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上手く力をぬく

◍ 島にも久しぶりに雪が降るような寒さがやってきました。1年前の冬は、寒さで畜産試験場からやってきた子ブタたちの免疫力が下がり、寄生虫が体内で増えたことによる下痢・おう吐で死んでしまったブタがいました。この冬は、寒さに弱い子ブタの時期を暖かく過ごすことができて、また、タンパク質とカロリー高めを心がけた餌やりのおかげか、寄生虫で死ぬブタはでていません。

暖かかったデメリットもあって、ブタの皮膚を食べるアブが10月まで活動し、できた傷口から、ミカンの色づく季節に越冬のためやってきたカラスたちが、ブタの肉を食べて、種ブタだけでなく、出荷間近の大きなブタまで背骨のお尻側を突かれたブタもでています。カラスの頭と嘴が入る深さ、握りこぶし大の穴。頻繁にカラスを追い払ったり、木々の残った広い放牧場全体を完全にネットで覆うことはできないけど、ブタたちがゆっくり休めるようにネットを張っています。それでも、日によっては突かれて、せっかく治ってきている傷口から血が出ていることもあります。

ブタも突かれたら痛いので、傷口を壁にくっつけて横になって隠そうとしているようなのですが、カラスもブタの背中の毛にしっかりつかまって、ブタが動いてもなかなか離れてくれない。。。肉がたくさん付いていて、ブタが追い払いにくいところを狙っています。毛深くなくて、皮も柔らかいのか白いブタが狙われやすいです。年中いるローカルのカラスと違って、群で行動する賢いカラスが旅立つ4月の末まで、カラスとの攻防戦は続きそうです。

▤ 上手く力をぬく

アフリカのタンザニア、ブンジュ村で『ティンガティンガ』というペンキアートを習ったSHOGENさんの著書『今日、誰のために生きる?』のなかには、『あきらめる時間が来る幸せ』という章があります。SHOKENさんがいたブンジュ村では、19時には日が暮れて、電気が使えるのは1日3~4時間程度なんだとか。早く自分なりのティンガティンガが描けるようになりたくて、電気を点けてでもできるだけ描いていたSHOGENさんは、村長さんから「日没になって、薄明かりがついていたとしても、もう真っ暗だよね。だから、すべての作業をあきらめないといけない。(略)あきらめる時間が来るということは、今から真の休息の時間になるということだからね」「今の日本は24時間、電気がついているよね?深夜になっても、いくらでも作業できる。そうすると、あと30分作業したら、いいものが生まれるって、思ってしまっていない?」「いい作品は、心に余裕がないとできないよ」

昔、暮らしたことのある西アフリカのセネガルでは、電気や水道設備のない村もまだまだあります。街では、電気や水道も使えるのですが、雨季のスコール(ザっとたくさんの雨が数時間降る)のときや、電気や水が足りないときは、地区ごとに停電や断水することがあります。

断水したら、井戸から水を汲みます。水汲みは腕や腰の筋トレにもなるし(セネガルでは腰の曲がった人を見かけたことがありません。水汲みのお蔭もあるのかも)、水汲みの順番を待つ間に、同じく待っている人とおしゃべりを楽しめます。停電したら、寝たり(笑)、ろうそくの仄かな明かりで静かな時間を過ごすこともできます。雨が降っていない停電だと、街中の明かりが消えて、満点の星空を味わえます。高い建物が少なく、山がないので、360°のパノラマビュー!セネガルでは、日本のように、急いでも空回り。ケセラセラ、今の状況を味わう・楽しむ心を鍛えられました。

それでも今、思うように動いてくれないブタや人間の子どもに振り回されることもあります。全力でやっても、仕事もプライベートも時間が足りなくて、やらなければいけないこと・やりたいことをあきらめることも数えきれないほど。

ずっとピーンと張りつめた糸のように心も体も緊張していても、上手くいかないときはあるし、急な衝撃に対応できずにケガをします。ブタを軽トラに積み込むときは、全力でブタの衝突を防ぎながらも、跳ね飛ばされそうなときは筋肉を傷めないように、飛ばされても上手に転べるように・・・・力をぬけるように意識しています。

寒さでこわばった体にはストレッチ、心にはブンジュ村の村長の言葉を思い出してみてください。