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#25 教員の給料はどうなる?

公立学校教員の初任給はいくら?

全国平均で209,760円(令和2021年度調査)。

2019年度に文部科学省が発表した「学校教員統計調査」の公立小中高の平均給与額は・・・・

【公立小学校】
 ・平均 32万6600円
 ・男性 34万8500円
 ・女性 31万3000円
【公立中学校】
 ・平均 33万7700円
 ・男性 35万500円
 ・女性 32万600円
【公立高等学校】
 ・平均 35万8200円
 ・男性 36万7200円
 ・女性 33万9300円

男女差があるのは、小中高全てで男性教員の方が平均勤務年数が長いため、給与額に影響している。

令和5年2月のニュースによると、文部科学省が今年、公立学校教員の給与制度見直しの議論を本格化させるのを前に、自民党が具体案を検討していることが分かった。

自民党は今春、提言をまとめて政府に提出する方針で、文科省の制度設計に大きな影響を与えるとみられる。

文科省は昨年12月、教員の処遇改善のあり方について検討する有識者会議を設置し議論を始めている。

今年1月の会合では、教員の給与をめぐって複数の委員から、何らかの形で改めるべきだとの指摘が出た。

「頑張っている教師が報われる給与体系になっていない」

「教員が力を発揮するために、法規や制度の整備が必要だ」
といった意見である。

通称、給特法と呼ばれている『公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(1972年施行)』は、残業代を払わない代わりに基本給の4%を「教職調整額」として支給すると定めている。

「残業代なし」の仕組みに対しては、現場の教員らから「定額働かせ放題」といった批判が上がっている。

戦後にできたこの制度では教員の給料は一般公務員より1割程度高く設定されていた。

教員の勤務時間は一般公務員より長いという理由からだ。

制度的には一般公務員同様に残業代が出る仕組みになっているのに対して、文部省(現文部科学省)は校長らが時間外勤務を命じないよう通達を出し、残業代が生じないよう制度が運用されていた。

しかし、実際には残業が常態化し、これまでに残業代支払いを求める訴訟が全国で起こされてきたことを踏まえ、文部省は66年に公立校教員の勤務実態調査を実施した。

その結果、小中学校の1カ月の時間外勤務は平均約8時間と推計され、これに見合う基本給の4%を「教職調整額」として上乗せして支給することとし、残業代は支給しないという制度を設け現在に至っている。

半世紀がたち、教員の働き方は過酷化した。

文科省が2016年に実施した勤務実態調査では、時間外勤務の平均は小学校が月約59時間、中高校が約81時間(過労死ライン超過)で、給特法の制定時と比べて残業時間が著しく増加している。

民間企業同様、教師の日々の仕事は多忙を極める。

毎日の授業の準備はもとより、教材研究、テスト採点、授業の合間及び授業後の分掌業務、学校行事、部活動をはじめとした課外活動とその準備と指導、保護者対応、生徒の教育相談・見守り・支援、他の教員との情報交換、他の教員の支援、いじめ・不登校問題への対応と予防、職員会議、学年や上司への報告、外部連携・地域活動など、多岐にわたり、全ての業務にかかる時間を正確に把握することは困難である。

学校での居残り残業を減らしたとしても、結果的には自宅への「持ち帰り残業」となり、その分を給与や残業手当に換算することは難しい。

よく誤解されることがある。

「学校の先生は、夏休みや冬休みがあっていいですよね。休んでいても給料が貰えるんですから・・・・」と。

しかし、実際のところ、夏季・冬季の長期休暇は児童・生徒のためのものであり、教員は「勤務を要する日」であることから、実際に休養するためには、年次有給休暇を利用するしかない。

また、長期休暇中に「研究」「研修」目的であれば、学校、勤務地を離れて研究会や研修会に参加することはできるが、それは休暇ではない。

教職者としての資質向上に資するための活動である。

教員の実質的な残業代を計算することは非常に難しい。

実態を正確に把握したうえで、「残業代支給」になるのか、あるいは「調整額アップ」なのかという議論はこれからである。       

給与や諸手当は税金から拠出するのは当然のことながら、現実の勤務実態を反映させると巨額に膨れ上がることは明白である。

「残業を減らそう」のスローガンだけでは、見せかけの働き方改革、残業の隠蔽が増えるのではないかとの懸念もある。

教育公務員は「全体の奉仕者」とはいえ、労基法の適用を受ける労働者であり、心身の健康が保証されてこそ能力を発揮できるというものだ。

長年にわたる課題が解決されなければ、今後も教員志願者数が減っていくことは避けられないだろう。

政府及び文科省の議論を注視したい。