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Xジェンダーが胸オペをするに至った理由

 閲覧ありがとうございます。初投稿ですので至らぬ点があると思いますがご了承ください。

 このnoteでは、タイトルにある通り、セクシャルマイノリティの一つであるXジェンダーの人、とりわけFtXの人の胸オペ(乳房切除手術)について、自らの体験を踏まえながらお話させていただきます。

 ※あくまで、筆者はひとりの当事者にすぎないことを理解しお読みください。専門家や医者、カウンセラーの方などが発信している情報、根拠に基づいた情報を適切に取り入れるようにお願いいたします。

《追記》

  この記事ではXジェンダーという用語を使っていますが、医学的には「ノンバイナリー」という名称が正しいようです。投稿時には知らずにいたので追記させていただきます。

1.Xジェンダーとは何か

 検索でこのページを見つけてくれた方には、説明不要かもしれませんが、本題に入る前に、一応「Xジェンダー」という言葉の意味を示します。

Xジェンダー・・・心の性別が「男性でも女性でもない」と認識している人のこと。

 非常に大まかですが、ざっくりと上記の捉え方で構いません。

 Xジェンダーにもいろいろタイプがあるのですが、それらは他のウェブサイト様が詳しく解説してくださっているので、ご参照ください。(いつかは私のnoteでもまとめられたらいいなと思っています)

 Xジェンダーは心の性別の分類のひとつです。そのため、身体の性別・生まれた時の性別とは関係ないものです。

 ですが、セクシャルマイノリティ界隈では、女性として生まれたXジェンダーを「FtX」、男性として生まれたXジェンダーを「MtX」と表すことも多いです。

FtX・・・「Female to X」 女性からXジェンダー

MtX・・・「Male to X」 男性からXジェンダー

 筆者は、女性の身体で生まれ、心の性別が男性でも女性でもないXジェンダーと自認しているので、先ほどの表し方にのっとれば「FtX」になります。

2.性別違和感による身体治療とXジェンダー

 「男性の身体だけど心は女性の人」や「女性の身体だけど心は男性の人」は、自分の心の性別に身体が近づくように、身体への治療を受けることがあります。

 例) 心は男性なのに、女性として生まれてしまった。女性の身体に違和感がある。男性の身体に少しでも近づけたい。

男性ホルモンを打つ。膨らんでいる乳房を取る。子宮を取る。などなど……

 性転換手術で、身体の性別を(女から男へ/男から女へ)変えるというのはもしかしたら、Xジェンダーよりも理解しやすいかもしれません。芸能人でも、手術を受けて、戸籍も変えて男性から女性になったという方もいらっしゃいます。

 では、Xジェンダーの場合はどうでしょうか? 

 一応Xジェンダーも、

 身体の性別・・・女/男

 心の性別 ・・・Xジェンダー

 であり、「身体と心の性別が一致していない」ということになります。

 (非常に珍しい例ではありますが、男性でも女性でもない身体で生まれてくる人もごく稀にいます。現代では性分化疾患として、病気の一種として扱われています。しかし、そのようなケースは大変少数ですので、ここでは男と女のどちらかの身体をもって生まれてきたとします)

 Xジェンダーの人の中には、男性→女性の人や女性→男性の人と同じように、心の性別と身体の性別の違いに、違和感や嫌悪感を抱いて手術を望む人もいます。

 もちろん、望まない人もいます。FtXの人は、心が完全に男性な人よりも女体への違和感が少ない場合も多々あり、今の身体でよいという人もたくさんいます。

3.FtXへの具体的な治療とは?

 女性の身体を男性の身体に近づけたい人に施す治療として、

・ホルモン治療

 注射や薬で男性ホルモンを摂取し、男性的な身体に近づける。

・乳房切除手術

 通称 胸オペ。乳腺を手術で取り除き、女性特有の乳房のふくらみを無くす。

・子宮や卵巣の摘出手術

 手術で子宮や卵巣を摘出する。

・疑陰茎形成手術

 陰茎を作って股間に形成する。形だけなので生殖機能はない。

 あたりが挙げられます。他にもあるかもしれませんが、有名なものはこのくらいだと思います。

 これらのうち、筆者が行った治療は「乳房切除手術」だけであり、他の治療に関してはあまり知らないので、他の方のウェブサイト等をご参照ください。

 個人的な感覚ですが、FtXが行う治療って「胸オペ」が多い気がします。

 FtXには「自分は女性ではないが、男性になりたいわけではない・男性ではない」という人が多いので、男性ホルモンを摂取して、ひげを生やす! 声を低くする! みたいなことは望んでいない人が多いのだと思います。

