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事業戦略、第六章、第三次産業革命の衝撃。601.第三次産業革命とは何か?

経済学者のジェレミー・リフキンは、現在、世界で起きている急激な社会変革を、第三次産業革命と呼んでいる。
産業革命というと、18世紀にイギリスで起きた、石炭をエネルギー源とした産業革命が思い起こされるが、リフキンによると、現在、世界は第二次産業革命から、第三次産業革命への移行が進んでいるとしている。
詳しくは、リフキンの著作、「グローバル・グリーン・ニューディール」、「限界費用ゼロ社会」、「第三次産業革命」、「日本は限界費用ゼロ社会に備えよ」の四冊を当たってもらいたい。

ジェレミー・リフキンは、産業革命を区分する要因として、コミュニケーション媒体、エネルギー源、輸送/ロジスティクスの三つを挙げている。

第一次産業革命は、18世紀のイギリスで始まった。エネルギー源は石炭である。
石炭を燃やして水蒸気を発生させ、その水蒸気で生れた動力で織機を回し、大量の織物を安価に生産した。
また、蒸気機関車により、鉄道で、大量の物資と旅客が輸送されるようになった。これが輸送/ロジスティクスである。
また、蒸気動力による活版印刷により、新聞、本、印刷物が大量生産され、モールス信号による電信網が発達した。これがコミュニケーション媒体である。

第二次産業革命は、20世紀のアメリカなどで始まった。
主要なエネルギー源は、火力、原子力、水力発電による電気と石油である。
内燃機関が発明され、フォードは自動車を一貫生産の工場で、大量かつ安価に生産した。車は一家に一台所有され、ガソリンを動力源とした。
高速道路などに沿って工場やショッピングセンターが建設され、トラック、電車、電気機関車に牽引された貨物列車などが、輸送/ロジスティクスを形成した。
テレビ、ラジオ、電話などがコミュニケーション媒体である。

日本も、戦後、昭和40年〜50年代にかけて、安価な車が普及し、鉄道が電化され、輸送/ロジスティクスを形成した。
エネルギー源は石油と電気である。
道路沿いや臨海部を埋め立てて工場が建設された。
車は一家に一台から二台所有され、人々は、道路沿いの広い駐車場を持ったショッピングセンターで買い物をするようになった。

しかし、2010年頃から欧米、中国などで始まった第三次産業革命は、第二次産業革命を基盤とした日本の産業を窮地に追い込んだ。
そして、日本では、第二次産業革命のインフラを是が非でも守ろうとする人々と、第三次産業革命を日本でも強力に推進して、新しいビジネスチャンスを捉えようとする人々が、激しい闘争を行なっている。
たとえば、火力、原子力発電を残そうとする人々と、再生可能エネルギー100%を目指す人々との闘争。
緊縮財政を取ろうとする人々と、積極財政を日本でも本格的に採ろうとする人々との闘争。
ガソリン車を残そうとする人々と、電気自動車を普及しようとする人々との闘争など、日本の各地、各層で闘争の最中である。

第三次産業革命を特徴づけるコミュニケーション媒体は、インターネットやスマホ。
エネルギー源は、風力、太陽光発電、水力発電など、燃料費ゼロで発電できる再生可能エネルギー。
輸送/ロジスティクスとしては、再生可能エネルギーで動く電気自動車、電車、電気機関車に牽引される貨物列車、再生可能エネルギー由来の電気で水を電気分解して生成した水素で動く、トラック、バス、燃料電池電車などである。

たとえば、風力、太陽光発電は、固定価格買取制度で初期投資を回収してしまえば、燃料費ゼロで発電できる。
すなわち、電気の価格がほぼゼロに近づく。
そうすると、従来の火力、原子力発電は、燃料を燃やさねば発電できないので、再生可能エネルギーに太刀打ちできない。
この費用ほぼゼロの電力こそ第三次産業革命のエネルギー源である。

次に、第三次産業革命を特徴づけるのは、インターネット、スマホという新たなコミュニケーション媒体である。
インターネットやスマホによって何十億の人々が繋がり、個々に連絡が取れるようになった。
とりわけ大きいのは、AIを利用したネット通販サイトのような紹介サイトである。

映画、音楽、書籍、マンガ、アニメ、ゲームなどの種々のアプリは、毎月定額を払えば、ほぼ無料で好きなだけ、見たり、聴いたり、使ったりできるようになった。
ユーチューブなどの動画配信サイトによって、自分の創った映像や音楽を多数の人々に配信することが可能になった。
またブログで自分の考えを述べたり、映像を投稿することが可能になった。
そして、電子書籍は在庫の発生なしに本の出版が可能になった。
つまり、第三次産業革命は、消費者が生産者になるプロシューマー(プロデューサー+コンシューマー)の時代であるとリフキンは述べている。

第三次産業革命の輸送/ロジスティクスは、風力、太陽光発電などによる電気で動く電気自動車、電車、電気機関車に牽引される貨物列車、再生可能エネルギー由来の電気で水を電気分解し生成する水素を動力源とする、バス、トラック、燃料電池電車などである。
また、AIの発展は、これらの自動運転を可能にした。

グリーン・ニューディール政策とは、国が国債を発行し、国債を財源として失業者を雇い、太陽光パネル、風車などの発電施設、蓄電施設などの資材を購入し、国が再生可能エネルギーの供給施設、蓄電施設などを建設。
これで生れた電気を、一般家庭、工場、輸送機関などに送り、電力コストを引き下げることを目的としていると、私は解釈している。

もし国などが、風力、太陽光発電施設、蓄電施設、揚水式発電施設などの初期投資を負担し、ほぼ無料の電気を鉄道会社などに送れば、鉄道運賃の大幅な値下げが可能になる。
また、工場の空き地などに国費などで風車や太陽光パネルを設置して得た電気で、工場の電力を賄えば、ラインの動力、工具類、照明、産業ロボット、AI、電炉などの動力費が大幅に削減できる。

さらに、後述の3Dプリンターを再生可能エネルギーで動かせば、原材料費、3Dプリンターの減価償却費を除いて、ほとんどゼロに近い価格で製品が生産できる。

これから第三次産業革命の経済的な流れに乗って事業戦略を立案する人は、この燃料費ゼロで発電される、風力、太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーを効果的に利用する方法を考えねばならない。

そこには、様々なビジネスチャンスが転がっている。


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