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『芸人短歌の歌会はじめ』書き起こし

先日『芸人短歌の歌会はじめ〜トークもあるよ〜』というイベントに参加させていただきました。内容は、井口可奈さん企画・編集の冊子『芸人短歌』に参加したメンバー(+リップグリップさん。かが屋・加賀さんはお仕事でお休み)によるトークライブと歌会でした。

イベント後に歌会パートのアーカイブを見返していたら僕が僕の発言を書き留めておきたい気持ちになったので、ここに書きます。詳しくは、3時間50分(!)の配信アーカイブをご覧ください。見始めたらあっという間です!

6番と12番を選びました。以下、歌会パートにおける僕の発言です。

※誰がどの歌を作ったのかは知らずに喋っています。

渓谷の動画を2倍速で見る 神様が出すイエローカード

『芸人短歌の歌会はじめ』6番/レッドブルつばさ

「ばぁーって全体を見たときに、57577の定型であるものは意外と少ないな、っていうのがあって。そうなったときにこの、6番の歌はものすごく定型、なんですね。57577にはまってる。というので、たぶん、読んだときにストレスが自分に対して一番少ない。負荷が少ないから、ものすごく親切心みたいなものを、歌の内容にかかわらず定型というところで、感じたんだろうなっていうのが一個あって。そのあと内容はどうだ、ってなったときに、いま(ガクヅケの)船引さんが仰っていたように、そのーなんか、自分でもこういうのって良くないというか。良くない、までは言わないけど、本当はめちゃくちゃベリーグッドではないことなんだろうな、みたいな感覚がある。そういうものに対して『神様』が『イエローカード』を出す、という。別にレッドカードじゃないっていう。なんて言うんでしょうね、みんなの共通認識で『あんまりベリーグッドじゃないよねー』はあるけど、それを突き通しちゃってる、というか。かゆいところ掻いたら血ぃ出るの分かってるけど掻きたくてずっと掻いてる、みたいな感じの、全員に絶対あるもの、みたいなものを、内容としては感じて。それを何かものすごく、新しい角度というか、この角度でその共感を得たことってなかったなあ、という驚きがあったので、これ良いなあと思って選びました」

ティファールを沸かしたときに催して尿意のほうを大切にした

『芸人短歌の歌会はじめ』13番/鈴木ジェロニモ

「これも定型を守ってるので、57577にはまってるので読みやすい、というのと。なんですかね、『大切にした』っていうところで。結論で言ってしまえば、排泄をした的なことだろうなおそらく、という状況ではあるんですけど。じゃあそれをどう言うのかとか、そのときの自分の気持ちって、どういう言葉を選んだらできるだけその気持ちに近づけるのか、っていう。そこでこの『大切にした』という言い方がおそらく、なんかこう、一番その真実に近い言葉選びなのかなあ、みたいなのは思いました」

この短歌は自作のものだったので、「人狼ゲーム」みたいに、悟られないように喋りました。僕の「人狼」っぷりはアーカイブで確認してください!

海外の自動車学校に通って免許にcarってあるかたしかめる

『芸人短歌の歌会はじめ』3番/井口可奈

「これは『海外の』が良いなと思って。たぶんその、『carってあるかたしかめる』の、いやドライビング・ライセンスじゃない? 的なその抜けてる加減が、『イギリスの』とか『アメリカの』とかを最初に言っちゃうと、たぶんそっちに目線がいっちゃうんですよね。どの国で取ったの? みたいな、実際にどうなの? っていう方にいっちゃうんですけど。『海外の』ってぼやかすことで、『自動車学校』とか『免許』の方に話題を誘導してる、という。そのなんか、抜けてるけどちゃんと自分の言いたいところは立たせてる感じ、みたいなのは読んでて面白かったです」

椅子に乗り歯列矯正待つわれと壁掛けられたキース・ヘリング

『芸人短歌の歌会はじめ』12番/リップグリップ倉田

「状況としては、歯医者さんにいるときなのかなと思って。それで『椅子に乗り』っていう表現が、ちょっと、待合室の椅子にいるというよりは、実際にこう、診察というか。あのー、台の上にいる、みたいな状況なのかなと思って。そういう自分と、『壁掛けられたキース・ヘリング』との対比というか、その二つを詠っているんですけど。何て言うんでしょうか、『キース・ヘリング』って言われたときに浮かんだ絵は、ユニクロのTシャツとかの、キース・ヘリングのデザイン、ありますよね。なんかあのー、いろいろ人間が踊ってる、踊ってる人間がいっぱい描いてあるやつで。カラフルな人、ピクトグラムみたいなのがいっぱいいる、とか。そういう、ガチャガチャしたもの、みたいなイメージがあって。それで自分が今こう、ものすごく大人しく座っていて、歯も正しい位置に直される。なんか、整頓される状況を待っている自分と、その『壁』の絵の、ガチャガチャしたものとして成立しているアート、みたいなもの。そのーなんか、実際の距離としては自分の椅子と『壁』なんですけど。その『壁』と自分の距離がものすごくこう、ぐーんって遠くなる、みたいな。なんて言うんでしょうね、実際の距離間じゃない、自分の感覚上の距離の遠ざかり、みたいなのがこの一首の中にあるなあと思って。好きだなあと思いました」


僕の短歌は13番でした。ありがとうございました!

大きくて安い水