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鉄道政策に関するブログ、補足。1.切符は従距離制が正しいのか?定額制が正しいのか?

目次
1.切符は従距離制が正しいのか?定額制が正しいのか?
2.在来線の快速夜行ブルートレインの設定。
3.新幹線と在来線の競合対策。
4.再生可能エネルギーの利用について・顧客の身になって考える。

1.切符は従距離制が正しいのか?定額制が正しいのか?

今から一年半前に、私は日本の鉄道政策に関するブログを書いた。
これから四回に分けて、その後の展開などを踏まえて、補足を加えたい。
興味のある方は、私が前に書いたブログ、

1.鉄道運賃はどうあるべきか?切符は従距離制が正しいのか?定額制が正しいのか?

4.一日乗り放題切符の効果。

を参照されたい。

まず、鉄道事業の性格として、鉄道インフラを維持し、一定のダイヤで列車を運行するために必要な原価は、大半が、乗客一人でも百万人でも変わらない固定費だということだ。
だから、一定の距離を乗ったら元の取れる定額制が正しいのではないか?と、私は考えている。
つまり、お客さんが乗った距離に比例して、輸送原価が発生するわけではないからだ。
短距離を乗るお客さんは、従距離料金で運賃を貰い、ある程度乗ったら、2000円から2500円程度の乗り放題切符で、在来線はどれだけ乗っても料金は変わらない。というのが正しいのではないだろうか?
また、新幹線、在来線特急も乗り放題切符を作って、ある程度の距離を乗ったら定額制にするのが正しいのではないか?

たとえば、遊園地のフリーパスは、一定額を払えば、遊園地のアトラクションは乗り放題になる。
もし、遊園地のアトラクション毎に料金を徴収したら、人気のあるアトラクションは多額の料金収入がある。
しかし、人気のないアトラクションは、料金収入が少なく、廃止になるかもしれない。
だが、フリーパスでアトラクションが自由に乗れるなら、人気のないアトラクションにも乗るお客さんが増えるかもしれない。

鉄道でいえば、乗り放題切符は、遊園地のフリーパスのようなものである。人気のあるアトラクションは幹線であり、人気のないアトラクションはローカル線である。
青春18切符であれば、普段あまり利用しないローカル線に乗る青春18キッパーのような人たちが利用するかもしれない。
つまり、乗り放題切符は、ローカル線を維持する機能があるのだ。

たとえば、郵便やインターネットサービスは定額制である。
岐阜市内から岐阜市内に出した封書も、北海道や沖縄に出した封書も84円であるが、その料金は定額制である。
青春18切符も、岐阜から豊橋まで利用した場合も、岐阜から下関まで利用した場合も料金は定額である。

鉄道サービスは、郵便サービス、インターネットサービスと同じではないだろうか?というのが、私の考え方である。

2022年6月、ドイツで、9ユーロ(約1300円)を払えば、一ヶ月間、ドイツ国内の公共交通機関が乗り放題になる切符を6、7、8月に売り出した。
鉄道の在来線、地下鉄、バス、公営フェリーなどが乗り放題になった。
なおICE(高速鉄道)、EUの長距離列車、長距離バスには乗れない。
この切符が生れた背景には、ウクライナ戦争があった。
ガソリン価格が高騰し、ドイツ国内のガソリン消費量を削減する対策と、CO2削減という目標を達成するために、ドイツ政府が国を挙げて、車を利用していた人たちに、鉄道などの公共交通機関を利用してもらうために設定された切符だった。

そのために、ドイツ政府は25億ユーロ(約3565億円)を拠出し、交通機関の収入減を補填した。
この切符は6、7、8月の3ヶ月間販売され、実に、のべ約5200万枚が販売され、公共交通機関の混雑が問題になるほど当たった企画だった。

この切符は、利用者に好評だったので、2023年5月から、ドイツ政府が15億ユーロ(約2143億円)を拠出して、一ヶ月49ユーロ(約7000円)で公共交通機関が乗り放題になる切符が売られている。
翌年度からは値上げされる予定である。

詳しくは、グーグルで「ドイツ乗り放題チケット」を検索されたい。

今から20年ほど前に、近鉄、名鉄、南海が共同企画した「3・3・SUNフリー切符」という、ドイツの乗り放題切符とよく似た切符売り出されていた。
そのうち、ワイド版「3・3・SUNフリー切符」は、近鉄、名鉄、南海の鉄道路線はもちろん、系列のバス会社、フェリー、ロープウェイなどが、大人6000円、小人3000円で、連続3日間乗り放題になった。
北は岐阜バスで荘川まで。南は奈良交通で和歌山県新宮まで。東は豊橋。西は南海フェリーで徳島まで。鉄道と系列交通機関が乗り放題という切符だった。
また、特急券を購入すれば、特急に乗ることができた。
御在所ロープウェイ、金華山ロープウェイ、志摩マリンレジャー、名鉄海上観光船も乗り放題だった。
2005年、愛知万博が開催された年は、通年で販売されていた。また、切符を呈示すれば、志摩スペイン村、明治村、リトルワールドなどの施設が割り引き料金で利用できた。

