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鉄道政策に関するブログ、補足。4.再生可能エネルギーの利用について・顧客の身になって考える。

私は、一年半前のブログで、国が、JRの廃線跡、駅舎の屋根などに太陽光パネルを設置する。海沿いの廃線跡に風車を取りつけるなど、風力、太陽光発電施設、蓄電施設を国費で建設し、初期投資を負担すれば、燃料費ゼロの安価な電気が鉄道輸送機関に供給され、動力費がゼロに近づく。

その電気で、在来線の快速列車、快速夜行ブルートレインの動力源にすれば良いだろう。とブログで述べた。
詳しくは、私のブログ、
22.新造車両費、動力費をどう賄うか?
31.最後に、公共交通機関の動力費ほぼゼロを
を、参照してもらいたい。

同じことを、国土交通省も考えていたようで、令和4年3月、国土交通省は「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」を立ち上げ、令和4年8月に中間取りまとめを発表。
令和5年5月26日に、最終取りまとめが公表された。
興味のある方は、「鉄道分野におけるカーボンニュートラル」をグーグルで検索して下さい。最終取りまとめを読むことができます。

公表は、次の3つの柱から成る。
1.環境優位性のある鉄道利用を通じた脱炭素化
2.鉄道事業そのものの脱炭素化
3.鉄道アセット(資産)を活用した脱炭素化

まず、「2.鉄道事業そのものの脱炭素化」について。
2022年現在、全国には、約1万両の抵抗制御の電車、約2500両の気動車が存在する。
約1万両の抵抗制御の電車を、VVVF制御(半導体制御)電車に置き換えることを提案している。
特に、Sic(シリコンカーバイド)パワー半導体を利用した半導体制御電車は、抵抗制御の電車に比べて75%の電力を削減できる。
75%削減というのは、凄い数字だと思う。

次に、半導体制御の電車は、減速時に、車のエンジンブレーキのように、モーターを発電機に変えて電力を発生させている。これを回生ブレーキと呼んでいる。
そして、この電気を架線に流し、他の加速中の電車に供給したり、蓄電池に蓄電することで、エネルギー消費量の節約を行うことができる。
これによって、電力コストを下げることができる。

非電化区間を走る気動車を、再生可能エネルギー由来の電力で発生させた水素で動かす燃料電池電車、蓄電池を積んだ電池電車、微生物がCO2を吸収して生成されたバイオ燃料を利用した、ハイブリッド電車などに置き換えて、カーボンニュートラルを実現するとしている。

次に、「3.鉄道アセット(資産)を活用した脱炭素」

駅、車両基地、ホームの上屋、廃線跡、線路ののり面などに、軽量のペロブスカイト太陽電池を設置、太陽光発電を行う。
また、鉄道防風林、海沿いの廃線跡に風車を設置。そして、風力、太陽光発電によって、電車の電力費、駅の電力費などを賄い、動力費を削減する。
再生可能エネルギーの安定供給のために、変電所、鉄道高架下に蓄電池を設置。昼間や風のある時の余剰電力、出力制御によって無駄になる電気を蓄電するなど、鉄道で使われる電気を安定供給する。

鉄道線の架線を使った再生可能エネルギーの送電、マイクログリッドの構築。

鉄道を利用した水素サプライチェーンの構築。駅の水素拠点化を行う。

1.環境優位性のある鉄道利用を通じた脱炭素化

鉄道は、人キロ当り、トンキロ当りのCO2排出量が、自家用車、トラック、バス、航空機に比べて極めて小さい。
従って、人や貨物を自家用車、トラック、バス、航空機から鉄道利用に変更すると、社会全体のCO2排出量が削減される。
このように、環境優位性のある鉄道に、人、貨物をシフトさせれば、脱炭素化を図ることができる。

