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ヘリコプターマネーでなぜ悪い。8.なぜヘリコプターマネーが可能なのか?

再生可能エネルギー関連施設の徳政令と返金。公共料金対策。座礁資産対策の徳政令と返金。国債、公債などの償却。国民への現金給付によって、大量のマネーが市中に供給されることになる。

はたして、日本はハイパーインフレ、財政破綻になるだろうか?

144兆円のベーシックインカムを国民全員に配っても、シミュレーションでは、生鮮食品、エネルギーの価格変動を除いたコアコアCPI(インフレ率)は2%に達しないという結果が出ている。

今は、ウクライナ戦争で、食品、エネルギーの価格が上がって大変だが、いずれ戦争は終わり、戦争が終われば、もう、再生可能エネルギーを主体とした第三次産業革命の一連の動きは止まらないだろう。

たとえ、144兆円のベーシックインカム給付を政府が拒んでも、再生可能エネルギー関連資産の徳政令と返金、公共料金対策、座礁資産対策は、市中金融機関等が行うもので、国は申請と受理以外関与していない。

もちろん、マネーサプライは増えるが、同時に、電気料金、鉄道運賃、高速道路の通行料金など公共料金が下がることになる。

たとえば、再生可能エネルギー関連施設が、徳政令と返金によって企業のバランスシートから消えれば、また、座礁資産対策として、火力、原子力発電関連施設がバランスシートから消え、減価償却費の計上が不要になれば、電気料金は劇的に下がることになる。

電気料金が下がれば、工場や輸送機関の動力費が大幅に削減され、物価が下がる方向に動く。

マネーサプライによるインフレと、公共料金の下がるデフレが同時に起きることになる。
高速道路料金が1000円程度の定額で使い放題になったり、大幅に引き下げられれば、企業の配送費が減少するので、財やサービスの価格が下がりデフレになる。
デフレにより、家計の可処分所得が増え、その分、国民生活が豊かになる。

このような、物価下落の連鎖が続けば、物価はどんどん下がり、国民の可処分所得は増える。
可処分所得が増えれば、GDPの6割を占める国内消費支出が増え、需要は旺盛になるだろう。
そうなれば、企業は内部留保を取り崩し、生産能力を増強するための設備投資を行うようになる。
その結果として、日本は成長軌道に乗るのではないか?というのが私の考えである。

これは、政府の手を借りず、民間のみで可能である。

あと残る問題は、市中金融機関等が、債権償却損や固定資産償却損によって、貨幣創造や貨幣創造代行を行う権限を、政府と国会が認めるか?どうかである。

たとえば、再生可能エネルギー関連施設の徳政令と返金が認められれば、人や事業者は、こぞって市中金融機関等からお金を借り、風力、太陽光発電施設、蓄電施設を建設するだろう。
その結果、市中に貨幣が供給され、民間部門へのマネーサプライが増える。
それによって、再生可能エネルギー関連施設の事業者、建設会社を通じて、社会にお金が回るようになる。
それは、日本がデフレ不況から脱出する契機になるだろう。
また、公共料金が安くなれば、家計の可処分所得が増加し、国内消費支出が増え、企業の売上が増える。
そうすれば、企業は内部留保を取り崩し、設備投資を行い、そこでも日本企業は成長軌道に乗ることになる。

次に、なぜヘリコプターマネーを民間にばらまいても、ハイパーインフレにも、財政破綻にもならないのか?私の考える論拠を示してみよう。

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論拠その一

財やサービスに希少性がなくなってきている。

これは、ジェレミーリフキンが、「限界費用ゼロ社会」という本で述べているが、第三次産業革命の進展は、財やサービスの希少性をなくしていくだろう、というものだ。

企業は、常に、最高の知見を持って製品コストを引き下げ、競争上の優位性を確保しようと努力している。
その結果、財やサービスの価格は年々下がっていく。
たとえば、太陽光パネル、風車、リチウムイオン電池など、毎年価格が低下している。
再生可能エネルギーの、価格ほぼゼロの電気を使った生産設備が普及し、再生可能エネルギーで動く3Dプリンターなどで、労務費がほぼゼロになる。
そして、私の考えた会計操作で、減価償却費の計上が不要になれば、財やサービスの価格は、やがてゼロに近づいていくだろう。
つまり、財やサービスに希少性がなくなっていくのである。

