技力、編集で面白さが大きく変動する。

②-3 解説
資料をもとにテーマを説明する。
Vチューバー個人の知識量と熱意によって面白さが大きく左右される。
売上が落ちてきた飲食店がサイドメニューやアルコールに力を入れてテコ入れを図るように、チャンネルの方向性を模索する中で軽くググった程度の資料をまとめた動画は、びっくりするほどサムい。

②-4 ハウツー
Vチューバーが自身の持つスキルを伝える動画。
これをメインにするVチューバーは非常に高スキルな場合が多く、見応えがある。
また、Vチューバーを行うにあたって動画編集が必須のため、3Dモデリングのハウツーが多い気がする。

②-5 ゲーム配信
ゲームをプレイしながら実況する。
生放送を切り出す場合はプレイ中のリアクションの面白さメイン、そうでない場合はゲームの紹介が多い印象。

②-6 レビュー
特定の製品について、使用した感想をまとめた動画。
アニメチックにデフォルメされたキャラクターなので、製品にツッコミを入れても毒が軽減されるように感じる。
デジタルガジェットが多め。

②-7 コメントへの返答
動画についたコメントや、事前に集めた質問などに答える動画。
キャラクターの掘り下げや、視聴者との距離を縮める。
生配信と同様の内容ではあるが、内容をVチューバー側でコントロールしているため、動画としての面白さが増す。

②-8 ミュージックビデオ
キャラクターの方向性や世界観を生かした動画。
あえてこれをやるチャンネルは歌も映像も非常にクオリティが高く、キャラクターのアイドル性を高める。

②-9 コラボ
他チャンネルのVチューバーと雑談したりゲームしたり、生放送の切り抜きもあれば収録もある様子。
大人数でわいわいゲームをするのは楽しそうだけど、ヒトがプレイするのを端から見てて楽しいのだろうか?

②-10 自己紹介
チャンネル開設時は1分半程度の短いプロフィールを上げることが多い。
また、過去の動画のハイライトを切り抜いて、どのようなキャラクターなのかを開設する10分程度の動画を上げているVチューバーも多い。
Vチューバーによっては毎週~毎日動画を投稿しているので、開設から1年でも膨大な本数になる。
そのため、新規で見ようと思ったときに理解の補助になる自己紹介は助かる。

②-11 ストーリー
数は少ないが、キャラクターを使ってオリジナルのショートムービーを上げるVチューバーもいる。
PCがあれば誰でも新海誠になれるこのご時世、このタイプも増えていくのだろう。

2.Vチューバーに感じた可能性

僕はもともとユーチューバーをあまり見ていなかった。
理由としては主に3つ。

① ユーチューバー特有の編集が気に入らない
例えば「はいどうも、鈴木です」「さて今日はですね」「最近流行りの」「いや、流行りというか」「Vチューバー」「Vチューバーをですね」「まあそのー」「いろいろ見ましてね」「ちょっとそのー」「語ってみたいなと」「思います!!!」
みたいな、文節ごと、なんなら単語ごとにブチブチ切ってつなげる話し方がどうしても好きになれず、ほとんど見てこなかった。
一文の中でのつながりが不自然極まりないし、編集したことによる演出上の意図が見えないし(動画時間を極力短くしようという打算的な意図しか感じられない)、そのぶつ切り編集の労力が壮大な無駄に思えてしまうのが理由。
しかし、アバターに喋らせることで編集の不自然さを最小限に抑え、さらにアニメ的なルックのためぶつ切りがカット割りに見える効果がある。

② 映像が見づらいことが多い
いくらスマホが高性能でも、照明も構図もデタラメでは見る気も起きない。
ホームビデオで面白いのは、ハプニング映像だけ。
バーチャルであれば、絵なので当然見やすさが向上する。

③ ノイズが多い
生活空間で撮影していると、どうしても家具や雑貨などが写り込んで、本筋と無関係な情報が入ってくる。
手を加えるほどいいというものでもないが、単純に完成度の低いコンテンツを見ようとは思わない。
バーチャルなら、基本的に背景はシンプルだし、アバターも簡略化された絵なので画面がうるさくない。

んで、実際にVチューバーの動画を見て感じた可能性。
Vチューバーの動画を見始めると、自由度の高さと、配信者側でコントロール可能な配信形態、視聴者との距離の近さなどに感銘を受けた。
これ、現在のような雑談やゲーム配信以外にも、非常に多くの使いみちがあるのではないだろうか。
CGだからコピペでバリエーションが作れるので、個人情報を登録すれば視聴者に応じていろいろなサービスをカスタマイズできるのではないか。

