人は、とにかく曖昧なことが嫌い「曖昧性効果」
エルズバーグの実験
あなたは箱Aと箱Bどちらを選んで挑戦しますか?
多くの人は箱Bを選択します。これは、アメリカの経済学者、ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)の実験です。なので、エルズバーグのパラドクス(The Ellsberg paradox)とも呼ばれています。この傾向は、賞金ではなくペナルティである場合、より強まりました。つまりハズレを引くと1万円支払わなくてはならないとなると箱Bをもっと選びやすくなるということです。ケインズ経済学のケインズも近い概念を発表していました(※1)。
箱Bもアタリとハズレが無作為に選ばれて入れられるのであれば、数学的にはアタリとハズレの確率がそれぞれ2分の1になります。しかし人は、曖昧な選択肢を避けます。これを曖昧性効果と呼びます。
曖昧性効果
曖昧性効果(Ambiguity effect)とは
です。認知バイアスのひとつ。曖昧性忌避(ambiguity aversion)とか不確実性回避(uncertainty aversion)とも言います。この曖昧性効果を具体的なものにしたのは、エルズバーグのパラドクス(The Ellsberg paradox)とも呼ばれています。
実例
住宅を購入するとき、多くの人は市場によって金利が変動する変動金利型住宅ローンよりも金利が一定の固定金利型住宅ローンを選択します。統計的には変動金利型の方がお得であることがわかっているにもかかわらず。
また人々の資産運用の方法にも、この曖昧性効果がみられます。リスクを嫌う投資家は、株式やファンドなどの変動性の高い投資ではなく、国債や銀行預金などの安全な投資を好む傾向があります。株式市場が時間の経過とともに高いリターンを提供する可能性があっても、投資家はリターンがわからない予測不可能な株式市場ではなく、リターンがわかっている安全な投資を好みます。
人間は曖昧な知識を避けようとするものである。これはクラスタリング錯視と関係があります。大量の交絡変数を提示されても、人は知らないことを知っていると主張する傾向があります。これにより認知的不協和が生じ、それを避けるために、より確実なものに会場を変えようとする。
対処
応用
人は、曖昧である選択肢を好みません。30%の確率で5000円がもらえる選択肢とどのくらいの確率かわからないけれど1万円もらえるかもしれない選択肢なら5000円のほうを選びやすい。
ゆえにプレゼンテーションや提案をする際には、確実性を含んだものを提示するとそちらが選ばれやすくなるし、逆に不確実性が高いと嫌がられやすい。卑近な例なら、デートに誘うときに「渋谷に行って素敵なレストランに行こうよ」より「セルリアンタワーのバーで軽く食事しながらお酒も飲もうよ」のほうが選択しやすくなるというわけです。
ビジネスのシーンであれば、「リスクはさほどありません」というよりは「リスクは18.2%です」と言われるほうが、好まれるわけです。ビジネスのシーンで、思慮が浅いものと思われる「なるはや」という言葉も、まさに曖昧な表現ですので、「可能なら一両日中に、遅くとも3日後の午前中までにお願いできますか」がベターということになります。逆に好まれたくないときは、曖昧な情報を与え続けれていれば、嫌がられることに成功します(笑)。
曖昧性効果はプロスペクト理論に関わっている
プロスペクト理論(Prospect Theory)とは、ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーにより展開された不確実性下における意思決定モデル。
そのダニエル・カーネマンによるわかりやすい認知バイアスの紹介本が、こちら。
また『マネーボール』の著者、マイケル・ルイスがこの二人について書いた行動経済学の本もとてもおもしろいです。
まとめ
人間のこうした曖昧な状況下では確実に分かる情報から状況を判断する傾向をヒューリスティックと言います。ヒューリスティックは、瑕疵があったり合理的ではない行動を取ることもありますが、どうしてこういうものが人間に(そして動物にも)行動傾向として持つに至ったのかというと、それは生き延びやすいから。なので困った傾向というわけでもないんです。ときに不具合を起こすので、知っておくとより生きやすくなります。ぎゃくに重大に問題に陥ることを防げます。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、認知バイアス一覧の記事にまとめています。
参照
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