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台風、ヒップホップ、いかしあうつながり

台風15号、非常に強くて、窓ガラスが割れるかと思って眠れなかった。雨戸閉めればよかった……台風ナメてた。

明け方、「家、大丈夫かな〜」と思いながらiPhoneで刻々と変わっていく雨雲レーダーを見ながら、考え事をしていた。

台風は、風と雨の猛烈な波だよな。「台風」っていう実体はないんだよな。全ては波であって。僕らが「台風」と名前をつけているだけで。

昔読んだ、福岡伸一さんの『動的平衡』を思い出す。『動的平衡』によると、僕らの体も、分子と原子に分解していくと、ただの「波」なんだとか。水を飲み、食べ物を食べ、体全体の物質は何ヶ月かで入れ替わっていく。虚無的なものの見方かもしれないけど、台風も僕らも、そういう意味では何も変わらないんだね。

将来、台風の雨量が増えて、速度が落ちるって予測されているみたいだけど、今の台風はこれまでの地球の気候との総和だよね。1700年以降、人間が排出した温室効果ガスの結果だし。

最近シーズン2が公開されて、楽しみにしてたヒップホップエボリューションを観た。ヒップホップの黎明期から、数えられないくらいの人が創意工夫、チャレンジを繰り返して、ヒップホップ文化が育っていく様子をすごくちゃんと取材してまとめた、すばらしいドキュメンタリー。

僕は中学生だった90年代初頭、Warren GとかSnoop Doggy Doggとかの西海岸を聴いていた。と言ってもb-boyでもなんでもなく、ギャングスタ・ラップは遠い世界の出来事だったけど。その後出てきた2pacは高度すぎて、僕はよくわからなかった。2pacが死んだ時、僕をヒップホップに引き込んでくれた仲良しが落ち込んでいたのを思い出す。その後で、Puff DaddyのI'll Be Missing Youがすごくヒットしたのはよく覚えている。(僕はシンプルすぎるサンプリングがあまりにも商業的な感じがしてあまり好きじゃなかった)その後、僕はTribe Called Questにドハマリして、いまだに聴いている。

中学生だった僕は浅はかにヒップホップに接していたので、文化的意味とかはあまりわからなかったけど、ヒップホップエボリューションを通じてヒップホップ界で起きていた大きな流れが理解できて、僕が当時リアルタイムで摂取していたヒップホップというものを大きな流れの中で初めて位置づけて認識することができた。西海岸と東海岸の対立の中で、2pacもThe Notorious B.I.G.も若くして死んでしまったんだ、とか、Puff DaddyのI'll Be Missing Youはそんな状況の中で、今までにない、新しい表現になったんだ、とか。(そう思って聞き直すと、悲しくて美しい曲…)なにかがムーブメントになっていくダイナミズムみたいなものを感じられて、本当に面白い。

ヒップホップ文化も、実体はない。触れるわけじゃないし、匂いもない。けど、無数の人の生き様が大きな流れと波を生み出し、その結果次々と新しい世代がヒップホップに魅了されて、またその流れに加わっていく。一人ひとりの小さな実験、チャレンジが、あって次の何かが生まれる。そういえば、ヒップホップは最近、ロックを抜いてジャンルとして世界最大になったそうな。ヒップホップは世界を永遠に変えた。それがいいことかどうかは置いておいて、すごいことだ。引いてみれば、まさに進化論。

過去から現在、現在から未来への関係性。縦軸の時間軸の関係性と、横軸の、同時代同士の関係性。それらが複雑に影響しあって、大きな流れを作っていく。

気候も、45億年続いている地球環境と、38億年続いている生態系と、20万年つづいている人類、とくにここ1000年くらいの人間活動の総和が、今日の台風になっている。大げさな、と思うかもしれないけど、事実そうなのだ。

そう思えば、今僕らが取り組んでいる小さなことも、かならず未来の社会に影響を与える。システムダイナミクス的に言えば、未来に影響を与えずに存在することはできない。

そう思うと、面白いね。そんな事を考えているうちに、台風が去って行った。家の周りをチェックしに行ってこよう。


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