放牧養豚のスキル

何か用事があって早く放牧場に行った週末のあ る日、遠くから「放牧養豚がしたいんです!」と 同世代(と思われる)男性が訪ねてきてくれま した。農に携わりたい人って一定数存在すると 思っているのですが、実際に農を生業にしてい る人は少ない。農業で生きていくには、どんな スキルがいるのか・・・あまりにも漠然とした未 知の世界であり、天候などの環境に左右される 不安定な暮らしに踏み出すには、みんな賢すぎ るんだと思います。
私自身、農業系の短大で学んだはずなのに、養 豚農家になって役にたったのは体力と去勢の経 験(学生のときは生後 1 週間の子ブタ 1 頭だけ を去勢)くらい。それよりも役に立ったのは、セ ネガルで暮らしたときの・・・家畜が草原や街中 を自由にエサを求めて動いている光景や、自分 でニワトリや羊・ブタを飼った経験。日本にい るときに市民活動支援センターや国際協力関係 の仕事で必要になった「伝える」「つながる」技 術でした。学校で農家として生き抜く実践的な ことを学んでいなかった・・・。
どんなお仕事もですが、実際にするのと、その 仕事をしている人の近くで話を聞いたり少し手 伝ったりして、その仕事を想像するのとでは、 全然違います。小さな養豚農家兼肉屋の我が家 の場合、①ブタを飼う技術(餌になる残飯や食 品残渣を必要な量、手に入れる。ブタを健康に 保つ。お肉にしたいタイミングでブタが希望の 大きさになるように、出産時期・出産頭数を調 整する。美味しいお肉になるようにエサの内容 を調整する。ブタを飼う環境を持続的に利用で きるように土地を休ませたり、1つの放牧地で 飼うブタの頭数を調整する。エサや草・廃材を 確保するために、アンテナを張っておく。等)② お肉を売る技術(実際にブタに触れてもらうこ とで、“地域で”ブタを飼うことのメリットを感 じてもらう。お肉の美味しい食べ方を伝える。 清潔・新鮮にカットしお届け。お肉を無駄にし ない。継続できるように経営を安定化させる。 等)が必要です。
失敗も多く、いつも考えること多々、試行錯誤 ですが、大切にしているのは、ブタがブタらし く過ごせているか?と、お肉を買ってくださる 方へ農園だより「小さな杜だより」やフェイス ブックで現状や想い・考えを伝えること。ブタ がこの地域で長く飼えるように、土地や植生が 持続可能な放牧ができているか?そして、ご縁 とタイミング!

2017年5月

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