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間違いを指摘されると逆に考えを曲げなくなる 「バックファイア効果」

人間は間違いを指摘されるとかえって強く信じ込んでしまうのか?

何らかの認識を持った人が、その認識についての誤りを指摘されると、かえってその認識を信じ込んでしまうという現象があるのではないか、という研究がありました。これを「バックファイア効果」と言います。しかし、この効果についての7つの論文をメタ分析したところ、この効果はあまりみられないようだという結論に至っています。


バックファイア効果

バックファイア効果(Backfire effect)とは、

他者から間違いを指摘されると、逆にますます信念を深める傾向

です。バックファイアとは、英語で「しっぺ返しを食らう」とか「裏目に出る」という意味。ちなみに「しっぺ返し」は、英語で「Tit for tat」とも言います。この効果は、ブーメラン効果とも呼ばれています。


バックファイア効果の論拠

バックファイア効果は、ダートマス大学(Dartmouth College)のブレンドン・ニャン(Brendan Nyhan)教授とエクセター大学(University of Exeter)のジェイソン・レイフラー(Jason Reifler)教授が提唱しています。2010年の200人のアメリカ人を対象とした研究結果が論拠(※1)

調査は、大学生200人を対象に「イラク戦争の是非」を問う質問を2つのグループにするという内容。一つのグループには「大量破壊兵器はみつからなかった」という情報を加えています。するとこの情報を聞かされたグループのほうが多くイラク戦争を支持しました。

メタ分析の結果

一方で、イギリスの慈善団体Full Factに以前いたエイミー・シピット(Amy Sippitt)氏は、この「バックファイア効果」を疑問視しています。シピットは、ハイオ州立大学のトーマス・ウッド助教授(Thomas Wood)とジョージ・ワシントン大学のイーサン・ポーター助教授が2018年に発表した検証実験を論拠としてニャン氏らのバックファイア効果を「対象が少なすぎたことと設問がアメリカ人にとって非常に政治的すぎた」ことを指摘しています。

ウッド氏らの検証実験では、1万人を対象に52の質問をしてバックファイア効果を再現しようとしましたが、ほとんどバックファイア効果が見られませんでした(※2)。

対策・応用

バックファイア効果は、ちょっと怪しいので、対策と応用はありません。しかし人間は、事実をしっても意見を変えないという傾向はやはりあります。たとえば、ターリ・シャーロット博士が指摘するように人は事実を受け入れない傾向があります。


しかしシャロット博士のこの著書は、その対策においてはあまり有効な情報を提示してくれていません。人の意見や行動を変えるのにこの著書以上に役立つのが、ジョーナ・バーガー 氏の『ザ・カタリスト』です。おすすめ!


まとめ

バックファイア効果はちょっと怪しいものの、「かえって意固地になって意見を変えない」という部分を取り除き、事実を知っても人は意見を変えないという傾向はたしかに存在しています。その理由は5つほどあるのですが、バックファイア効果についての記事なのでこれについてはまた別の機会に解説します。今回は、


認知バイアス

認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得した生き延びるための工夫が裏目に出たものです。こちらの記事では236ある認知バイアスを一覧にしています。


参照

※1:When Corrections Fail: The Persistence of Political Misperceptions


※2:The Elusive Backfire Effect: Mass Attitudes' Steadfast Factual Adherence (2016)





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