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2021年1月の読書メーター

読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5335ページ
ナイス数:113ナイス

https://bookmeter.com/users/17388/summary/monthly
■かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)
小学校に入ったくらいの頃、ちょうど「理性」が芽生え始めて、世の中の何もかもがいきなりよく分からなくなって混乱したのを思い出す。それまでは割と混沌としていた分、「説明」を求めずに全てを受け入れていたから、虚構も現実も境界が無かったんだけど。かのこちゃんの目に映る「現実」は、ギリギリこの境界線にあって、でも、徐々にそれが「理性」によって喪われていくことを知っているから、一抹の寂寥を感じざるを得ない。やがてマドレーヌ夫人や玄三郎やすずちゃんとの別れとオーバーラップして、「黎明期の想い出」と化してゆくのだろうな。
読了日:01月31日 著者:万城目 学
https://bookmeter.com/books/5748395

■ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)
乱歩賞でのデビュー当時からリアルタイムでファン続けてきているので、当然読んでいると思っていたのに…作品数が多い上に作風が多彩だから、たまに抜け落ちるねん…あ、これ未読だ。文庫が1996年初版で90刷も納得いくわ。何かねえ、今この時にこの作品が読めて本当に良かった、と思った。芝居の練習という仕立てで「雪の山荘」に人為的に閉じ込められた役者達の「連続殺人」。これは虚構なのか、現実なのか? という、非常に気持ち悪い状況が続く。そしてラストのカタルシスへ。オールタイムベストミステリに入れたい作品に久々に出会った。
読了日:01月31日 著者:東野 圭吾
https://bookmeter.com/books/577402

■さよならの言い方なんて知らない。4 (新潮文庫)
昔『グイン・サーガ』のあとがきで栗本薫先生が書いておりました。「三国鼎立が一番盛り上がる」と。全くその通りで、相対的に弱小な第三勢力が策を弄し始めると話は断然面白くなります。ことにその三番目が癖のある策士と無双の戦士を手に入れると…そしてこの、5km四方の「異界」の勢力争いは、直接戦闘以外で各勢力のトップが使ってくる手立てが一見、大博打に見えて実はかなりみっちり考えられているので、読んでて飽きが来ない。更に言うなら、世界の枠の「外」に向けても戦いを挑まなきゃならないあたりのしんどさも、読む分には快感です。
読了日:01月29日 著者:河野 裕
https://bookmeter.com/books/16601501

■○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)
なるほど…これは確かにメフィスト賞作品だわ。タイトルからして相当な曲者なのは分かりきってたけど、世界観の根幹がごそっと崩れる瞬間が「うわー。懐かしいわー」と思った。『屍人荘の殺人』【今村昌弘】でも同じようなひっくり返され方をしたけど、あの作品は一応、タイトルが一端を明示してるしなあ…それにしても、出てくるトリックとか仕立てとかが、時代錯誤の本格ミステリで使われるようなものなのにも関わらず、この事件では「必然」だったりするところが凄い。よくぞ使ったわ。そして、らいちちゃんがなー。うん。ま、悪い子じゃ無いが。
読了日:01月27日 著者:早坂 吝
https://bookmeter.com/books/8216667

■オニキスII ―公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子― (新潮文庫nex)
公爵令嬢なので1件上げるのに1000億単位のお金が動くのは当然。金の単位が「トン」という時点でどうかと思うのですが…ま、それはそれとして。今回も綾子様の傍若無人ぶりはとても素敵…ではあるのですが、心なしか、前線でのご活躍では無く、黒幕的な立ち位置になられている分、危機感がいまいち感じられないのが物足りない…その分、事件の当事者のドラマが濃いめになってる、というのはあるけど。今のところ、敵側(検察)が綾子様の圧倒的な物量による電撃戦で瞬殺される展開が続いてるので、ちと次巻ではもう少し追い詰められてくれんと。
読了日:01月27日 著者:古野 まほろ
https://bookmeter.com/books/16391419

