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「ヘリコプターマネーでなぜ悪い」補論。第三次産業革命と政治。第三次産業革命は何をもたらすか?1%と99%の戦い。


目次

・第三次産業革命は何をもたらすか?1%と99%の戦い。

・第三次産業革命と政治。

第三次産業革命は何をもたらすか?1%と99%の戦い。

衆議院議員総選挙が近く行われると言われる。これから二回に分けて、第三次産業革命と政治について、私の考えを発信したいと思う。

アメリカのサンライズムーブメントにせよ、ティパーティ運動にせよ、日本で起きている政治変動にせよ、第三次産業革命の進展による経済的変化が、従来の、資本家対労働者の闘争という選挙の図式を大きく変えているのではないか?と気づいたからだ。

現在の日本社会の問題は、貧富の極端な格差である。第三次産業革命は、一方で巨額の富を保有する人々がいて(これを私は仮に『1%の人々』と呼びたい。実際は3%と言われる)、その一方では、生産の自動化、AIの普及などで失業したり、誰でもできる低賃金労働で生計を立てられない多くの人々がいる。(これを私は仮に『99%の人々』と呼びたい。もっとも、日本の99%の人々がすべて貧困にあるとは私は考えていない)

今日の巨大企業は、ほとんど独占に近い。なぜ独占に近い状態になるのか?それは経済的必然性から、そうなるのである。

例えば、ライドシェアサービスを考えると、あるエリアでは多数の配車マッチングアプリが登場する。
その中で、利用者やドライバーの登録数の一番多いアプリは、利用者やドライバーを見つけやすい。だから、利用者やドライバーはそのアプリを頻繁に使うようになる。
一方で、二番手、三番手の配車マッチングアプリは、一番手のアプリより利用者やドライバーを見つけにくくなるので、利用者やドライバーは利用しなくなる。
その結果として、そのエリアでは、一番手の配車マッチングアプリがライドシェアサービスを独占するようになる。
つまり、自然に独占が生まれるわけだ。

AIを利用する事業では、最後に一社が独占になっていくという特徴がある。

アマゾンのような、ネット通販企業も、そうである。
ネット通販企業は、購入者に買った財やサービスのレビューを求める。レビューが集まれば集まるほど、取り扱う財やサービスの長所、注意点、欠陥がわかるようになる。
ネット通販企業が大きくなれば大きくなるほど、利用者は財やサービスに関する情報をより多く得ることができる。
結果として、レビューの集まらないネット通販企業は、一番手の企業に差をつけられ、一番手の企業の独占状態が生まれる。

私は、先に書いたブログ、「我々はいかに勝つか?事業戦略」の中で、「他には真似できません」というような、独占的要素をいかに生み出すかが、現代企業の経営上のポイントだと述べた。

巨大企業だけでなく、多くの中小企業も、いかに「他には真似できません」という財やサービスを生み出すかに努力している。
他に真似できない技術、ノウハウを持っていれば、中小企業でも十分にやっていけると述べた。
そうした、何かの独占的要素を持った企業のオーナーさんは、1%の人々である。
一方、そうした独占的要素のない企業は、淘汰されるか、大資本に呑み込まれることになる。
そして、経営者は99%の人々になる。

それでは、99%の人々が、どうして貧しくなるか?考えてみよう。

今から四十年以上前、私がバローというスーパーに勤務していた頃、POSレジなどは存在しなかった。
機械式か電気式のレジだった。レジの労働は熟練が必要だった。スーパーでは毎日特売品が売り出され、レジ係は、その特売品の価格を全部暗記しなければならなかった。
また、どの商品が、どの部門に属しているか?を判別して、レジに金額を入力する際には部門番号を打ち込まねばならなかった。例えば精肉なら1、お菓子なら5という具合である。

しかし、POSレジが登場。スーパーの買い物精算は、商品のバーコードをバーコードスキャナーで読み込めば済むようになった。
つまり、レジの労働に熟練が不要になったのである。そして、誰でもできる仕事だから労賃も安い。
今では、スーパーによっては、客自身が商品のバーコードを読み取って精算するスーパーもある。
そして、POSシステムによって単品管理も可能になった。

大手ファミリーレストランでは、顧客が店に入り座席に座ると、座席の端末で料理を注文する。
料理ができると、運搬ロボットがテーブルまで料理を運んでくれる。精算は座席の端末でスマホ決済を行う。つまり、ウエイターやウエイトレスの仕事がなくなる。

