王将

大学時代は大学の近くに住んでいて、近所の『餃子の王将』でよく友達数人と夜のご飯を食べた。確か23時閉店だったと思う。サークルの練習や授業が終わった22時ごろ王将に行って、閉店まで食べたり話したりした。店内に締め作業の雰囲気が漂い始めたら察して店を出る。地下鉄の駅まで一緒に歩いて、そこで別れる。僕は家まで歩きで帰るから、駅の中には入らない。友達はよく、僕を羨ましがった。

「こっから歩いて帰れんのいいなー」

僕は友達が羨ましかった。例え一駅分であれ、友達と一緒に帰る時間が楽しそうだった。僕は一人で、ほどよく暗くなった道を歩いて帰る。友達が降りていく23時の駅はとても明るかった。友達が光に吸い込まれるのを待って、僕は家の方向に歩き出す。あれはきっと、寂しかった。寂しかったんだけど、羨ましがられていたから、寂しくないと思っていた。秋のコンクリートが濡れていた。束ねた傘の先端を爪先で蹴りながら、できるだけ振り回さないように気をつけた。

あの王将にまた行きたい。寂しくないと言い聞かせて、一人で歩いて帰りたい。

大きくて安い水