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コインランドリー
冬用の毛布を洗おうとコインランドリーに行った。容量の大きな洗濯機を探していると一番大きな、一番高性能なドラム式のものが空いていた。乾燥機能も備えていて「マイクロ泡でふわふわの仕上がり!」というポップが目立つ。800円。少し高い。しかし毛布の洗濯回数は一年に一回くらいのもの。一年に一回の、800円。せっかくだからこれにするか、と思い、その「せっかくだから」という気持ちのまま、800円を投入した。するとすぐにブザーが鳴った。
「ピピー! 蓋が閉まっていません、蓋を閉めてください」
ブザーに焦って、促されるまま蓋を閉めた。
「ガチャン! ピューー」
堅牢な施錠音を皮切りに、水が鋭く出てきた。
あれ、まだ毛布入れてないんだけど。
慌てて蓋を開けようとするも、高性能すぎてびくともしない。本来ならまず毛布を洗濯機に入れて、蓋をして、お金を投入してスタート、だったのに、もぬけのランドリーで洗濯が始まってしまった。
え。800円払ったのに。
ドラム式洗濯機の中央部分が丸く透明なガラス張りになっていて、そこから中の様子が見える。きれいな水と、きれいな泡が、ただひたすらにざぶんざぶんと洗われている。800円。泡は真夏の入道雲のように白く、透明な窓を満たしていく。「マイクロ泡でふわふわの仕上がり!」カラフルなポップが、洗濯機の振動で小刻みに揺れていた。
大きくて安い水