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あたらしい食のながれ

「自分の食べるものが、どこで、どうやって、つくられているのか」と考えたことがありますか?

私も我が家の経済状況の中で優先順位をつけて、できるだけ安心できる・妥協できる食べ物を手に入れたいと思っています。野菜や家畜が育てられ、消費者に届くまでの「食の流れ」…大量の単一栽培、流行のオーガニック、持続可能な地産地消の食、狩猟採集の4種類にわけ、取材したり体験した記録をまとめた本『これ、食べていいの?』(マイケル・ポーラン著)に出会いました。

アメリカで自国民を養う以上に栽培されているトウモロコシは、栽培している農家が政府の補助金を受けてどうにか暮らしていけるレベルの安い値段で大企業が買い取っています。種苗会社の品種改良で大量にできればできるほど、トウモロコシの値段は下がり、農家は家計を維持するためにさらに大量に栽培しなければいけないのだそうです。人間が食べきれない量のトウモロコシは、粉やコーンスターチ以外に、シロップやサラダ油、薬の原料にもなるし、家畜の餌になります。本来、草を主食に育つ牛にまでトウモロコシを与え霜降りのお肉を大量に。。。それでも消費しきれず、日本などに輸出。。。おかげでアメリカだけでなく日本でも安価にカロリーを得ることができる反面、人々は肥満や不健康になり、医療費の増加が深刻になっています。(日本でも、同じ問題が起きてくるかもしれません。)

アメリカの機械化された大規模農場では、1キロカロリーの食物エネルギーを生産・保存・運搬するために、約10キロカロリーの化石燃料を消費します。「なぜ人間は石油を直接飲むことができないのか。。。化石燃料が安いうちしかできないやり方。」と著者は言います。大量投入の農薬や化学肥料での環境汚染も深刻化しているのに、アメリカ政府がこんな矛盾した農業政策を推し進めるのは、トウモロコシの加工・販売にかかわっている大企業が政治の分野でも力を持っているからです。

(大手の)オーガニックの農作物は?と思うかもしれません。確かに化学農薬や化学肥料、除草剤を使わないという点ではマシなのだそうです。「農業は持続可能であるべき」という考え方から始まった有機食品ですが、除草剤を使わないで雑草を抑えるために何度も土を耕すことは、土壌に固定されている窒素を空気中に放出させる、土壌の流出にもつながる、石油の消費も増えます。産地から消費地までの空輸にも石油を大量に使います。

「理想は、できるかぎり持ちこまず、持ちださず、再生可能なエネルギーを使って、自然のなかですべてが循環するようなやりかた」と考える彼は、理想の農場(農作物は基本地元でしか売っておらず、お客さんは農作物を買い物がてら農場の風景を楽しんでいる・・・太陽のエネルギーを活かして家畜や農作物を生産している「太陽農家」)で1週間手伝うことに―「ほんの半日働いただけでわかったのは、農家がつける野菜や乳製品の値段に今後いっさい文句はいえないな、ということ。卵1個が1ドルしたっておかしくありません。」と(笑)

狩猟採集では、イボイノシシのお肉やキノコ、家庭菜園で育てているレタスなどでお料理を分かち合って・・・著者の家族は、お肉を食べる回数がずいぶんと減り、信頼できる生産者から直接買うようになったのだそう。「どこで、どういうふうにつくられたのか、由来がわかるだけで、ほんとうに不思議なことに食べものはおいしくなる(逆だと、まずくなる)。それに生産者と会うのも楽しみのひとつ。自分が買うことで「新しい食の流れ」つくられていくのだと実感もできる。土地も植物も動物も、家族も社会全体も、健やかに育まれていくような食の流れ作りに、自分も役立っているのだと実感できてうれしくなる。」と。