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iPhone15ではUSB Type-C端子導入の噂。本当に役に立つのか⁉(結論:微妙)

 新iPhoneの発表が近づいてきた。最新シリーズは「iPhone15」となる。
今回は実に大きな変化が期待されている。iPhone最大の弱点であったLightning端子がついに廃止され、USB Type-C端子になるというのである。Androidが5年も前から出来ているものを今さら新機能のように言うつもりだろうか。発表が楽しみではある。ともあれ、この変化には、今までLightning端子に悩まされてきた多くのiPhoneユーザーが歓喜の声を上げている。しかし、本当に役に立つのだろうか。そこまでユーザー体験が変わるのだろうか。ちょっと考えてみたい。

◆端子変更のメリット
 USB Type-C端子がLightning端子より優れていることは、今さら言うまでもない。高価で人気も高いiPhoneに低機能なLightning端子が搭載されていることは、きれいで美味しいリンゴに齧りかけの歯形が付いているようなものだった。
 それがUSB Type-C端子に変更されることによるメリットは何か。言うまでもないことだが、USB Type-C端子というのは端子の形状の規格であって、中身の性能とは関係がない。極端な話、USB1.0の性能しかないUSB Type-C端子もあり得るわけだ(実際には最低でもUSB2.0ではあるが)。しかし噂によると、iPhone15に搭載されるUSB Type-C端子はThunderbolt4というとんでもない性能のものらしい。であるならば、期待できる機能は、高速充電と周辺機器との接続ということになる。一つずつ見ていこう。

◆高速充電に意味はあるか
 USB Type-C端子(Thunderbolt4)による高速充電は注目に値する。しかしそれには当然対応する充電器とケーブルが必要になる。iPhone15に同梱されるUSB Type-CケーブルはUSB2.0らしいので、これは使えない。では現在iPhoneユーザーで数十Wの出力に対応した「有線」充電器を持っている人がどれだけいるのかということになる。おそらくLightning端子を搭載したiPhoneユーザーの多くは、無線充電器(MagSafe等)を利用していることだろう。かく言う私もiPhone SE2を使い続けているわけだが、有線ケーブルでの充電など、久しくやったことがない。メリットがあるのはiPadを持っている人だろうが、その人たちもiPhone用にはMagSafe無線充電器を既に持っていることだろう。
 「端子がUSB Type-Cになることで友人と充電器の貸し借りが容易になる」と言われているが、本当にそうだろうか。むしろ旧iPhoneを使っている人との互換性が無くなることのデメリットの方が多くはないか。「市場がUSB Type-C端子に統一されて分かりやすくなる」という意見もある。しかしiPhoneシリーズは高価だ。iPhone15がUSB Type-C端子搭載になったからと言って、しばらくはLightning端子搭載の旧iPhoneが使われ続けるだろうし、市場にもLightning端子ケーブルが残るだろう。
 結論を言うと、iPhone15にUSB Type-C端子が搭載されたからと言って、充電方法という観点からはメリットは非常に薄い。これまでiPhoneを使い続けてきたユーザーにはなおさらである。

◆周辺機器との接続に意味はあるか
 USB Type-C端子は、多くの周辺機器との接続を可能にする。これは確かなメリットである。ただそれは物理的な接続が可能になるだけであって、iOSがそれを認識して利用できるかどうかとは、全く別の問題である。具体的に言えば、PCと同じような感覚でプリンタやスキャナをiPhoneに接続してみたところで、iOS側で認識はしない。ただ「つなげる」だけである。
 メリットがあるならば、外部ストレージだろう。Lightning端子を搭載していた旧iPhoneでは、iPhone側でファイルを作成・ダウンロードしても、それを取り出すことが非常に困難だった(Windowsユーザーには、だが)。また、多くの作業をiPhoneだけで完結させることは難しく、どうしてもPCが必要になるシーンが多かった。大容量の外部ストレージを接続することで、PCとのデータの受け渡しが非常に容易になるだろう。
 だが、これすらも、現在SAMBAでストレージを無線接続している私にはメリットが薄い。いくらUSB Type-C端子があるからと言って、いちいち有線でケーブルをつないでデータ転送をする気にはならない。またPCとiPhoneをUSBケーブルでつないでも、PC側からiPhoneの内部ストレージにアクセスできるわけではない。Androidが10年前からできることが、iPhoneにはまだできないのだ。とは言え、「有線でケーブルをつなぐぐらいならSAMBAで無線接続すればいい」とは言わない。技術的な知識も必要になるし、「パンがなければブリオッシュを食べればいい」と言うのに等しいからだ。しかしメリットは大きい。勉強して試す価値はあるだろう。

 少し話はそれるが、この外部ストレージに接続できるというメリットによって、勘違いして低容量のiPhoineを買ってしまうユーザーが出ることが懸念される。iPad界隈で有名なインフルエンサー(YouTuber)が、iPad Air4が発売された時に、端子がLightningからUSB Type-Cになった喜びからか最低容量(64GB )の機種を買って、「もうこれでいいじゃない」という動画をアップしたことがある。これを見たときに「ああ、この人は低容量の苦労を知らないんだな」と思ったものだ。iOSには、アプリを外部ストレージに置けないという最大のデメリットが存在するのである(くどいようだが、Androidは10年前からできる)。「アプリのインストールでも64GBもあれば十分じゃないか」と思われるだろう。実際、先述のインフルエンサーもそう考えたようだ。
 iPhoneで何かクリエイティブな活動をするというのは難しいが、ではここで、例えば動画撮影・編集という比較的ありがちな作業を考えてみたい。iPhoneで1080P・60fpsの動画を30分撮影したとしよう。容量はだいたい3GBぐらいになる。これを動画編集アプリで編集して書き出すという作業をするとき、iPhone内には約9GBの容量が必要になるのである。これは、iOSがアプリごとにワークエリアを管理していることに起因する。まずカメラアプリの管理するエリアから、動画編集アプリの管理するエリアに撮影した動画データが「コピー」される。これで6GB。そして編集後、書き出す際にさらに3GB必要になるというわけなのだ。先述のインフルエンサーは、後に別の動画内で「やっぱり無理でした」と訂正することになった。

 つまりまとめて言うと、iPhoneに外部ストレージが接続できるようになったところで、何か特別にクリエイティブな作業(それもiPhoneでなければできない作業)が快適にできるようになるかどうかとは関係ないし、PCとストレージを共有するつもりなら、SAMBA接続(またはWindowsの「共有フォルダ」)の方がはるかに便利である。

◆結論
 iPhoneのUSB Type-C端子搭載は確かにグッドニュースである。しかし、それによるメリットは薄い、と言わざるを得ない。昨今のスマホ市場を見るに、性能的にもおそらくそれほど大きな飛躍は期待できないだろう。であるならば、わざわざ買い替えてまで、Appleの周回遅れの「初物」に飛びつく必要はないのではないか。iPadがどこまで行ってもPCになれないように、iPhoneはiPadにはなれない。スマホに必要なのは拡張性ではなく、大画面・高性能・高スタミナである。世界市場では今一売れていないようで大変意外なのだが、iPhone14 PlusがベストiPhoneであるという私の意見は揺るがない。むしろ、iPhone15が発売されることで、14シリーズが安くなるのであれば、そちらの方がお買い得かもしれない。

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