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手話通訳者全国統一試験「手話通訳者登録制度の概要」2021過去問⑱解説〜手話通訳での留意事項〜

2021年度手話通訳者全国統一試験の過去問について、参考文献をもとに独自に解説をまとめたものです。


問18.手話通訳での留意事項

手話通訳を行う上での留意事項について述べています。下記の(1)〜(4)の中から、正しいものを1つ選びなさい。

(1) 手話通訳終了後の報告書の内容について、電話で報告した内容は重複するので記載は控えた。
(2) 医療場面の手話通訳を受け、たまたま依頼者であるろう者とサークルで顔を合わせたので本人に病状について質問し情報を得た。
(3) 公的機関での申請場面の手話通訳で、待ち合わせ時間より早めに着いたので、窓口にその旨伝え必要書類をもらっておいた。
(4) 「福祉のまちづくり会議」の手話通訳で、聴覚障害者協会会長のAさんとの事前打ち合わせの時に、発言したい内容を確認することにした。

2021年度手話通訳者全国統一試験 筆記試験 問18

問題解説

(4)が正しい。

手話通訳業務

会議や講演会、イベント等では、主催者に手話通訳に来たことを伝え、自己紹介する。参加している聴覚障害者が確認できればあいさつをする。特にきこえる人が多い会議では、聴覚障害者が発言したい内容や思いを先に聞き取り、的確に発信できるようにすることが大切である。また、司会者には、手話通訳が入り、確実にきこえない人に情報を伝えるために、発言者に手を上げていただくことや、複数で同時に発言することがないよう、進行の配慮について、可能な範囲を確認する。

通訳環境の確認

手話通訳者の立つ(座る)位置は、聴覚障害者にとって見やすい位置か確認する。また、聴覚障害者の席が予め用意されている場合もある。その他、マイクの有無、スピーカーの位置を確認し、手話通訳者が内容を明瞭に聞き取れることができるかどうか、実際の位置で確認する。照明や外の光がまぶしくないか、不具合があれば移動することが可能か核にする。

守秘義務

派遣される現場は医療現場や労働画面、講演会、学校など様々である。業務上知り得た知識を他に漏らしてはいけない。手話通訳者は地域で養成されていることから、他の専門職と違い、普段からよく会う聴覚障害者の通訳を担うケースもある。その際は、自分がボランティア活動仲間ではなく、自治体から派遣された福祉事業の担い手である手話通訳者として接し、その境界線をきちんと保つことが大切である。次の週に手話サークル等で会ったとしても話題には出さないよう留意する。

手話通訳業務終了後の報告

手話通訳業務を終えた後、コーディネーターに業務の報告をする。自分の通訳に間違いや問題がなかったか振り返る。手話通訳業務を終えた後、急ぎ報告が必要であればコーディネーターに電話や面談で報告する。手話通訳の内容を正確に伝えることや、手話通訳業務のプロセスを振り返り、通訳できなかったことや、困ったことなどは必ず相談し解決することが大切である。報告書は早めに作成し提出する。報酬や交通費の支払いを受けるためではなく、報告内容は次の手話通訳業務に活かされる。電話や面談で先に報告した内容も簡潔にまとめ、派遣された手話通訳者が気づいたことは意見、所管として付記しておくことが大切である。これは業務報告のためであり守秘義務違反にはあたらない。

(1)は、電話で報告した内容であっても、手話通訳業務終了後は報告書の提出が必要である。(2)の行為は守秘義務に違反する。(3)は手話通訳士倫理綱領のける「聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるよう努める」に反する。

(参考)
手話通訳者養成のための講義テキスト,全国手話研修センター

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