寺子屋と鰯賣

奥様に連れて行ってもらいました。10月大歌舞伎/勘三郎追善興行/歌舞伎座夜の部。 寺子屋。なぜか私が寺子屋のチケットを取ってもらうときまって、出張が入ったり、田舎に行く用事が出来たりして観たことがなかった演目。今回はなんと台風ですよ。でも奥様が気象庁高解像度降水ナウキャストをウォッチして行程をきめてくれたおかげで、行きも帰りもほとんど濡れなかった。濡れなかったのはいいんですが今まで観たことなかったので、寺子屋では何も比較できず。仁左衛門かっこいいとか、勘九郎まじめだなとかしか思わなかった。

鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)は勘三郎+玉三郎でみたことがあったんです。三島由紀夫のホンで、切腹/心中/神頼み以外に個人が救済されない歌舞伎の世界観を、お話の要素ごとに徹底してひっくり返したコメディ。
 主人公猿源氏を勘三郎がやると、彼が思うがままにふるまうフィジカル・コメディになって、リミットが外れたような緊張感が楽しかった。今日の勘九郎は同じ役で、同じように大きくのけぞり、同じように盛大におどけているんですが、枠や型の内側から誠実になぞっている感じ大。でも、笑い声を織り交ぜながら台詞を言って様になるのは勘三郎くらいと思っていたら、勘九郎もナチュラルに台詞に笑い声を混ぜてた。こればっかりは型とか芸とかいうよりは、人となりの部分。そんな、いかにも追善興行的な発見もあり、感動しましたけれども。