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新常態、エスト二アの教訓

エストニアをご存知の方も多いと思います。人口は日本の100分の1、面積は8分の1程度のいわゆる小国ですが、インターネット自由度、医療デジタル度等多くのランキングで世界トップ級のIT立国です。

8月12日日本経済新聞記事朝刊より一部引用し、コロナ禍の医療現場、補償対応及び教育現場等について紹介します。

エスト二アに初の新型コロナウイルス感染者が確認されたのは2月27日、政府は3月12日に緊急事態宣言を行い、5月17日まで屋外イベントや公演などを禁止した。医療現場はどうだったか。同国には「家庭医」という資格制度がある。全国民は家庭医を決め、登録する。病気になれば家庭医を訪れる。オンラインで相談や診察を受けるのも日常的だ。カルテ、処方箋等ほぼ電子化している。コロナ禍でも変わらない。同国では感染者は自宅療法が基本で、家庭医が必要と判断すれば設備が充実した病院に入院を指示する仕組みだ。同国の累計コロナ感染者数は8月1日現在2千人強。人口比では日本より多いが、6月以降大きく増えておらず押さえ込みに成功している。
補償対応も素早い。休業を命じられた企業には従業員の休業補償給付金が、売上が一定以上減った中小企業には一時金が、それぞれ支払われる。いずれも経営者がオンライン申請して5営業日以内に振り込まれる。従業員へは各従業員の口座に直接だ。もともと行政サービスを受けるために役所に出向く人は少ない。婚姻届などを除く99%の手続きが電子化されているからだ。税金も98%がオンライン申告だ。
教育現場は3月16日から遠隔授業と家庭学習に切り替えられた。すべての児童は小学校に入学すればデジタル社会に適応した技能を学ぶ。教示はデジタル化しており、遠隔授業でも支障は少ない。

旧ソ連崩壊後の1992年、小国で資源のない同国では大胆な改革路線、つまりソ連時代の非効率さを根絶し、投資を呼び込むためIT分野を育成することに舵を切りました。

2002年からは15歳以上の国民全体が電子認証・署名の機能を持つ電子IDカードを所有するようになっており、「国民総生産(GDP)」の2%を新たに創出する時間が節約できた、と言われています。このカードは、行政サービス以外にも、運転免許証、健康保険証なども兼ねており、民間オンラインサービスも利用できるという万能型になっています。

2007年にはロシアから組織的なサイバー攻撃を受け最大の危機が訪れましたが、それ以降官民連携でセキュリティーを強化し、サーバーのバックアップをルクセンブルクに置くなど万全の体制をとってきました。

気になるのは、膨大な個人情報がネット上で政府に管理されるのではないか、ということです。それについては、「政府を信頼していないから安全性だけではなく、政府の責任を追求できる透明性の高い公平なシステムとなった」、つまり、ITは国民が権力を監視するツールでもあるとの認識です。

単にITのメカニズムそのものに感心するばかりでなく、その背景にある「思想」に注目することこそが重要です。日本とは様々な条件こそ違いますが、大いに参考にすべき国のひとつであることは間違いありません。

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