PSAについて本気だして考えてみた

毎度お馴染み考えてみるシリーズ、今回はPSAに焦点をあてて、徒然なるままに書き綴ろうと思います。(最終的にはポケカの鑑定品の話に着地しますので興味のない方はここでお戻りいただいても大丈夫です。)

まずPSAとはなんぞや、についてです。
PSAはアメリカに本社を構えるコレクターズユニバースという企業が行っている事業の名称です。
トレーディングカードや硬貨等の収集品の鑑定や評価を行っております。
今回はトレーディングカードに絞ってお話するため、トレカの鑑定について書き続けていきます。
PSAはトレーディングカードの真贋鑑定を行うと同時にそのカードの状態を12段階の評価付けを行います。その評価基準はグレード毎に明示されていますが、総じて言うと
○センタリング(枠ズレ)
○四隅の状態
○表面の状態
○縁の状態
がどれだけ綺麗に保てているか(印刷されているか)が評価ポイントとなっているようです。
これらがPSAの最高基準をクリアするとグレード10(GEM MINT)の評価が付与されます。
鑑定が終わると、PSA独自のホルダーにカードが封印され、PSA内の証明番号が付与されます。
ホルダーに封印することによりカードの状態を鑑定時から落とすことなく、また、証明番号の付与によりPSAで鑑定されたカードがデータとして保存され、何枚評価されたか、どのグレードが何枚存在するかを管理し、顧客に提供することかできます。
余談ですがPSAはProfessional Sports Authenticatorの略で、元々アメリカで人気のあったベースボールカードの鑑定から始まっています。
もちろんカードを鑑定してもらうためには費用が必要で、カードの市場価値が高いほど鑑定料も高くなっていきます。

そんなPSAに鑑定されたカード、最近良く見かけませんか?
私自身もここ1年の間にフリマアプリやカードショップでも見かける機会が本当に一気に増えたと感じております。
これに関してはポケモンカード投資家による動きが起爆剤となっていると考えられます。
これまでは界隈でもPSAの話はそこまで多く見られることはありませんでした。かくいう私も物好きが鑑定にだしていて、10の評価が取れたら相場価格の2倍くらいの価値がつくもの、というくらいの認識でいました。
しかしやはり賢い人がいるものです。あれ?これ自分で鑑定出して10とれたら資産増えね?ということに気付いた方がいらっしゃり、その波が普及することでPSA鑑定を利用するユーザーが爆増しました。
例えばカードショップで10万円で買っても鑑定して10評価をもらうことで20万で売れれば鑑定料を差し引いても9万くらい残るやん…?です。
本来のPSAの成り立ちからいうと、コレクションカードの真贋を見極め、尚且つグレード付けを行うということは、ある程度古く、模造品が存在するカードにとってこそ価値があるものだと考えられます。
希少な状態のカードを本物であると保証してくれ、評価付けで最高評価を取れたとなるとその希少性が本物、尚且つ美しさ担保されるため価値があがるというのがPSA鑑定品に対する値付けの仕方でしょう。
しかし今のポケカ投資界隈、変な方向に向いてきてしまっています。
最新弾もしくはそれに準ずるほど新しいカードをPSAに鑑定依頼を出すケースが急増しているのです。
新しく発売されたパックに収録されているカード、それを引いてすぐ鑑定に出すとほぼ間違いなく9か10の評価はもらえるでしょう。ましてや偽物なんてものも作成すらされてないと思われます。
後世になって絶版となったときでも、綺麗な状態で残しておきたい、その気持ちはわかります。
しかし、鑑定に出されすぎて現行パック(再販されているもの含む)の収録カードで10のグレードを取得したカードが既に1000枚以上データベースに登録されています。それも1種類ではなく、そんなカードが何種類、否、何十種類もあるのです。
しかもまだ発売元の株式会社ポケモンは増刷、増産を繰り返しているため、これからもカード総数は増えていくことはゆうに予想されます。
果たして元来鑑定品に求める希少性はここに存在しているのでしょうか?

私はPSAに鑑定に出して10評価を獲得することを「PSA錬金」と呼んでいるのですが、これが流行ることによって、未鑑定の状態がいいカードが市場から消えはじめています。
このブームは「PSA鑑定で最高グレードをとると高値で売れる」という観点からスタートしているのですが、「果たしてそのカードが最高グレードを獲得していることに対してどれほど価値があるのか」という部分が置き去りにされている状態です。
バブルの記事でも書きましたが「その土地の本来の価値とは関係なく、土地の値段はあがり続けると信じた人たちによって土地の値段があがり続けた」と同じ現象に陥りつつあるのではないでしょうか。
例えば貴方が欲しいカードがあって、お店ではなかなか出会えない、でもフリマサイトやネット店舗でみかけるけど状態がわからなくて怖い…、なんてときに鑑定品があると実物を見なくても少し高くても買う気になるかもしれません。
でもそのカードが最新弾のカードだったとき、フリマアプリやネットショップでもパックから出て日が経ってない中で販売されているから、そこまで状態が悪いものはこないと思いませんか?実際私も最新弾のレアリティが高いカードをカードショップやフリマアプリで実物を見ずに購入したことがありますが、初期傷以外は全て綺麗な状態のものでした。
なので本来PSA鑑定で最高グレードを獲得する価値のあるカードは絶版や限定で配られたものなのです。
私はこれから鑑定ブームが更に大きなものになれば、PSA本来の希少性を求める市場価値にシフトしていくような気がしております。