すでに、コミュニケーション媒体、インターネット、スマホでは、現物の財やサービスに先んじて、財やサービスの希少性がなくなってきている。
インターネットサービス、スマホゲーム、電子書籍、動画、音楽など、一定額を払えば、好きなだけ使ったり、読んだり、見たり、聴いたりできるようになった。
つまり、一歩先に、コミュニケーション媒体の領域では、財やサービスの価格がゼロに近づいているのである。

再生可能エネルギーが普及すれば、電気料金が劇的に下がり、ほぼゼロの価格の電気を家庭、工場、輸送機関が使えることになる。
再生可能エネルギーで動くロボット、AI、3Dプリンターなどは、労務費をほぼゼロにする。
あと、私が提案している、減価償却費をゼロにする会計操作が加われば、固定費の多くを負担することなく、財やサービスが供給されることになる。

つまり、財やサービスの生産、供給に必要なコストがゼロに近づき、ゲーム、動画、音楽などのように無料に近くなる。
現物の財やサービスの希少性が無くなることが、これから起きることである。

希少性のない財やサービスは、どれだけ需要しても、インフレにはならない。
今までのインフレ理論は、市中に存在している財やサービスは有限であり、もし国がベーシックインカムのような形でヘリコプターマネーを支給すれば、財やサービスが不足して、財やサービスの価格が上がりインフレになる、というものだった。

確かに、昔はそれが正しかった。しかし、社会の生産力が飛躍的に発達した今日において、それは正しいのか?改めて考え直してみる時期に来ているのではないか?

もし、政府が、その商品に対して、国民に無料で買えるクーポン券を渡し、供給が不足することがない財やサービスがあれば、それは希少性のない財である。

今の日本では、貨幣の多くが、希少性のない財やサービスを巡って循環しているから、マネーサプライを増やしてもハイパーインフレのような事態にならないのではないか?

極端なアイデアとして、日本の貨幣を、希少性のない財やサービスのみを買える貨幣と、そうでない貨幣に分けて、両者を交換する貨幣市場を作り、政府は、希少性のない財やサービスのみを買える貨幣を、自由に発行できるとしたらどうだろうか?
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論拠その二

日本企業に、多額の内部留保があること。

ベーシックインカムに反対する論拠として、国債を発行して、国民に現金給付を、コロナで傷ついた事業者に補償を行うことは、後世の世代に国債返済のツケを回すことになる、という考え方がある。
しかし、私が主張する、旧円国債を財源としたベーシックインカムなら、国民にベーシックインカムを支給しても、国のバランスシートに返済不要の資本金が積み上がるだけである。

私は、国債を財源として全国民にベーシックインカムを払っても構わないと、考えている。
しかし、反対する人たちがいるので、日銀が貨幣創造を繰り返して、国や地方自治体の債務を消す方法を提案しているのである。

なぜ政府が144兆円の支出を行なっても財政破綻しないのか?またコアコアCPI(インフレ率)が2%に達しないのか?
それは、政府が国民に現金給付を行い、そのお金が国内消費支出に回り、企業の売上が増えれば、インフレになる。
しかし、同時に企業は需要回復をチャンスと見て、内部留保を取り崩し、工場や店舗を建設して、設備投資を行うようになる。
そのため、供給能力が高まり、供給超過の状態になる。

このように、日本企業が多額の内部留保を持っていることが、政府が財政支出を増やしてもインフレにならない論拠となる。

仮に、政府が財政支出を拒んでも、民間の市中金融機関等に限定的な貨幣創造の権限を与えれば、個人や企業は市中金融機関等からお金を借りて、風力、太陽光発電施設、蓄電施設、その他の固定資産を購入し、多額のマネーが市中に供給される。
これは、政府が財政支出を行なわなくても、民間で可能である。

しかも、市中金融機関等は、かなりリスクの高い投資にも融資が可能になる。
たとえ融資が焦げ付いても、その融資による長期貸付金を償却処理して、債権償却損を使って貨幣創造してしまえば、長期貸付金は回収できる。