私は、このワイド版「3・3・SUNフリー切符」を使って、こんな日帰り旅行をした。

岐阜から名鉄名古屋本線で豊橋まで行き、豊橋から豊橋鉄道渥美線に乗り換えて、終点の三河田原駅まで行く。
三河田原駅から豊鉄バスに乗り換えて、渥美半島先端の伊良湖岬まで行き、伊良湖岬から伊勢湾フェリーに乗り、鳥羽まで行く。
鳥羽駅から近鉄線で宇治山田駅まで行き、三重交通のバスで伊勢神宮内宮まで行く。
宇治山田駅まで戻り、近鉄名古屋駅まで行き、名古屋から名鉄名古屋本線で岐阜まで帰った。
この費用は、ワイド版「3・3・SUNフリー切符」一枚6000円である。

この切符は、お客さんに受けたのはもちろん、売り上げた切符一枚につき一定額が、鉄道系列のバス会社、船会社、ロープウエイ会社に入ったと思われる。
鉄道の毛細血管である地域交通のインフラを維持するのに役立ったのではないか?
鉄道の乗客が減り、車の利用者が増えると、バスの利用者が減る。
バスが減便になると、バスの利便性が悪くなり、さらに車の利用者が増える。この悪循環を切る効果が、ワイド版「3・3・SUNフリー切符」にはあったと思う。

詳しくは、グーグルで「3・3・SUNフリー切符」を検索してもらいたい。

今回の、ドイツ公共交通機関乗り放題切符は、日本でも一度研究する価値があるかもしれない。
私が思うに、日本全国公共交通機関(新幹線、座席指定特急などを除く)乗り放題切符を、3日間、6000円で売り出したらどうだろうか?
風力、太陽光発電施設、蓄電施設などを、国がグリーン・ニューディール政策で建設し、初期投資を国が負担。
燃料費ゼロの電気を鉄道会社に、再生可能エネルギー由来の水素を、バスや船の動力源とすれば、国が運賃を補助するのと同じ効果がある。CO2対策にもなるし、観光地の振興対策にもなる。

この切符を作るのは、かなりの政治力が必要になる。切符一枚あたり交通事業者に入る金額は、決めるのが困難であることは確かだからだ。
この障害を取り除き、なんとか作ってもらいたいものだ。
地方の公共交通機関の経営維持に役立っと思われる。

最近、私が面白いと考えた切符は、JR東日本の、鉄道開業150周年記念で、JR東日本の新幹線、特急などが乗り放題になる切符だ。
大人22,150円、小人10,150円で、連続3日間、JR東日本の新幹線、特急、第三セクターなどが乗り放題になる切符である。
この切符は極めて好評で、今年に入ってファイナル版が売り出された。首都圏から、秋田に行く乗客が増えたらしい。

私は、現在、外国人しか買えない、ジャパンレールパスを、日本人にも買えるようにしたらと考えている。
ついでに、「のぞみ」、「みずほ」、第三セクターも乗り放題になれば面白い。
また、JR東日本の新幹線、特急は全車指定席にするのではなく、「のぞみ」のように、三両程度、自由席を設定するのが良いだろう。

鉄道会社が出し惜しみをしなければ、顧客も出し惜しみしないだろう。

あと、最近当たった切符は、JR西日本のサイコロ切符がある。
JR西日本が、大阪を起点として、JR西日本の予約サイトe5489に登録している乗客を対象に、ネット上のサイコロを振り、5000円で新幹線や特急の指定席を利用して、加賀温泉、出雲市、山口県湯田温泉、博多のいずれかの往復切符が、サイコロの目で当たるという切符である。
広島起点のサイコロ切符も売り出され、令和五年五月からは、岡山起点のサイコロ切符が売り出されている。
今年一月に売り出された、大阪起点のサイコロ切符は、あまりに好評であったために、途中で販売を打ち切ったくらい、当たった切符だった。

このサイコロ切符の成功の理由として、私が考えるのは、以下の通り。

1.料金が、新幹線、特急指定席往復で、5000円と安い。
2.良い目が当たれば、大阪→博多間を5000円で、新幹線を利用して往復利用できるという期待感。
3.どこでも良いから、鉄道の優等列車で、一泊か二泊の格安旅行がしたいという根強い需要がある。場所は問わないというお客さんが多数いる。

成功の原因としては、まだ、いろいろ考えられるだろう。
鉄道会社としては、一月から二月、六月の梅雨の時期は、比較的列車の空席が多いと思われるので、その時期を狙ってサイコロ切符を販売しても良いかもしれない。

一ヶ月、9ユーロ(約1300円)のドイツ公共交通機関乗り放題切符。JR東日本の鉄道開業150周年記念乗り放題切符。JR西日本のサイコロ切符は、ドラッカーの言うところの、「予期せざる成功」であり、鉄道運賃が下がれば、車ではなく、鉄道などを利用して旅行したいという、潜在的な需要があることを立証した。

これら乗り放題切符などをうまく使えば、何か新しいイノベーションのチャンスが隠れていないだろうか?

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