私からの提案であるが、航空機から快速夜行ブルートレインに乗客をシフトさせれば、CO2の排出量が削減される。
ドイツ乗り放題チケットのような切符を作れば、人々は車ではなく、公共交通機関を利用するようになり、やはりCO2の排出量が削減される。

私の希望としては、国の日本版グリーン・ニューディール政策により、風車や太陽光パネルの設置、蓄電施設の設置を行い、国費で再生可能エネルギー関連施設の設置を行なってもらいたい。
そうすれば、燃料費ゼロの安価な電気を、電車、車両、駅舎などに供給できるようになり、政府が鉄道会社に補助金を出しているのと同じ効果が生れる。

また、私が、「ヘリコプターマネーでなぜ悪い」の、「3.貨幣創造代行による返金制度」に示した方法を使い、鉄道会社の負担ほぼゼロで、SiCパワー半導体制御の快速電車などを建造できないだろうか?
制度は、認められていないが、実現できれば素晴らしいと思う。

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顧客の身になって考える。

以前、私は昭和三十年代のニュース映画を見たことがある。
真夏の山あいの駅で、蒸気機関車が牽引する旧型客車の普通列車が、特急の通過待ちをしている。客車は超満員で、デッキまで人があふれている。
しばらくして、完全空調のジーゼル特急が、その列車を追い越していく。
この経験をした普通列車のお客さんは、自分たちは、国鉄に酷い仕打ちをされていると考えただろう。

昭和四十年代になって、名神、東名などの高速道路が開通し、高速道路網が整備され、カローラ、サニーのような大衆向けの乗用車が登場すると、人々は、乗用車を利用して行動するようになった。
このモータリゼーションによって、鉄道を利用する乗客が減り、鉄道路線の廃止が相次ぎ、国鉄は、毎年巨額の赤字を計上するようになり、経営危機に陥った。

顧客が、なぜ鉄道を見限り、車に乗り換えたのか?それは、このニュース映画が全てを物語っている。

優等列車を優先して、普通列車の利用者に差別を強いるというのは、いつ頃から始まったのだろうか?
国鉄時代、運賃をたびたび上げ、準急を急行に、急行を特急に格上げし、実質上の値上げを行なった。
特急列車に乗客を誘導するために、普通列車の乗客が増えても列車を増結せず、お客さんを長時間立たせておく。
このように、鉄道会社が露骨な優等列車誘導策を採ると、乗客は、自分たちは差別されていると怒り、鉄道ではなく、車を利用するようになる。

もっとお客さん目線で、鉄道会社は行動すべきではないか?
たとえば、お客さんから鉄道ダイヤの提案を受けつけ、鉄道会社は提案を受け入れる。また、こんな列車があれば良いという提案を、鉄道会社が受け入れる、というのも手の一つだと思う。
これは、どんな会社でもやっていることである。
乗客にとって利便性が高まれば、それはお客さんの利益になるし、ひいては、乗客増につながると思う。

スーパーでは、買い物をしてくれるお客さんに、公平に接するよう努力している。スーパーで2410円の買い物をしてくれるのは、上得意である。
しかし、JRでは、2410円(そのまま利益になる)払う青春18キッパーには、やや冷たい感じがする。
良く、客単価という言葉を聞くが、客単価が高いから、即利益が増えるという訳ではない。
たとえ客単価が低くても、大量のお客さんが利用してくれれば、一定の利益が確保できる。
利益額は、利幅☓利用客数で決まるのを忘れてはならない。

鉄道は、一部のお金持ちだけではなく、お金のあまりない人も利用する交通機関である。いかなる形であれ、鉄道の利用者が増えれば、鉄道会社の関連事業施設、観光施設、駅ナカのコンビニなどに、お客さんはお金を落としていってくれる。

お客さんは、来てくれるうちが「花」なのですよ。

これで、鉄道政策のブログ・補足はおしまいです。長らくのお付き合い、ありがとうございます。
次回からは、長編トラベルミステリー小説「夏の旅」を、17回に分けて連載する予定です。

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