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ヘリコプターマネーでなぜ悪い。7.旧円国債を利用したベーシックインカム。

次に、ベーシックインカムを旧円国債の日銀引き受けによって、国民に支払うことができないか?検討したい。

コロナ対策として、世界各国の政府は、コロナで苦しむ国民やコロナで事業が傾いた事業者などに、巨額の国債を財源として、手厚い現金給付や補償を行なった。
そして、景気はコロナ前よりも良くなった。逆に、過熱した経済を冷やすために、各国中央銀行は、政策金利を上げ、景気にブレーキをかけた。

一方、日本では、国債は国民の借金だから、税収で返さねばならない。
巨額の財政赤字で国債を増発したら、ただでさえ巨額の国債で苦しんでいるのに、国債発行で現金給付なんて、とんでもない。
国民に配る財源とした国債は、将来の子孫に返済のツケを回すもので、とんでもない。

このような論拠で、政府はコロナ禍で苦しむ国民や事業者に、ほとんど何もしなかった。

一方、欧米、中国などでは、財政赤字覚悟で、手厚い現金給付や補償を行なった。
政府の赤字は、民間の黒字であり、もし、政府が国債を償還したら、市中を循環するマネーが減少してしまうので、不況はさらに酷くなる。そう識者は主張したが、政府は抜本的な政策を取らなかった。

私が、仕訳で明らかにしたように、国債は、いざとなれば、無効化仕訳で政府の資本金に置き換え可能である。
国債と違って、資本金は返済する必要がないので、問題は解決する。

海外では、巨額の財政赤字を容認して、巨額の国債を発行し、政府支出を増加させ、経済を拡大させている。
これに対して日本では、国債は国民の借金であり、国債を財源として政府支出を増やせば、いずれ国債を税収で取り戻さねばならない。
だから、欧米や中国のような真似はできない。ということになった。

そこで、私は、ベーシックインカムを旧円国債の日銀引き受けで払うことを提案したい。
国債の残高を増加させることなく、毎月国民一人当たり10万円を払うことが可能であることを示したい。

れいわ新選組、日本経済復活の会は、毎月国民一人当たり10万円を支払うベーシックインカムを日本に導入することを提案している。

これによって、日本のGDPの約6割を占める民間消費支出が増加する。企業の売上が増え、企業業績は回復し、需要が旺盛になる。雇用も増える。
それを見た企業は、内部留保を取り崩し、設備投資を行う。
そうすると、生産財企業の売上が増え、雇用も生れる。そしてGDPの設備投資支出が増えるので、日本のGDPも増加する。

このような好循環が生れ、日本経済は復活を遂げる。税収も、今より増えるかもしれない。

心配するのは、インフレであるが、上記団体のシミュレーションでは、毎月国民一人当たり10万円のベーシックインカムを配っても、生鮮食品、エネルギーの物価上昇を除いたコアコアCPI(インフレ率)は2%を越えないという結果が出ている。

詳しくは、「毎年120万円を配れば、日本が幸せになる」(扶桑社刊)を参照されたい。

ーーーー

それでは、旧円国債を利用したベーシックインカムを示したい。なお今回は、政府固定資産等が全て消去されたとして、仕訳を示したい。

ベーシックインカムを、毎月国民一人当たり10万円支払うためには、

10万円☓12ヵ月☓1億2000万人=144兆円

が必要となる。
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政府は、144兆円の旧円国債を発行し、日銀に引き受けてもらう。この項目は全て旧円で表示される。

政府は144兆旧円の国債を発行し、日銀に引き受けて貰った。
政府
(政府預金)144兆旧円/(国債)144兆旧円
日銀の引き受け仕訳。
(国債)144兆旧円/(政府預金)144兆旧円

仕訳日に国民全員に、政府小切手が郵送される。

政府は、144兆円を日銀に送金する。
政府
(現金預金)144兆円/(政府預金)144兆旧円

日銀は、日銀当座預金口座を持つ市中金融機関の日銀当座預金口座に、144兆円を振り込む。
日銀
(日銀当座預金)144兆円/(現金預金)144兆円

市中金融機関に、日銀当座預金勘定を通じて、現金預金144兆円が振り込まれる。
市中金融機関
(現金預金)144兆円/(日銀当座預金)144兆円

国民は、政府小切手によってベーシックインカムの支払いを受ける。

国民全員
(現金預金)144兆円/(日銀当座預金)144兆円
市中金融機関
(政府小切手)144兆円/(現金預金)144兆円

もちろん、実際には、政府小切手が国民に郵送されるのではなく、各国民の金融機関口座に、日銀からキーストロークマネーが振り込まれることになる。

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次に無効化仕訳である。今回は、政府固定資産等は、全て消去されたと、仮定する。