■作家の人たち
この作品に登場する「売れないまま四半世紀やってきてしまった職業作家」の悲哀は、自分みたいなゲーム業界の端っこで企画屋としてかろうじて糊口をしのいでいる人間にとっちゃ、まったくもって他人事じゃ無いです…小説をめぐる社会環境をカリカチュアとして書いていらっしゃるけど、「クリエイティヴ」と言われる業界においては、普通に年取っちゃった奴なんてのは、いつ路頭に迷っても不思議じゃ無いですし。若いうちにどかっと稼いでゲーム作らんでもいいよつになるか、歳とっても枯れない才能を持ち続ける以外に、生き延びられない業界ですし。
読了日:01月21日 著者:倉知 淳
https://bookmeter.com/books/13637960

■日本人と福の神―七福神と幸福論
「七福神」てなんか怖いよね…? 自分だけなんだろか。異形の者たちが海から船に乗って押し寄せてくるんですよ? 怖くない? 彼らがもたらす「福」ってのも、なんだか得体の知れないイメージ先行のもので、具体性に乏しいし。てことで、踏み込んでちと彼らについて知っておこうと思ったのですが…読めば読むほど、設定が渋滞し過ぎて訳が分からないし。行き当たりばったりで有名どころと次々コラボした結果、何を提供してるんだか分からなくなってる感じがする。「福禄寿」と「寿老人」のキャラ被りが象徴的ですよな。相変わらず怖いままで読了。
読了日:01月21日 著者:三橋 健
https://bookmeter.com/books/134317

■桔梗の旗 明智光秀と光慶
明智光秀の嫡男・十五郎光慶と、明智三家老の一人・左馬助。二人の視点から「本能寺の変」に至る光秀を追っているんだけど…なんだろ。もっとこう、いろいろ意表を衝いた展開なり、あるいは濃いめの情なり、あるいは異常性なり、が見てみたかった、というのが正直なところで…信長がそこまで十五郎を忌避する理由が、エピソードがあまりに不足していてちょっと唐突だったし(と言うかある意味分かりやす過ぎてかえって「そうじゃないだろ」と思ったり)。左馬助も何と言うか、もう少し傾いてたりすると十五郎との対比がくっきりして良かったなあと。
読了日:01月20日 著者:谷津 矢車
https://bookmeter.com/books/14802890

■読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)
物心ついてからずっと、藤生蛍ちゃんの側で生きてきたので(じゃなきゃ読書メーターにわざわざレビューなんざ書きませんや)、そもそも「読書嫌い」という人間のあり方がよく分からないなあ…と、思いながら読み進めた訳ですが。人はみんな、当然のことながら個々に事情を抱えて生きているのです。だから第一印象でいきなり上から物を言うのは禁止。すまんかった荒坂。そして『舞姫』と『少年の日の思い出』についても、たぶん30年くらい誤解してた。すまんかった。『赤い繭』は未読だが『箱男』は懐かしかったねえ。皆幸せになってほしいものだ。
読了日:01月16日 著者:青谷 真未
https://bookmeter.com/books/15442509

■コロンブスの図書館
「新大陸を発見」したコロンブスは知っていても、息子については全く知らんかった…まだまだ「全然知らんかったがめっさ魅力的な人物」なんて幾らでもいるんだろうね。エルナンド=コロンは、あるかどうか分からない土地へ航海を試みるのに勝るとも劣らない、あまりにも無謀な「夢」に取り憑かれ、しかも地味に地道に生涯取り組んだ人。16世紀前半に、いわば「Wikipedia」を作ろうとしちゃったんだからねえ…「知識を秩序立てたい」気持ちは、同じ性向のある自分には痛い程理解できる。本を縦置きに並べる時、エルナンドを思い出してね。
読了日:01月14日 著者:エドワード ウィルソン リー
https://bookmeter.com/books/15754880