例えば……
・Vチューバーが個人的にコンタクトしてくる
誕生日おめでとう動画を送ってくれるとか、Amazonの商品おすすめを読み上げるとか、近隣地域や好みのイベントやサービスを教えてくれるとか。

・V天気予報士
住んでる地域以外の天気など基本どーでもいいので、住所を登録してカスタム。
カレンダーと同期すれば、「明日から旅行なんだよね? よかったね、向こうは晴れてるよ!」といったバリエーションも。
地名や会話パターンは事前に収録すれば、配信の手間はそれほどかからないのではないかな?

・Vニュースキャスター
ニュースも同様に、興味のあるジャンルのニュースをピックアップして読み上げてくれる。
部屋の中で声優が読み上げればいいので、収録よりもコストを抑えられるのではなかろうか。

・VRライブ
ステージを準備するコストがかからず、時間になれば動画を配信するだけなので、利益率を高くできそう。
さらに、ライブ中にキャラクターが客席へ降りてきて、大勢の観客の中から自分だけにコンタクトしてくれる、といった映像も可能だろう。
大勢が同じ場を共有する一体感と、自分だけが選ばれる優越感を同時に、複数人に提供することができる。

他にも、有料のプレミアム会員なら生配信でゲーム対戦できるとか、優先的にコメントで会話できるとか、やり方はいくらでもありそう。
VRライブは実際にあるらしいけど、どんな内容なんだろう?

また、Vチューバーの動画と実写のユーチューバーを比較すると、見やすいというメリットがある。
資料を提示しながら解説する場合、フロップをアップにするよりも画面に画像が表示されるほうがスムーズで見やすい。
また、実写よりもアバターの解説ほうが頭に入って来やすい気がする。
Vチューバーをざっと見ると、サブカル好きということでゲーム配信が大半だけど、もっと知的な内容……経験談、解説、ハウツーといった分野はまだまだ伸びしろがあるのではないかと思う。
僕は中田敦彦のYouTube大学、岡田斗司夫、メンタリスト DaiGoといった動画を、料理や掃除のときに流して音声だけ聞いていることが多い。
なので、このジャンルで声優が読み上げるチャンネルが増えても需要はあるのではないかな、と。

3.Vチューバーに感じる課題

・デザイン
べつに統計をとったわけではないけど、Vチューバーの大半が女性。
アバターを美少女にする気持ちは、まあ、わかる。僕だって美少年と美少女どっちになりたいか聞かれれば、当然美少女一択だ。
少女性、イノセントであることへの憧れは確かにある。その反面、男性性、優劣を競う発想、ひいては競争の暴力性に対して非常に強い嫌悪感がある。
ただ、(全部とは言わないけど)少女の姿のアバターの多くが、肩や胸の谷間、腹部や太ももなど露出したデザインだったり、ボディのラインが見えるピッタリした衣装だったりする。
また、これも全部ではないけど、そういったVチューバーは胸が大きい/小さいことをネタにしたり、胸部をアップにしたりといった演出が見られる。
女性の体を性的な物体として捉えることには強い違和感を覚えるし、性的な欲求を解消するために女性を消費するのは失礼な発想だと思う。
10代も見るようなコンテンツで、女性の体を消費物として見せる演出は疑問。(もちろんこれはVチューバーに限った話ではなく、少年漫画やアニメなどでも日常的に見かける)

まあ、こういったデザインになる理由は想像できる。
単純に製作者が欲求の発露としてデザインしているのもあるだろうし、エロチックなデザインにしないと男性視聴者を獲得できないのではないか?という製作者の不安も理解できる。
ただ、面白いコンテンツであればエロを入れなくても十分やっていけるのでは、と思うし、実際動画の内容が面白いVチューバーはいる。
外面で釣るよりも、内面を練るほうが長期的にはいいのではないかなぁ。

・バーチャルではできないジャンル
料理や実験・工作などは、実写の映像にアイコンと音声をかぶせる方法で行っているVチューバーがいる。
ある程度の知識・スキルが必要なジャンルとして需要があるだろうから、増えていくといいな。
あまり見かけないけど、旅行やアウトドアも同じ方法で可能だろう。

