松本創『誰が「橋下徹」をつくったか』より

”政治学者の吉田徹(北海道大学大学院法学研究科准教授)によれば、ポピュリズムの核心は「否定の政治」にあるのだという。既存の権力を敵とみなし、「人々」の側に立って勧善懲悪的に振る舞う。ゆえにポピュリストは素人っぽさや庶民感覚を売りにする、と。まさに橋下の政治手法そのものという気がする。”(第3章「標的になるメディア」92頁)

”漸進的な改善策や定常型の社会よりも、新しく大胆な「改革」や「変化」を良きものと持て囃す。「納税者」というより「消費者」的な損得勘定で、行財政コストや公務員数の削減を迫る。公的セクター画担ってきたサービスを市場化・民営化し、自由競争にさらせば値段は安く質は高くなると単純に考える。そして、市場で勝ち残った物だけに価値を認める。スピードと効率を重視し、そのため政治家に強いリーダーシップを求める。
これら新自由主義的な改革思考に加えて、言論や報道の手法の問題も大きい。
「改革派」「抵抗勢力」といったレッテルを貼ってバトルを煽る。「激論」「徹底討論」などと称して、声の大きい者がその場を制することをよしとする。極論や暴論であっても、わかりやすい断言や直言を面白がる。物事を単純化し、善悪や白黒の結論を急ぐ。目先の話題やニュースを競って追いかけるが、立ち止まったり、振り返ったりして検証することがない。
どれも小泉ブームの当時から漠然と社会を覆っていた空気だが、橋下はその主張と手法をより確信的に、より先鋭化させて大阪に持ち込んだ。そして、「改革」という名の破壊を性急に推し進めようとした。それに賛成するか反対するか二者択一を迫り、大阪の人びとを分断した。”(第6章「凍りつくメディア」243〜244頁)