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現在の外国人技能実習生共同受入れ事業の問題点

1993年、外国人技能実習生制度が創設されました。この外国人技能実習生を共同受入れ出来る法人格として、商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人又は公益財団法人等、省令で認められた法人形態に限定されました。

理由としては、外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としたことで、その目的を監理できる法人格としては営利を目的としない法人格が適切であるとされたことによります。

しかし実態としては、この外国人技能実習生制度は数多くの問題を発生させることになります。先ず、外国人技能実習生共同受入れ事業において、その一連の事業運営を担保する目的で「監理費」が徴収できますが、その金銭が、本来あるべき監理費の徴収ルール、協同組合の運営ルールからは逸脱され、協同組合と組合員の関係が「お客様」の関係に変遷し、ある種の「人材派遣ビジネス」になっていることが様々な問題の根源になっていると思われます。

一方、外国人技能実習生に対しても、他の実習場所に容易に移動出来ないという、ぜい弱な立場を利用した権力の汎用から、パスポート取上げ、借金、強制労働、中間搾取、暴力・脅迫・監禁等の多くの問題が発生しました。

これを防止する目的で、2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(通称:技能実習法)を施行し、外国人技能実習生受入れに係る団体を許可制にし「監理団体」「実習実施者(受入れ企業のこと)」という規定が生まれました。(それまでは制度上「1次受入れ機関」「2次受入れ機関」と言っておりました。故にこの2017年11月法改正で外国人技能実習生共同受入れ事業における、中小企業協同組合と組合員の立場は技能実習法の観点からは分離されたことになります。)

しかし、中小企業等協同組合法における中小企業協同組合が外国人技能実習生共同受入れ事業の35万人市場において90%以上の役割を担っている中で、もともとある中小企業等協同組合法が遵守されている監理団体を市場で見ることは皆無に近いです。

最近においては外国人技能実習生共同受入れ事業における監理団体許可に主眼がおかれており、新たに許可された監理団体が法人格の根幹である中小企業等協同組合法を熟知していることは稀のような気がしております。

中小企業協同組合の目的は、中小企業者が互いに協力し、助け合う精神(相互扶助の精神)に基づいて協同で事業を行い、経営の近代化・合理化と経済的地位の向上・改善を図ることであり、その目的が広義であることから、協同組合は組合員の事業を支援・助成するためのものならばほとんどすべての分野の事業が実施でき、協同組合の設立も4人以上の中小企業者が集まればよく、気心の合う同じニーズをもった事業者だけで比較的自由に設立でき、中小企業者にとって非常に設立しやすい組合として広く普及しております。また過去は同業種の事業者で設立するケースがほとんどでしたが、最近では、異なる業種の事業者が連携してこの事業協同組合を設立し、各々の組合員が蓄えた技術、経営のノウハウ等の経営資源を出し合って新技術・新製品開発、新分野事業・新市場開拓等をめざすものが増えています。

このような中小企業協同組合の本来あるべき姿が整っていれば、そこに付随的に与えられた外国人技能実習生共同受入れ事業においても問題が発生しないということが大本の考え方になります。現在、技能実習法が施行された中で、中小企業協同組合が運営・監理する外国人技能実習生共同受入れ事業は、中小企業等協同組合法と技能実習法の2つの法令の中で運営されていることを重視した上で、真のあるべき中小企業協同組合(監理団体)を目指さなければならないことは既知の事実であります。

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