四谷怪談 / コクーン歌舞伎

奥様につれていってもらいました、四谷怪談。コクーン歌舞伎。

串田先生のコクーン歌舞伎は、「封建社会において個人の解放はいかにして可能になるか?」というもともとの歌舞伎のテーマの普遍性を強調した感じで面白かったんです。夏祭浪花鑑とか。

四谷怪談は、お岩だけじゃなくて登場する女性が全員不幸になるお話。没落した塩冶の側の女性が全員酷い目にあうだけじゃなくて、民谷伊右衛門を婿に迎えた伊藤家の側すら、生き残った女性たちがあっさり物乞いになっちゃったりする。

で、原因はすべて封建的な社会システムとクズ男たち。

四谷怪談のホラーストーリーからは脇道にそれるんですが、行方知れずだったのに突然現れた夫と行方知れずの間に取り入ってきたクズ男の板挟みになったお袖(お岩の妹)が、この二人の男に殺されるくだりがついてた。奥様によるとこの深川三角屋敷の場は、まれにしか上演されないらしいんですが、ここも通しで上演することで女性の生きづらさみたいなテーマが強調されてるんです。

ポスターが何故かスーツ姿の主演陣で、江戸時代から現代までさまざまな時代の断層を見せ続けるような演出もちりばめてあるし、おまけにライブ演奏の劇伴にホーミーがかなり盛り込まれていて、重層性という視点を増幅。

クズ男がクズのままでいることを許すような社会システムって、現在の日本ですら、貧窮している女性により厳しい環境をもたらし続けているのではないか? 今も昔も重層的にそういう女性の生きづらさが続いているのではないか?…ってのを、背景にはスーツの男たちとか鉄塔と送電線とかちりばめ、でも現代の女性だけは舞台に登場させず、むしろ女性の生きづらさはもとの歌舞伎のホンと演技をそのまま投入して連続性を強調したような感じでしたけれども。

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/479