 FtXの場合、手術で男性の身体を目指すというよりは、非女性の身体を目指すみたいな表現が近いのかもしれません。

4.筆者が胸オペを決めた理由

 私の場合ですと、乳房が嫌でたまりませんでした。

 私はバストを、女性であることを象徴するような部位だと認識していました。(あくまで筆者の認識)
 どうしてこんなものが私の身体にあるのだろうと思っていました。ふくらみのない、まったいらな胸こそ非女性的で私の在りたい姿だと思って、胸オペを考えるようになりました。

 子宮・卵巣も乳房と同じ「女性特有の部位」ではありますが、それらを摘出することは全く考えませんでした。私が重視したのは身体の外見だったからです。

 胸は膨らんでおり、目立ちますが、子宮や卵巣はあってもなくても、外見からはわからないだろうと考えていて、手術の必要性は感じませんでした。

 私が男性愛者であり、将来少しでも子供を望む可能性があるかもしれないという理由も大きいでしょう。


 中には、子宮・卵巣摘出を望むFtXの方もいます。Xジェンダーに限らず、性別違和によって身体治療を望む人は、人それぞれ目指す姿や在り方が異なるため、ひとえに○○したらいいんじゃない? と言うことはできません。

 私が望む身体は、女性的でも男性的でもない身体でした。性別的な象徴がないまっさらな身体でした。そのような身体が私の心に限りになく近いと考えました。体毛とかも全くない方がいいし、男性器もいりません。

 今の身体と理想の身体との違いといえば、胸があるかないかだけなので、私は胸オペだけ受けました。これから先、他の治療や性別適合手術をするつもりはありません。

 このnoteを読んでいる方の中で、手術を考えている方は、一度自分がどういう身体になりたいのか、どういう生き方をしたいのかを具体的に考えることが大切だと思います。

5.手術により考えられるデメリット

 手術は不可逆的なものです。言い換えれば、手術してしまったら、もう元の状態に戻すことはできないということです。今胸がいらないからといって手術して、将来やっぱり胸が欲しいとなってもどうしようもないことです。

 手術をしたくなった時に一番考えなくてはいけないのは「将来の可能性」です。将来、もしかしたら胸を取ったことを後悔するかもしれません。

 FtXの胸がなくなったことで考えられるデメリットを、私が思いつく範囲で挙げていきます。
 以下のデメリットは筆者の性別的要素(FtXかつ男性愛者)を元にしているので、当てはまらない方もいると思いますがご了承ください。

・胸がないことで恋愛対象から外れるかもしれない

 胸がある方が好きという方は男性にも女性にも多いと思います。Xジェンダーであることに理解を示してくれる相手でも、胸がある方が好きと思う人もいます。

 将来、好きになった人が胸のない自分を好いてくれるかはわかりません。手術をすることで一般的な身体でなくなり、そのことで恋愛がうまくいかないことも考えられます。また、恋人ができたとして、どのように手術したことを告白するか、なども考える必要があるでしょう。

 私は男性愛者であり、自分が胸オペ済みXジェンダーであると、大学やサークルなどで公にしていませんから、女性として扱われています。

 手術に後悔はありませんが、この点だけ今どのように克服すべきかを考えてます。男性愛者のFtXの恋愛は、一見すると、女性と男性の恋愛のようであるため、相手が自分の心の性や手術に理解を示してくれるのかは難しい問題だと思います。

・授乳はできなくなる

 将来、子供を産み育てる可能性が万が一にでもあるのなら、この点も考慮に入れなければなりません。昔は母乳神話なんていって、粉ミルクはダメ! 母乳で育てないといけない! みたいな悪しき考えが広まっていました。今は薄れていますが、胸オペをしたのなら授乳はできなくなります。

 また、授乳しないにしろ、子供に「どうしておっぱいがないの?」と言われる可能性もあるでしょう。子供のいる家庭を持つのなら、一般的な母とは少し違うという点にどう対応していくのかも考える必要があります。

 見てくださっている皆さんは、子供を望まない方のほうが多いかもしれませんし、私も今は子供を望んではいませんが、「将来までずっと自分の考えが変わらない」と断言することはできないので、この点を挙げておきました。