工場でも、かって熟練工が行っていた労働を分析して、ロボットで可能な作業や、単純な労働に置き換えている。誰でもできる仕事だから、賃金も安い。

3Dプリンターは人間の労働なしに、製品を作ってくれる。警備ロボットは、人間に替わって、警備プログラムにしたがって警備を行う。

経理の世界でも、今は、担当者が領収書を受け取ると、スマホで領収書を撮影して本社に送る。本社ではAIが取引を認識して、仕訳を切ってくれる。そして上司の承認を受け、データがサーバーに入る。

また、生成AIは、企業の中間知識労働者の仕事を奪っている。
ネット通販企業が普及すると、総合スーパー、百貨店、ディスカウントストア、ショッピングセンターを廃業に追い込み、その結果、販売の仕事がなくなる。

配車マッチングアプリで、一般のドライバーが有償で人を運ぶようになれば、タクシーの運転手の給与が減る。
自動運転が普及すれば、タクシー、バス、トラック、電車などの運転労働がなくなる。

このように、AIの導入、生産の自動化、ロボット化などによって、人間の行う労働がどんどんなくなっていく。そして、残った労働も、誰でもできる労働だから、労賃も安い。そして、99%の人々は、非正規労働など待遇の良くない雇用を飲まざるを得ない。

そのため、受け取る給与や賃金がどんどん下がっている。もちろん、今はまだ、99%の人々のすべてが、そのような状況になっているわけではないが、事態を放置すれば、いずれ1%の富裕層と99%の人々に分かれていくだろう。

こうして、AIの導入、生産の自動化、ロボットの導入、3Dプリンターの導入などによって労務費が下がると、1%の富裕層はますます富み、99%の人々は仕事がなくなるか、誰でもできる仕事に甘んずるしかなく、ますます貧しくなる。

AIの導入、生産の自動化、ロボットの導入などによって、多くの人々が労働なしに財やサービスを受け取ることができるのは、素晴らしいことである。人間が労働から解放されることを意味するからだ。

しかし、それは、99%の人々にとっては、仕事がなくなることを意味する。
そして、この流れは、もう止まらない。結果として、1%の富裕層はますます富み、99%の人々は仕事がなくなり、誰でもできる仕事に甘んずるしかなく、ますます貧しくなる。

社会には供給力がある。しかし、99%の人々が受け取る給与や賃金が減少すれば、供給される財やサービスの需要がなく、結果としてデフレ不況になる。

以上が、私の考える、今の日本の経済状況である。この、1%の富裕層と99%の人々の対立が、政治の世界にどのように反映するのか?
これが私の問題意識である。

経済が不況にある時、経済学の教科書では、減税、財政支出の拡大、利息の引き下げを行うとある。
経済が加熱してインフレになったら、増税、財政支出の絞り込み、利息の引き上げを行うとある。
今、政府は、三十年間不況にあるにもかかわらず、増税、財政支出の絞り込み、利息の引き上げを行っている。

今日の日本経済の課題は、第三次産業革命によって困窮している多くの人々に、どのような財政支援を行うか?である。
その方策として、国民への一律の現金給付、減税、社会保険料の減免などの国民負担軽減策によって、99%の人々に使えるお金を増やすことが必要となってくる。そうして社会に回るお金を増やすことが大切である。
その他、雇用保障プログラム、賃金補助があるかもしれない。

マルクス、レーニンは、その著作で、資本主義や資本主義の帝国主義段階の経済法則を明らかにした。
しかし、マルクスやレーニンは経済法則を応用しようと考えたわけではない。貨幣を廃止して、計画経済によって人とモノを動かすことが、マルクス、レーニンの究極の目標だった。

今の世界を見ると、豊かな国には物資があり余り、最貧国では人々が飢えに苦しんでいる。
貨幣経済を廃止して、世界中のすべての人々が、計画経済で、飢えることなく衣食住の財やサービスを消費することができる。その可能性は現に存在している。
私は、これを「レーニンの最適配分」と呼んだ。
詳しくは、前に書いたブログ「ヘリコプターマネーでなぜ悪い」の第10回で述べている。

つまり、貨幣経済が世界の財やサービスの分配を歪めているのである。

貨幣経済ではなく、人とモノを中心として、人とモノが最適配分されているかどうかを観察する。

これが、マルクス経済学のレンズで、社会の財やサービスの分配の公平性を見ることである。

例えば、子供食堂を考えると、日本では子供に腹いっぱい食べさせる食料品は、現に日本に存在している。
しかし、貨幣経済が、一部の貧困層の子供に腹いっぱい食べさせないようにしている。ここにモノの歪みが生じている。
これが、マルクス経済学のレンズを通した財やサービスの歪みの例である。
こんな例は捨てるほどある。その解決方法は?