■逆説の日本史23 明治揺籃編 琉球処分と廃仏毀釈の謎 (小学館文庫)
サブタイトルが「明治揺籃編」だけど、序論が全編の半分くらいを占めてて、まあこれがとにかくおなじみの「井沢節」なのです。朱子学が諸悪の根源であり、日本のみならず中国や朝鮮半島の歴史を大いに腐らせた諸悪の根源ってのは、ま、分からなくもない。合理性の無い「宗教」は、人間が本来持っているはずの理性を確実に曇らせるから。日本はこれに加えて「言霊」と「ケガレ忌避」という積年の文化的病弊があるから、更に始末が悪い、と。さすがに23巻も付き合ってると、「逆説」が「逆説」と思えなくなってきてて、俺の中で浸透してるなあ、と。
読了日:01月11日 著者:井沢 元彦
https://bookmeter.com/books/16610585

■ゲーム的人生論 (Role&Roll Books)
著者の訃報を聞き再読。ゲーム屋の端くれとして、未だに業界にかろうじてぶら下がってるのは、『モンスターメーカー』との出会いが間違いなくきっかけの一つとしてあります。再読して思い出したけど、周囲に流されるままに入った大学の学部が同じで、飽きたらずにドロップアウトして、職を転々としたとこも一緒で。ただ、そこから先、日本のアナログゲーム界のレジェンドになるまでが全然違うのは、ゲーマーに心得として提示した「第一が必勝の信念、第二が投入量」を貫いたところなんだろうなあ。生涯現役であり続けた先達の冥福を心より祈ります。
読了日:01月09日 著者:鈴木 銀一郎
https://bookmeter.com/books/140450

■黒王妃 (集英社文庫)
カトリーヌ・ドゥ・メディシスについて最初に知ったのは、かの傑作トンデモ本『ノストラダムスの大予言』【五島勉】でしたなー。あの本では単なるヤバげなおばちゃんでしたが、さすがに佐藤賢一作品の主役ともなるとそんなことは無く、聖バルテルミーの虐殺に至るまでの経緯もとても丁寧に描かれてて。回想シーンのクライマックスが、かの詩篇で描かれた場面だったり、美人揃いの遊撃隊も五島勉に元ネタがあったなあ、と【いや、サトケン読んでないと思いたいけど】。そしてカトリーヌの周りの野郎どもが悉くポンコツだらけで、そりゃ苦労するよね…
読了日:01月08日 著者:佐藤 賢一
https://bookmeter.com/books/15784259

■独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
本来、リファレンス的に使うのが正しいのかもしれないし、著者もそう言ってるんだけど…でも、一度は通読しておきたかったのね。752p +索引34p。とても読み応えあった。なんのために、何を、どうやって学ぶのか、という技法について丁寧に解説されていて、手引きとして極めて有用なことは確かなんだけど、何より、著者の「学ぼうと志した人」に対するまなざしの優しさが、文章の端々から感じられて、読み進める都度、励みになる。これからも折に触れて、迷った時や迷ってない時に、この分厚いのをぱかっ、と開いては読み耽ることでしょう。
読了日:01月05日 著者:読書猿
https://bookmeter.com/books/16354922

■しあわせな死の桜
短編集。著者は、俺の中ではもっぱら重厚長大で複雑怪奇な大作をどっかんどっかん撃ち放してる印象が強かったりするのですが、こんな風に佳品を集めた宝石箱みたいなのも、また、ひときわ妙味に溢れてていいです。俺はもう、トリック芸者にまた逢えただけで相当幸せです。97%くらいまで、かっちりと論理組み立ててるのに、残り3%で事象の地平線を躊躇いなくぶっちぎる。「そこはそれ」と酉つ九姐さんが伏し目がちにつぶやくあの瞬間こそが、ロジックとカオスのスキャンダラスな逢い引きなのだなあ、と。何言ってんのか分からんくなってる…
読了日:01月01日 著者:竹本 健治
https://bookmeter.com/books/11524362


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