ところでPSA鑑定済みのカード、これだけ鑑定されてよくみかけるという話をしたのですが本当に売れているのでしょうか?
例えば現行パックであるバイオレットexから排出されるミモザのPSA10、未鑑定のものの市場価値の倍お金を出して欲しいと思いますか?
おなじくらい綺麗なカードが鑑定品より安く出回っているのなら未鑑定のものを買いたいと思うでしょう。
このPSAの出口戦略として機能しているのがオリパです。最近コンプガチャ式のネットオリパが増えていますが、店舗オリパでもネットオリパでもそこかしこでPSA鑑定品を見かけます。
オリパと鑑定品はとても相性がいいのです。何故ならこれだけカードの状態に厳しくなってきた界隈、当たりカードに多少傷があるだけでお店は炎上してしまいます。大体のオリパには「傷アリのカードも含みます」と注釈を入れているのですが予防線になり得ていないのが現状です。そんな中、状態が保証されたカードを当たりにすればクレームも減り、オリパの総額も大きくすることができます。
なので多くのカードショップはオリパにPSA鑑定品を封入することによりクレームや状態確認の手間を減らし、売上を出しているわけなのです。

話が逸れましたが、このPSAの店舗買取価格も少しずつ下がってきている印象です。もちろん古くて珍しいカードについてはそうではないですが、比較的新しいカードについては落ち着きを見せ始めています。
とりあえずPSA鑑定で最高グレードを取れば価値があがる、というPSA神話も少しずつ傾き始めているのかもしれないですね。

また、PSA鑑定ブームについて弊害がいくつか起こっているように感じられるのでそれをお話ししてこのnoteの締めくくりとさせていただきます。

弊害① 絶版未開封BOXの減少
やはり絶版カードとなるとその価値は高く、ポケカバブル発生前のカードは特に綺麗な状態で残っているものは少なくなってきています。
しかし絶版カードが封入されてる絶版BOXの未開封品、ここから排出されれば間違いなく綺麗な状態のカードが入手できます。これをPSA鑑定に出せば高確率で高い評価を得られるでしょう。
コレクターであり、投資家であり、ギャンブル的思考を持ち合わせた資金が潤沢にある方たちがこの絶版BOXを開封していくことにより絶版の未開封BOXの総数は確実に減少していっております。投資家の視点からいうとBOXは場所を取るので同価値のカードを入手したほうが管理もしやすく、場所もとらないためより投資しやすい環境を作れるのでしょう。
こうなると未開封BOXコレクターの収集が困難になっていく可能性があります。
② PSA評価10に対して、更に評価付けを行う
PSAは飽くまでPSAの基準に則った評価付けを行っています。個人やカードショップが鑑定する着眼点とは齟齬が生じるのは当たり前です。
よく言われているのが「裏面に白かけがあっても表面が綺麗ならグレード10を獲得できる」といったものです。
この話は正しく、私も裏面に白かけがあるカードでグレード10の評価を付与してもらったことがあります。
そうなると個人やカードショップがいう美品とは「白かけがない状態のもの」という点に対してPSAの最高評価では「多少の白かけがある状態のもの」は許容されているという評価の違いが発生し、PSA10でも見る人によっては美品ではないと感じることが起こりえます。
そうなると同じPSAで10評価をもらったカードでもその価値に差異が生まれる可能性がでてくるわけです。
こうなればもはやPSAで鑑定してもらう意義も薄くなってきてしまいます。
果たしてPSAの評価を信頼しているのかしていないのか、よくわからない状態となり「PSA鑑定をしているものだから価値が上がっている」という前提だけが尚更独り歩きしてしまうか、「PSA鑑定品でも各個の美品基準に合致しなければ美品と見なされない」という形になってしまうかもしれません。

ということで、私なりにPSAに対する考え方やこの先の展望について考えてみました。
投資界隈では話題になり始めて参入が増え出すとバブルが終わるというのはよくあることです。
もし投資目的でPSAに手を出している方がこのnoteを読んでいらっしゃれば、参考になれば幸いです。
ご高覧いただき、ありがとうございました。

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