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2020年12月の読書メーター

読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2411ページ
ナイス数:61ナイス

https://bookmeter.com/users/17388/summary/monthly
■ねなしぐさ 平賀源内の殺人
そもそも自分に引き比べることすら烏滸がましいのは百も承知だけど「自分は何でこんなことやってまでして、生き長らえているんだ?」と思うことはしばしばあって。平賀源内も、史実通り「最後は酔っ払って人殺して捕まって獄死」に至るまでに、どれだけこの問いを繰り返したことだろう?と思うと、何だか他人事と思えなくてさあ。あらゆる才能を煌めかせながら、自分の求めている評価は全然得られていない、という焦燥感。作品の中では、皆が源内をちゃんと評価してくれていて、「事件」の真相も救いがあったからまだしも。玄白良い奴だわー本当に。
読了日:12月27日 著者:乾 緑郎
https://bookmeter.com/books/15116348

■人生、しょせん気晴らし
漱石の『草枕』の冒頭の「知に働けば角が立つ」からの一節を、人生観として突き詰めていくと、こういう「非人情」なヒトデナシの「哲学者」が誕生するんだろうなあ、と。とにかく、理には適っているだけに始末に悪い。一体、どういうきっかけでこの人に人生相談コーナーとか任せたよ…と言うくらい、悩める人々を次々と奈落の底に突き落とすような回答の数々にときめくよなあ。俺なら絶対、リアルでは極力近づかないよう心がけるね。ただ、読んでる分にはとても爽快で、それは、自分を含めたあらゆる人間に対する突き放し方に統一感が取れてるから。
読了日:12月26日 著者:中島 義道
https://bookmeter.com/books/439672

■秘密諜報員ベートーヴェン (新潮新書)
師走になると日本人が無性に聴きたがるベートーヴェンの『第九』。この曲は「合唱付き」な訳ですが、その詞の中に込められた想いは、かの謎多き「不滅の恋人への手紙」にも共通する、熱く強き魂の発露であった! という、なかなか挑戦的な内容で、いかにも新潮新書が好きそうな「一歩間違うとただの飛ばし与太」なんだけどね…ベートーヴェンが通説と異なり、実はナポレオン一推しを貫き通してた、という前提で、1812年(手紙を書いた年)皇帝の大陸封鎖令からロシア遠征に至る時期のベートーヴェンの移動を丹念に追っていて、かなり興味深い。
読了日:12月23日 著者:古山 和男
https://bookmeter.com/books/595381

■歴史破壊小説 裏太平記
何でこの作品が長らく単行本化されてなかったのか、正直よく分からない。確かに往年の「伝奇小説の第一人者」だった頃よりは、展開に落ち着きがあって、淡々と書かれてるように読める。けど、その内容はと言えば、かの『徒然草』で知られる兼好が、日本における「下剋上」という概念の創始者として、鎌倉幕府滅亡から建武の新政に至る一連の史実に留まらず、後世の「忍者」や「遊行の民」など、歴史の影に潜む者たちを創始した、という大ネタを、まるで新書の日本史入門みたいにさらっと書き綴ってらっしゃるしさー。素人ならコロッと騙されるわー。
読了日:12月20日 著者:半村 良
https://bookmeter.com/books/460040

■判決はCMのあとで ストロベリー・マーキュリー殺人事件
裁判員裁判とマスコミの暴走が悪魔合体すると、この作品で描かれたような、行き過ぎた「裁判のエンタメ化」にもなりかねないなあ、と。もちろん、問題点を浮き彫りにするためにデフォルメしているのは分かるけど。でもやっぱ、裁判を「楽しみ」にして嬉々として語る彼女とは付き合えないわー。本編の事件をめぐっては、ミステリ部分の緻密さや、エンタメ部分の描き込みは見事だと思うけど、主人公・悠太の恋愛の行方については…いや貴様、本気で女子見る目無さすぎるだろ、と思った。ある意味、成立せんかったのは良かった、とも言うんだけどさ。
読了日:12月18日 著者:青柳 碧人
https://bookmeter.com/books/4596304

■ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)
上巻読了してからだいぶ間が開いてしまったため、展開思い出すのに一苦労でしたが、結局「一生で一番輝いていたあのころ」に殉じて、半世紀ぶりに少年少女に戻って、脳波の拳で殴り合う痴話喧嘩ということでよろしいか【よろしいはずがない】。カンボジア内戦もそろそろ「歴史」の域に入ってくるんだよな、当たり前だけど。次々と出てくるポル・ポトとクメール・ルージュの「悪行」は、過去から連綿と続く人類の「愚行」の連鎖の1ページとして綴られる中で、ソリヤとムイタックがそれぞれのアプローチでなんとかしようとして…正直しんどかったわ…
読了日:12月13日 著者:小川 哲
https://bookmeter.com/books/14647748

■人生に生きる価値はない (新潮文庫)
「哲学」ってのは、物事をわざわざややこしく考えた結果「曰く、不可解」に陥るための学問である、と思っていて。こんな生き方をしていたら、めっさ生きづらいだろうなあ、と思いつつ、要所要所に大いに首肯できる文章があって、なかなか面白いですな。例えば「善人」とは、世間のあらゆる状況に対して疑問を持たず、特に抗わず素直に適応している人達のこと、ってのを読むと、全くの善人ではない自分も、些かひっかかりを覚えるとか…あるいは「客観的な時間は存在しない。即ち、人生には意味が無い」って言葉で、足元の脆さに寒気を感じたりする。
読了日:12月06日 著者:中島 義道
https://bookmeter.com/books/4237598

■小説 イタリア・ルネサンス1〈ヴェネツィア〉 (新潮文庫)
人生において一番多感な少年期、青年期を共に過ごした二人が、歴史の奔流に巻き込まれ、一人は故郷ヴェネツィアの政治の中枢に、もう一人は最盛期のオスマン帝国の首都・コンスタンチノープルで、スレイマン大帝の親任を受けた大立者に。もちろん、巧みに虚実は織り交ぜているのだろうけど、16世紀前半というこの時期に、ヴェネツィアとオスマン帝国は、かなり先進的なシステムで国家か運営されていたのだなあ。そして、その先進性故に、マルコとアルヴェーゼは活躍できたが、翻弄もされ、愛と友情も危機に晒されることになったのだろう、と思う。
読了日:12月02日 著者:塩野 七生
https://bookmeter.com/books/16601507


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