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事業戦略、第六章、第三次産業革命の衝撃。604.あるコモンズの風景。

第三次産業革命が進展した、ある農山漁村の地方部で、どのような生活が行われるのか?簡単に想像してみよう。

○○地区では、○○地区電力組合という共同組合を、住民、農民、工場などが設立する。
○○地区電力組合は、年金基金や金融機関等から融資を受けて、次の投資を行う。

地区内にスマートグリッドを敷設。家屋の屋根、空き地などに、太陽光パネル、風車を設置。水流の落差を利用した小水力発電施設、地熱発電施設、山林を整備した時に出た間伐材、枝、木の皮などを燃やして発電するバイオマス発電施設などを設置。
住宅の断熱化工事や電化を行い、自動運転する電気自動車のほか、蓄電池、燃料電池による蓄電施設を作り、再生可能エネルギー由来の電気を蓄電。
この電気を、組合に加盟した一般家庭、工場などの動力源とする。

そして、売電収入を借入金の返済に当て、現在では燃料費ゼロの電気を、ほとんどゼロの価格で、組合員は利用している。

昔、日本には入会地(いりあいち)というものがあった。
里山を農民たちが共同所有して、里山から農民たちは、燃料や暖房に使う焚き木などを切り出し、家を建てたり補修する木材を切り出し、キノコや木の実などを採取した。
その入会地の利用は、農民たちの話し合いで、どのように里山の資源を利用するか?罰則を含めた規則を作り、共同利用していた。

ヨーロッパでも、囲い込み運動が行われる前の、17世紀ごろ、土地は領主や農民たちが共同所有していた。

これをコモンズ(入会地・共有地)と呼んでいた。

地方では、第三次産業革命が進展すれば、コモンズが復活するだろう。
そのエネルギー源は、風力、太陽光発電、小水力発電、地熱発電、バイオマス発電などによって得られた電気である。
余剰の電気を、蓄電池、燃料電池や電気自動車に蓄電し、スマートグリッドによって、個人間、あるいは個人対企業で、電気を融通する。

インターネットの繋がるところでは、どこでも製品を生産できる。工業団地(テクノパーク)を建設し、3Dプリンターを使って生産する生産者、起業家などが集まって、コモンズで必要とする製品を生産する。

農地では、自動運転の電動トラクターなどが農作業を行い、収穫された農産物を出荷したり、地区全体でシェアする。
国からは、いくばくかのベーシックインカムが配られ、最低生活は保証される。

電気自動車、トラックが導入され、地産地消の電気で動く。
カーシェアリングによって電気自動車が入会地のように共同使用され、一般車の相乗りサービスが普及し、地方でも車なしで生活できる。

これから第三次産業革命が進展するに従い、インターネットの繋がる場所であれば、どこでも3Dプリンターによる生産拠点が作られ、テレワークが進展し、人々が農山漁村などの地方に戻り、都市部の過密が解消するかもしれない。

コモンズで生産された製品は、AIを利用したネット通販サイトによって販売される。
工業団地から無人のEV配送トラックが無料に近いコストで、商品を配送してくれる。
高速道路は、維持、補修などや道路の管理を国や地方自治体が行い、高速道路料金は、定額かほぼ無料である。

また、教育は、ムークと呼ばれるオンライン大学の配信を受け、自宅の端末の前で行われる。
ムークは、アメリカの超一流の学者が講義を全世界に無料配信している。
国が予算をつけ、そのオンライン講義を日本語の同時通訳で、日本人向けに受講できるようにしてはどうか?
大学への入学はオンラインで手続きを行い、授業は自宅でオンライン受講して単位を取得する。
一般向けにも講義が公開されている。また、小中学生を対象としたインターネット授業が行われている。

受講料無料で、世界の超一流学者の講義を受けれるなら、どうして日本の都心部に下宿を借りて、大学に通う必要があるのだろうか?

次に、コモンズの住民が大都市に出かけたり、旅行をする場合を考えてみよう。
鉄道線と主要幹線道路の交差地点に、広い駐車場を持った快速列車の停車駅が建設される。
コモンズから快速停車駅までは、無人の電気自動車、相乗りサービスの車が運んでくれる。

国や地方自治体が建設した風力、太陽光発電施設、蓄電施設から、電気がほぼゼロの価格で鉄道会社に供給され、電車の動力を賄っている。
そのため、鉄道運賃が大幅に下がり、極めて安価な「日本全国、鉄道線・バス乗り放題切符」を買って、人々は快速列車や快速夜行列車などで、遠隔地に旅行する。

国や地方自治体が建設した風力、太陽光発電施設、蓄電施設から、新幹線にほぼ無料で電力が供給され、新幹線の運賃は、極めて安価になっている。

風力、太陽光発電施設、蓄電施設から供給された電気で、水を電気分解し、発生した水素をバス、トラック、燃料電池電車に供給して、動力費を大幅に削減している。

そんなところだろうか?いろいろなアイデアが湧いてくると思う。読者も、いろいろなアイデアが湧いてくるのではないか?

世界の未開の辺境の地でもコモンズが生れるだろう。

電気も無い、世界の辺境の地であっても、空き地に風車、太陽光パネルを取り付け、スマートグリッドを敷設。蓄電施設を備えれば、都市部と同じような電源インフラができることになる。

地下水を汲み上げる電動ポンプを使って、水を汲み上げれば、幼い子供が、村から水源池に水を取りに行くこともなくなり、子供が学校に通えるようになる。
照明が夜間に点灯され、洗濯機、ヒーターによる電熱器など電化製品が普及すれば、女の人が家事労働から解放されることになる。
インターネットと繋がれば、3Dプリンターで、様々な製品が一個から生産可能である。
機能を最低限に絞った工作機械や洗濯機などの家電製品を生産する3Dプリンターが生れれば、辺境の地の人たちも、都市部と同じインフラを享受できるようになる。
初期投資は、先進国からの援助によって行われることになる。
何らかの他地域からの系統線と繋がり、余剰の電気を売ることができれば、売電収益で、投資が回収できるかもしれない。

詳しくは、
「『再エネ大国日本』への挑戦」山口豊著、(山と渓谷社刊)
「里山資本主義」藻谷浩介・NHK広島取材班著、(角川書店刊)
が、参考になると思う。

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