今回の日銀国債引き受け仕訳を、再掲する。
政府
(政府預金)144兆旧円/(国債)144兆旧円
日銀
(国債)144兆旧円/(政府預金)144兆旧円

まず、政府借方の政府預金144兆旧円は、ベーシックインカム支払いで消えた。

次に、日銀借方の、資産である国債は、貨幣創造で現金預金となる。
日銀
(現金預金)144兆円/(国債)144兆旧円

政府貸方の国債は、政府固定資産等が全て消去されたので、資本金に繰り入れる。
政府
(国債)144兆旧円/(資本金、固定資産償却繰延)144兆円

日銀貸方の政府預金は、貨幣創造された現金預金とともに、政府に振替えられる。これで、政府預金144兆旧円は消去される。
日銀
(政府預金)144兆旧円/(振替勘定)144兆円

日銀から、144兆円の現金預金を振替え、政府預金に入金する。
日銀
(振替勘定)144兆円/(現金預金)144兆円

政府
(政府預金)144兆円/(振替勘定)144兆円

政府は、振替勘定を資本金勘定に繰り入れる。
政府
(振替勘定)144兆円/(資本金、固定資産償却繰延)144兆円

この結果、政府預金144兆円が残高として残る。
これが、翌年度のベーシックインカムの原資となる。
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翌年度の仕訳
翌年度は、日銀の旧円国債の引き受けを行なわない。
政府は、政府預金残高の144兆円を日銀に送金し、日銀は日銀当座預金を経由して、市中金融機関に入金する。
入金日付で、国民全員に政府小切手を郵送する。
政府
(現金預金)144兆円/(政府預金)144兆円
日銀
(日銀当座預金)144兆円/(現金預金)144兆円
市中金融機関
(現金預金)144兆円/(日銀当座預金)144兆円

国民全員は、市中金融機関に政府小切手を呈示し、ベーシックインカムを受け取る。
国民全員
(現金預金)144兆円/(政府小切手)144兆円
市中金融機関
(政府小切手)144兆円/(現金預金)144兆円

こうして、二年間で288兆円のベーシックインカムが、国の財政支出で国民に配られれば、日本のGDPの6割を占める民間消費支出が増加して、企業の売上が増える。
企業は需要が増えたとして、設備投資が活発になり、内部留保を取り崩し、設備投資支出を行うようになる。日本は再び成長軌道に乗る好循環が生れる。

しかも、国債の残高は増えるわけではない。返済不要の資本金が積み上がるだけである。

MMT(現代貨幣理論)では、ベーシックインカムよりも雇用保障プログラムを重視している。

ベーシックインカムの財源があるなら、ベーシックインカムの財源で失業者を雇い、太陽光パネル、風車、蓄電池などの資材を買い入れ、風力、太陽光発電施設、蓄電施設等の建設に失業者を従事させるのが良いのではないか?
日本では、ただ国民にお金を配るよりも、国が高給で失業者を雇う方が良いような気がする。
高給で失業者を雇えば、給与の低い職場で働いているワーカーが、国に転職するようになる。
その結果、給与の低い職場の事業者は、人を雇うために、高い給与額を呈示せざるを得なくなる。

これは、賃金の底上げに繋がる。

また、国が風力、太陽光発電施設、蓄電施設の初期投資を負担するので、燃料費ゼロの安価な電気が、一般家庭、工場、輸送機関等に供給され、この経済効果は極めて大きい。
これが、MMTの雇用保障プログラムの概要である。

これについては、様々な考え方があることを、私も承知している。

ベーシックインカムによって、ベーシックインカムを本当に必要とする人たちの生活を安定させ、生活に対する不安を無くし、本当にやりたい仕事を見つける。
それが先であって、雇用保障プログラムよりも先に、貧しい人たちの生活基盤を安定させるべきだ。
この考えも、私は理解できる。
MMTとベーシックインカムの関係については、先日出版された、以下の本が参考になるだろう。

スコット・サンテンス、「ベーシックインカム☓MMTでお金を配ろう」(那須里山舎刊)

また、雇用保障プログラムについて、詳しくは、ステファニー・ケルトンの「財政赤字の神話」(早川書房刊)を参照されたい。

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