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『食べる』でつながりを意識

◍ 黒豚のベテランお母さんが出産しました。餌を持って行っても出てこないので、小屋をのぞいてみると、お父さんブタから受け継いだ白色の子ブタが4匹。ただ、ブタがネットの外の放牧場を行き来できるように通り道だけ開けていたところからカラスが侵入したようで尻尾が根元までありませんでした。すぐにネットで完全に囲いました。

出産の最後に出てくる胎盤が見当たらないので、出産がまだ終わっていないのか、カラスに食べられてしまったのか…と翌朝のぞいてみても、やはり胎盤はありません。昨日持って行った餌を全然食べていない(出産のあと2・3日は、子ブタをつぶさないようになのか餌を食べたり立ち上がることもあまりしません。寝ながら餌を食べるお母さんブタもいるくらいです。)のは、許容範囲だとしても、水も飲んでいないので体調が気になるところ。

子ブタが産道で詰まっているのかもしれないと、家畜専門の獣医さんに相談したら、子宮収縮を促す「オキシトシン」を打つこともあると教えてもらい、注射しました。翌日、死んだ子ブタ1匹が生まれていました。それでもまだ胎盤は出てきません。

いつもだったら、授乳して横になっているとき「ブッブッブッ」と子守歌を歌うのに今回は歌わない。昨日差し入れしたサツマイモは食べてくれているけど、しんどそうなので、体温を測りました。41℃、かなりの高熱です。人間で言うところの産褥熱にかかっているようで、抗生剤を注射しました。

黒豚のお母さんはとても賢いブタで、私たちがネットを張っていなかったら、出産が近くなってくると心配そうに空を見上げて、ネットを張る必要があると教えてくれたり、赤ちゃんブタを敷きつぶさないように、赤ちゃんブタを小屋の片側に誘導しておいて、さっと場所を変えて横になったり、できることなら、ずっと彼女と養豚を続けたいほどの存在です。

でも、もうかなりの高齢出産なので、今回を最後にと考えていましたが、彼女の気持ちはわからないけど、最後は良い記憶(たくさんの子ブタを育て上げる?)で終わってほしいと思っています。今回を乗り切ったら、人間のエゴかもしれないけど、最後にもう一回だけ、ブタらしい子育てをさせてあげられたらいいな。

▤ 『食べる』でつながりを意識

空き時間に昼ご飯を食べながら、なにげなくテレビを付けたら、朝、子どもが選んでいたNHKのEテレがそのまま流れました。『NHK アカデミア』という番組をやっていて、生江史伸シェフの講義。

“私たちが日々何気なく行っている「『食べる』という行動は、地球や人類の未来を大きく左右しているとても重要な行動だ」と私は考えています。”

生江史伸「おいしさの未踏の地(後編)」 - NHKアカデミア - NHK

と始まって、心を鷲掴みにされたのですが、餌あつめの時間が迫っていて、途中までしか見ることができませんでした。(あとで、NHKのオンラインで、公開されている動画や講義がテキストにされているのを見ました。

Forbes JAPANの公式サイトでの生江シェフの記事『すべては「人を敬う」ことから 三つ星シェフが生む良い循環』。コラムを書かれた国府田 淳さんが、生産者さんとつながり、環境に対して何ができるかまで考えている生江さんへのインタビューで心に残ったか、読者に伝えたいと思ったからなのかタイトルに選んだ生江さんの言葉

“僕の活動について、サステナブルやエシカルなどと言われることが多いんですが、それを念頭においているわけではありません。もっとシンプルに『人を敬う』ことや、環境問題であれば『置かれている状況を敬う』『ダメージがあるものをケアしていく』などといった心づもりで行動しているだけなんです。”

Forbes JAPAN  コラム『すべては「人を敬う」ことから 三つ星シェフが生む良い循環

『人を敬う』『置かれている状況を敬う』『ダメージがあるものをケアしていく』という気持ちは、人だけでなく、環境や生き物、モノ、すべての地球に在るものに対して、自然と湧き出てくる感情のはずなのに、その言葉とは相反する出来事がニュースを彩る世界に、ときどき押しつぶされそうになります。

どうやったら、自分の子どもも含めて、『敬う』を含む温かな感情を育んでいけるのだろう?と一人の親として思います。

写真は、黒豚のお母さんの1年前の子育て。子ブタたちのお父さんが茶色に黒ぶちだったため、子ブタたちも茶色に黒ぶちの子が多い。今回のお父さん白くて胴長のランドレース種のお父さんのため、子ブタは白色。