社会に財やサービスが潤沢にあり、国民の需要を満たす衣食住に必要な財やサービスが存在する場合、たとえ政府がどのような支出を行っても、その支出は可能である。
唯一の制限は、財やサービスが不足してインフレになる場合である。

そして、99%の人々が、政府の財政支出によって使えるお金が増えれば、また国民負担軽減策を取れば、99%の人々の可処分所得が増え、いろいろな財やサービスを買ったり利用することができるようになる。
社会にお金が回り、企業の売上が増え、1%の富裕層も利益を受けることになる。

たとえば、政府が国債を発行して調達したお金で、国民一律で現金給付を行う。
これで、99%の人々にお金が配られ可処分所得が増えれば、そのお金で財やサービスが買えるようになる。
需要が増加して、供給能力を追い越すまで、国が財政支出を行っても、インフレにはならない。
そして、需要が供給を上回れば、企業は内部留保を取り崩し、供給能力を増加させるようになる。
そして、供給能力が高まれば、さらなる現金給付が可能になる。
このような需要と供給のスパイラルで、国は豊かになっていく。

変動相場制を取り、自国通貨建ての国債を発行できる国では、国債は国民の借金ではなく、利付き、期限付きの貨幣である。国債残高は貨幣発行の記録にすぎない。
国債の償還期限が来たら、借り換えをするか、日銀券を発行して国債を買えば、それまでである。

このあたりについては、ステファニー・ケルトンの「財政赤字の神話」を参照してもらいたい。
また、私のブログ「ヘリコプターマネーでなぜ悪い」の中で、国債を政府資本金に振り替える仕訳を呈示しているので、興味のある方はブログを参照してください。

今の日本には供給能力があるにもかかわらず、99%の人々に、供給される財やサービスを買うお金がない。その結果、デフレ不況になっている。

この解決方法は、政府が大胆な財政支出、減税などの国民負担軽減策を行い、99%の人々が使えるお金を増やすことである。そうして、99%の人々が財やサービスをより多く買い、市中にお金がより多く回れば、99%の人々はもちろん、1%の富裕層も潤うことになる。

コロナ禍の時期、海外では、減税や国民への一律の現金給付を行った。その結果、海外では景気が良くなり、アメリカでは景気の過熱を抑えるため、政策金利の引き上げを行った。
コロナ禍は人類にとって悲惨な出来事だったが、不況時に政府が国民にお金を配れば、景気が良くなることが証明されたのは、不幸中の幸いだった。

日本でも、99%の人たちの可処分所得を増やすと、経済が好転する証拠がある。

兵庫県の明石市では、子育て層の可処分所得を増やすために、子育て家庭に様々な補助を行った。

駅前のビルに、無料の子供の遊び場を作り、図書館を建て絵本を買い揃えた。十八歳以下の医療費を無料化。第二子からの保育料無償化。学校の給食費無料化。おむつの無料化。などを行った。
これによって、子育て層がお金を使えるようになった。さらには、国から市に送られたお金を、業界団体に渡すのではなく、明石市民一人あたり一万円~三千円の、市内の店などで使えるクーポン券にして市民に渡した。
その結果、市民の使えるお金が増えて、明石市内でお金が回るようになった。

たとえば、無料の遊び場で親子が遊ぶと、お腹が空く。そうすると近くのファミリーレストランで食事を食べる。子供の服を買うなど、地元商店にお金が落ちる。
クーポン券を使うことで、市中の商店やタクシー業者などにお金が落ちる。

こうして、駅前が活性化して、駅前に次々と商店が進出して空き店舗がなくなった。

子供を産み育てたい家族が、近隣自治体から明石市に移住する。市内の家やマンションの建設工事が増えて、建設業者が潤う。
人口が増えるので、市民税収が増え、お年寄りにも、コミュニティバスの無料化などの高齢者対策が行なわれるようになった。
年間数百億円を、人口約三十万人の明石市の市民が使えるようにしただけで、これだけの効果があるのだ。

もし国が、本気になって、日本の99%の人々に消費税の廃止、手厚い現金給付、社会保険料の減免などの国民負担軽減策によって、市中にお金が回るようになったら、日本に何が起きるだろうか?

最後に、私の疑問だが、第三次産業革命下にあった先進各国で、この三十年間賃金が上がっているのに、なぜ日本だけ賃金が上がらなかったのか?

おそらく、最低賃金の引き上げ、大胆な財政支出を行なわなかったため、市中にお金が回らず、経済成長しなかったのが最大の理由だと思われる。

次に、この持たざる99%の人々をどう救うか?という問題を述べたい。

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