で、バーチャルではできないジャンルを考えると、体を張った企画、例えばスポーツなどだろうか。
体を動かす様子を見せるものであれば、今のCG技術では難しいのではないか。
ひょっとしたらモーショントレースで再現は可能かもしれないが、例えば格闘家のキレッキレの動きは実写のほうが断然迫力がある。
ヨガインストラクターのVチューバーは確認できたが、ポーズのイラストをもとに解説するだけなので、これなら人間のほうがいいかな、と。
ダンスをするVチューバーは多いが、映像技術的にスゴくても、鍛えた人間が実際に肉体的なスキルを見せるときのスゴみはCGではなかなか見れない。

4.好きなVチューバー

・輝夜月

3~5分程度の短い動画ながら、テンポのいい流れと特異なキャラクターで非常に笑える。
面白いものを作ろうときちんと練り込む姿勢は好感が持てるし、実際面白い。
やたらハイテンションなキャラも、実際こういう人はたまにいるので、たぶん素に近いんだろうな……。
ちょっぴり頭のおかしい人が全力で楽しませようとする感じが好き。毎日10本くらい見てる。

・ちゆ12歳

尋常でない量と質の資料に裏付けされた、異常に豊富な知識をふんだんに活用した動画がメチャクチャ面白い。
HPに比べて徹底的に無駄を省き、一本のストーリーにまとめている印象。
ネタのチョイスがまた、マイナーを通り越して誰が知っているんだ?というか。
それを膨大な資料を提示しながら丁寧に解説してくれるので、無意味に賢くなれたように錯覚させてくれる。

・げんげん

バーチャルであることをフルで活用した動画。
すでに更新が終了しているのは残念だけど、この設定自体が一発ネタだから、だらだら続いてもしょうがないのかな。
多くのVチューバーが漫才的なコンテンツなのに対して、コント的なアプローチのげんげんは類似のVチューバーをあまり見かけない。
この、げんげんの方向性はバーチャルならではの笑いなので、Vコントはもっと他に出てきてほしいと思う。

・津軽ねぷこ

津軽弁という持ち味をネタに、タイミングのいい会話が楽しい。非常に笑いがうまい。動画の完成度が高いというか。
また、ねぷこの低い声が好み。
多くのVチューバーにみられる、キンキンしたカン高いアニメ声は誰でも同じに感じてしまうので、あまり好きではない。
まだ4本しか上げていないので、今後の展開が非常に楽しみ。

・食べる大谷さん

実写映像にアバターを重ねるのに、この方法があったかと目からウロコ。
くるくる回って絵柄が変わる姿は、かわいいし面白い。明るくハキハキした喋りも非常に好き。
ジャガイモ愛が重く……いや深く、こういう”ちょっと変わってる”感じがVチューバー的なキャラクターの面白さになる。
食文化研究ということで、あまり見かけない料理の数々が新鮮で面白いし、作るのは簡単で美味しい。

・懲役太郎

こういったネタはコンビニコミックくらいでしか見かけないような……?
なんせ当事者の体験談なので面白いのなんの。
引きこもりには想像も及ばないような生活なんだけど、イイ声の簡潔な語り口でスッとイメージが浮かぶ。
体験談以外にも、コラボではテーマに沿って犯罪者の思考を紹介したり、話題の時事問題に絡めてきたり、ネタの幅の広さが魅力。

・由宇霧

バーチャル花魁ということで、ゲーム配信しつつ下ネタを言ってくるのかと思いきや、マジメでガチの性教育。
性について茶化すのではなく、正しい知識と思いやりをもって楽しく過ごそうという、一貫した姿勢に共感が持てる。
性以外の分野も含めて、動画などのいわゆる”若者文化”を通した教育的な試みはもっと広まるべきだと思うし、より広がる余地もあると思う。

・いぬじま

お絵かき配信自体はVチューバー興隆以前からあったけど、早送りで出来上がっていく絵と、絵に纏わるトークの深さが魅力。
この知識が深い感じは、今はもう見かけない古いオタクだなぁって感じで懐かしい。

以上、2週間前にVチューバーの動画を見始めたにわか視聴者の感想まとめでした。
ときたま”Vチューバーは終わった”的な論調を見かけるけど、可能性はまだまだ広がっていると思う。
そりゃあ、雑談とゲーム配信は飽和状態な印象だけど、それ以外のやり方はいくらでもあるのでは、と思ったので。

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