・女性ものの服を着る際にシルエットがイマイチ

 Xジェンダーの人の服装は様々です。メンズしか着ない人もいれば、レディースしか着ない人、その日の気分に合わせてメンズもレディースも着る人、中性的な服を着る人もいますね。私はファッションが好きで、メンズもレディースも着ます。

 レディースの服は、着用者にある程度の胸があるものとして、バストの部分にゆとりをもって作られています。胸がないと着こなせない服もありますね。

 そんな服は着ないという方は気にしなくていいかもしれませんが、将来、服の好みが変わることもあり得ますし、もしかしたら中には、普段着はメンズばかりだけど、ウェディングドレスは着てみたいという人もいるでしょう。こんな場面にも胸がないことを悔やむ可能性が潜んでいます。

・男性の胸になるわけではない (重要)

 勘違いしがちですが、乳房切除手術は胸のふくらみをとり、平らにする手術であって、完全に男性の胸になるわけではありません。

 そもそも女性と男性で骨格が違いますので、手術しただけでは、不自然に胸がない女性の上半身になります。「男性の胸というより非女性的な胸」という表現がふさわしいかもしれません。

 より男性的な胸に近づけたい場合は、筋トレなどをしなくてはいけません。手術だけで理想の胸が手に入るわけではないことを覚えておいてください。

 「不自然になるなら、手術なんてしなきゃよかった」ということにならないように、しっかりと手術後の様子をお医者さんと話し合いましょう。

・後遺症や副作用の危険性

 他の胸オペに関するウェブサイトを見た方なら、耳タコかもしれませんが、手術には必ずと言っていいほど副作用が起きます。

 手術方式にもよるのですが、手術痕が大きく残る場合や、乳輪周りを切り、中の組織を取るため、乳頭が血行不良になって壊死してしまう場合もあります。

 それら重大な後遺症がなくても、手術直後は痛み止めを服用しないと痛いし、しばらくは激しく動けず、なんか胸のあたりがピリピリします。数か月は胸のあたりの感覚がないです。手術後9か月経った今では、だいぶ感覚が戻ってきましたが、慣れないうちは少しストレスでしたね。

 この点もお医者さんとよく話し合い、健康体にメスを入れる危険性をしっかりと理解しましょう。

・お金がかかる

 私はXジェンダーであるという医師からの診断は受けていません。そもそもXジェンダーは、男性から女性/女性から男性の方々に比べて診断書が出るのは少ない気がします。

 診断書がない状態での手術では保険は適用されません。そのため胸オペは治療でもあるのですが、世間的には整形に近いものです。自費のため、病院にもよりますが、数十万円がかかることになります。医療ローンも存在はするそうですが、そのあたりは詳しくないので他のサイトを参照された方が良いかと思われます。

 もしまだ経済的な余裕がなく、金銭面で誰かの援助を受ける必要がある方は、その方との話し合いも大切になります。

6.さいごに

 この記事でお話しした胸オペを決めた理由は、あくまで私個人の考えであり、人によって異なると思います。

 心の性別ははっきりとは分からないもので、特に診断書が出ることが少ないXジェンダーなら尚更曖昧な部分ではあります。

・手術したからXジェンダーになれる

・手術してないとXジェンダーじゃない

・手術してた方がちゃんとしたXジェンダーだ

みたいなのはありません。 

 その人がXジェンダーと自認していたら、その人はXジェンダーであるとするしかないのです。全ては自称の範囲のような気がします。エセXジェンダーであるかを完全に見抜く方法なんてないし、見抜いて批判する意味もありません。 

 だから手術は外ヅラのためでなく、自分のためだけに、するかしないかを決めるものです。もちろんそこには将来の自分も含まれます


 私がこの記事を書こうと思ったきっかけは、自分が胸オペを考える中でネットの情報が少ないからでした。特にリアリティのある当事者の声というのは中々無かったです。自分が困った経験があるから、この記事を書くためにnoteに登録しました。

 情報収集は徹底した方が良いです。個人のサイトやつぶやきのようなものや、病院のサイトなど、様々なサイトを見て参考にしてください。この記事はそのうちの一つとしてくだされば嬉しいです。

 胸オペにはデメリットが確実に存在し、多大な費用もかかります。どうか焦らないでください

 

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