金融機関等の融資の貸倒れリスクはゼロになる。

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論拠その三

現代の経済は、固定費経済である。

現代の経済は、固定費経済と呼ぶべきかもしれない。現代の工場は、いわゆる生産量の増減によって費用が発生するのではない。
現代の工場は、操業度、稼働率の増減があっても変化しない、固定費中心の、生産量がどうなっても一定の費用が発生してしまう経済なのである。

たとえば、最新の工場では人がほとんどいない。製品に占める材料費も、それほどではない。
しかし、工場は、たとえ製品を1個作っても、生産能力をフルに発揮しても一定のコスト(これを固定費と呼ぶ)がかかる、今はそのような経済である。

たとえば、ジェット機が羽田から札幌まで、誰も乗客がいなくても、満杯の乗客が乗っていても、基本的にコストは、ほとんど変わらない。
一回のフライトには、ほぼ同じコストがかかる。

このようなコストを固定費と呼ぶ。

仮に、航空機に空席があるのなら、国が理屈を付けて、ヘリコプターマネーで国民にお金をばらまいて、多くの人達の可処分所得が増えれば、航空機に乗る乗客が増えて、空席が埋まり、航空会社の収益が増加し、観光地に人が来て、観光客がお金を使ってくれるかもしれない。

鉄道会社の軌道、車両、建物、構築物などの減価償却費、取替費用、一定のダイヤで列車を走らせる電力費、人件費などは、乗客が一人でも百万人でも変わらない固定費である。
航空機と同様に、もし空席があるなら、どんな価格でも良いから、とにかく乗客を乗せてしまうことだ。
そのためには、空席がなくなるまで、国民にお金をベーシックインカムの形でばらまけば良いだろう。

そして、ヘリコプターマネーを国民に供給して、稼働率いっぱいまで、財やサービスの需要が増え、初めてインフレが問題となる。

固定費経済であり、操業度や稼働率に余裕がある限り、国民にベーシックインカムの形でお金を渡しても、インフレにはならない。

つまり、希少性のない財やサービスが大量に流通し、事業を営む上で、固定費が必然的に発生する経済では、操業度や稼働率を見ながら、ヘリコプターマネーを市中に供給する政策が、最も有効なのである。

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論拠その四

貨幣の大半が、架空的な富の間を循環している。

今の多くの財やサービスは、原価が極めて低いが、巨大な価格を持っている。そして貨幣は、その架空的な富の間で循環している。

たとえば、有名画伯と言われる画家の絵は、何千万円という価格を持つが、その原価のキャンパスや絵具の代金は極めてわずかである。
この価格マイナス原価の金額は、いわば架空的な富である。
人気キャラクターが印刷されたTシャツを考えてみよう。Tシャツは中国製で、原価は数百円である。しかし、価格は極めて大きい。そして、価格の多くは、キャラクターを考えた作者や出版社に帰属する。
しかも、しばしば、こうした財やサービスは希少性を持たない。たとえば、クリスチャンディオールのロゴの入ったTシャツは、原価はわずかだが、数万円で売れる。しかし、どれほど需要しても、価格が上がることも、Tシャツが不足することもない。

我々の社会は、こうした財やサービスが大量に流通しており、貨幣の多くは、その架空的な富の間を循環している。

だから、ベーシッインカムでマネーサプライを増やしても、インフレにはなりにくくなっている。

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財やサービスの希少性がなくなり、固定費が生産コストの大半を占める経済では、稼働率を見ながら、政府がヘリコプターマネーを市中に供給していく政策が、最も有効である。

今までのインフレ理論は、市場に存在する財やサービスには限りがあって、そこにヘリコプターマネーの形で政府が貨幣を供給したら、財やサービスの価格は上昇する。

こう考えられていた。

しかし、電気料金がほぼゼロに近づき、工場などの動力費が劇的に下がり、3Dプリンター、AI、ロボットなどを再生可能エネルギーで稼働させ、労務費がゼロになり、あと、減価償却費が消えてしまえば、財やサービスの希少性はなくなり、マネーサプライを増やしても、インフレにはならないと、私は見ている。

仮に、稼働率75%の工場があるとして、稼働率を100%にするために、政府が国民にベーシックインカムを支給し、需要を喚起しても、インフレにはならない。
仮に、稼働率が100%を超えても、企業が内部留保を取り崩し、生産能力を高めれば、稼働率は100%を切ることになる。

たとえば、ある航空路線で、乗員を除いて100人乗りの航空機を運行した場合、乗客が100人でもゼロ人でも、飛行コストはほとんど変わらない。
100人乗りの旅客機を運行した場合、50人の乗客がいれば、稼働率は50%であり、あと50人乗せる余裕がある。

そこで、政府が、ヘリコプターマネーでお金を配り、人が旅行して50人分の空席が埋まれば、100人の乗客が乗れる航空機を100%の稼働率で飛ばし、しかも、格安の料金で乗ることができる。
また、インフレにもならない。
それどころか、観光地に人が来て、乗客がお金を支出して、観光地も潤うということになる。

工場の稼働率が、75%でも100%でも、かかる固定費は変わらない。
仮に、75%の稼働率なら、政府がお金を国民に配り、工場がフル稼働にならなければインフレにはならない。

たとえば、スーパーのストアブランド品がなぜ安いのか?それは、企業の空きの25%の稼働率を使って、企業に製品を生産してもらうからだ。
ストアブランド品は固定費を負担しないので、格安で商品を供給することができる。

稼働率の余裕があるから、たとえ政府が国民に手厚い現金給付を行なっても、稼働率が100%になるまでインフレは起きない。

以上が、なぜ政府がヘリコプターマネーを社会に供給しても、ハイパーインフレや財政破綻にならないのか?私の考える論拠である。

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私はジェレミーリフキンが「限界費用ゼロ社会」でコモンズ(入会地、共有地)という用語を使った時、真っ先に、コミュニズム(共産主義)という言葉を連想した。

企業が技術革新を行い、製品のコストを引き下げる連鎖がこれからも続くだろう。その連鎖が続けば、生産物のコストは、ほぼゼロになるだろう。

そして、今、それが現実のものとなろうとしている。

風力、太陽光発電施設などで発電される再生可能エネルギーにより、電力のコストはほぼゼロに近づいている。その電力を使って、3Dプリンター、ロボット、AIなどを稼働させれば、労務費はほぼゼロになる。
私がブログで提案しているバランスシート分割によって、減価償却費がほぼゼロになれば、財やサービスの価格が限りなくゼロに近く。

なぜ中国が、第三次産業革命に多大な興味を持ち、五ヵ年計画で、巨額の第三次産業革命関連の予算を計上するのか?
それは、第三次産業革命で生れた様々なシステムが、やがて中国を共産主義社会に変えていくと読んでいるからである。

中国の農村部にデジタル送電網を国費で敷設する。そうすると、農村の電化が進み、人々は電気をお互いに融通しあって、生活、生産活動を行うようになる。

広大な中国大陸に、風力、太陽光発電施設、蓄電施設を国費で建設する。そうすると、電力費はほぼゼロになる。
この電気を、沿岸部の工業地帯に送れば、製品のコストが下がり、財やサービスの価格は低下し、安い人件費と合わせて、中国製品の国際競争力は高まる。
私が思うに、日本企業が、あらゆる分野で中国に成長機会を持っていかれるのは、中国の安い人件費と電力コストが原因ではないか?
日本が、原発、火力発電にしがみつく限り、中国には勝てないだろう。

中国農村部に供給される電気を使って、電気自動車、家電製品、電動トラクターなどを動かし、インターネットと繋がった3Dプリンターで様々な製品を作れば、農村部は都市部と同じインフラを手にすることができる。

そうすると、再生可能エネルギー由来の電気を中心としたコミュニティ(共同体)が、中国国内に網の目のように生れ、人々は従来の中央集権ではなく、水平的、分散的に繋がり、ほぼ自給自足の生活に入ることになる。

最終的に、国防と治安を維持する機能を残して、国家の機能は眠り込みを始め、国家の機能は最低限に絞られる。

人々は、コミュニティの中で、電気などを使う簡単な法律や規則を作り、生産物をシェアして、3Dプリンターで様々な製品を作り、電気自動車で移動する。

貨幣はなくならないだろうが、発電施設などは、住民の共有となる。こうしたコミュニティが中国各地に現れ、自律的な住民の自治によって運営される。

こういう社会を、コミュニズム・ソサイエティ(共産主義社会)と言うのではないだろうか?

この流れは、恐らく止まらないだろう。


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