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ツール・ド・フランス2022 全選手プレビュー① ユンボ・ヴィズマ
国籍:オランダ 略号:TJV 使用機材:サーベロ
今年こそ、ログリッチの「リベンジ」は果たされるのか? 前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも、ステフェン・クライスヴァイクやヨナス・ヴィンゲゴーを始めとした圧倒的なアシスト力の高さを見せつけており、期待は十分。
そして、マイヨ・ジョーヌを本気で狙いながら、今年は同時にワウト・ファンアールトのマイヨ・ヴェール獲得も狙っていくという。贅沢だが、十分に狙っていけそうなのがこのチームの凄いところ。もし、マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェールを同じチームが両方獲得したとしたら、それはもしかしたら1970年代のベルナール・イノー以来の快挙となるかもしれない。
だが、まずはとにかくマイヨ・ジョーヌ。とくに、悔しいトラブルだけは避けたいところ。最大の宿敵タデイ・ポガチャルとの全力のぶつかり合いを実現できることを、強く願っている。
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コースプレビューはこちらから
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、33歳)
オールラウンダー、177㎝・65㎏、出場日数26日
決して最強ではない、しかし誰よりも不屈なる男。
2020年のあの「大敗北」の直後にリエージュ~バストーニュ~リエージュを制し、2021年のあの「あまりにも悔しいリタイア」の直後に東京オリンピックを制し、そして、ブエルタ・ア・エスパーニャでは歴史に残る3連覇を達成。
さらに今年は、これまで彼を蝕んできた「マイヨ・ジョーヌの呪い」を完全克服。3月のパリ~ニースでは最終日にあわやという瞬間もあったがしっかりと守り切り、直近のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではチームの圧倒的な強さのもと、ヨナス・ヴィンゲゴーと共に圧勝してみせた。
思えば2年前のあの「大敗北」を目にした瞬間、正直、「終わった」と思い込んでいた。そのときすでに30歳。周囲にはタデイ・ポガチャル、エガン・ベルナル、そしてレムコ・エヴェネプールなどの若き才能が次々と現れてきており、ログリッチがツールを狙える瞬間はあれが最初で最後だと、勝手に思い込んでいた。
だが、「誰よりも不屈なる男」は、敗北を重ねるたびに強くなっていった。そしてそれは彼のチームメートもまた、同様であった。
あれから2年、ゆるぎなく、より強固となったチームの信頼を背負って、敗け続けてきた男はいよいよ世界最高の勝利へと続く道に踏み込んでいく。
今年の主な戦績
パリ~ニース区間1勝&総合優勝
イツリア・バスクカントリー区間1勝&総合8位
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、26歳)
オールラウンダー、175㎝・60㎏、出場日数26日
ユンボ・ヴィズマが生んだ奇跡のような新鋭。昨年はイツリア・バスクカントリーでプリモシュ・ログリッチによる「タデイ・ポガチャル倒し」実現のための最高のアシストを果たし、さらにログリッチが早期リタイアしたツール・ド・フランスではモン・ヴァントゥーでポガチャルを突き放した瞬間も。
最終的に総合2位にまで登り詰めた彼のキャリアの始まりからモン・ヴァントゥーのあの瞬間に至るまでの歴史は下記の記事で詳細に書かせていただいている。
今年もその強さは健在。ティレーノ~アドリアティコではエースとして臨み、タデイ・ポガチャルに食らいつく総合2位。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは最終日にプリモシュ・ログリッチとの「ワンツーフィニッシュ」を果たした。
十分に強く、そのうえでチームメートのためのアシストにも何の迷いもなく足を使おうとする忠実さも持ち合わせており、最も信頼のできる最高のアシストである。
今年は母国デンマークでのグランデパール。もちろん、そこで勝利するのはちょっと難しいかもしれないが、そこで同国人たちに見送られた彼が、最終日パリでエースを表彰台の頂点に乗せることができれば、それは彼にとっても間違いなく最高の瞬間となるだろう。そして次のエースは彼だ。
今年の主な主な戦績
ティレーノ~アドリアティコ総合2位
イツリア・バスクカントリー総合6位
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合2位
ワウト・ファンアールト(ベルギー、28歳)
オールラウンダー、190㎝・78㎏、出場日数22日
2019年、ワールドツアー初年度にツール・ド・フランスに初挑戦し、早速のステージ優勝。以来、毎年出場しては必ず勝利する。
昨年は3勝。それも、モン・ヴァントゥー、個人タイムトライアル、さらには「スプリンターの世界選手権」シャンゼリゼすら同時に制し、「脚質ファンアールト」の本領発揮となった。
そんな彼の今年の目標はマイヨ・ヴェール。元来、相性は良いと言われ続けてきたが、ついに本気でそれに取り掛かることに。その本気度は、前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも十分に発揮され、初日優勝・第2ステージは逃げ切られるが集団先頭・第3ステージは早すぎたガッツポーズがなければ優勝・そして個人TTの第4ステージも2位になったうえで第5ステージの集団スプリントでもまた優勝と、実に完璧な成績だった。しかも週末の山岳ステージに入ったらすぐさま脱落するなど、マイヨ・ヴェールへの本気度が十分に伝わるピーキングがされており、期待できる。
もちろん、本当にツール本番で彼が「山岳アシスト」として活躍できないのだとしたら、それはログリッチにとっても損失ではあるだろう。何しろ彼の今年のパリ~ニースでの総合優勝はファンアールトのアシスト無しには成し得なかったのだから。
それでも、ファンアールトにマイヨ・ヴェールへと集中させ、そのためのアシストも用意するだけの度量が、このチームにはある。そして、それは決して失敗を予感させることがないというのが、また凄い。
ぜひ、マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェールのダブル獲得を、成し遂げてほしい。
今年の主な戦績
オンループ・ヘットニュースブラッド優勝
E3サクソバンク・クラシック優勝
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ区間2勝&ポイント賞
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、35歳)
オールラウンダー、178㎝・63㎏、出場日数31日
ラボバンク育成チーム出身でブランコの時代もベルキンの時代も経験してきた、チーム一筋プロ13年目の生え抜き大ベテラン。
当然、チームのエースとして活躍する時代もあった。2016年のジロ・デ・イタリアでは第14ステージから第18ステージにかけて、マリア・ローザを着用し続けた。あの雪壁への激突さえなければ。
その後も、プリモシュ・ログリッチと共にツール・ド・フランスに挑み、彼の総合4位と並ぶ総合5位になったこともあれば、2019年には単独エースとしてツールに臨み、総合3位に輝いたこともあった。当時の彼はすでに自分がそこまで力を発揮できるとは自分でも信じられていなかったようで、「総合表彰台が目標だ」と発言していたうえで、見事それを射止める形となった。
それでも、再びエースとして走ることは難しいだろう。その代わり、それだけの実績のある男のアシストは、ときに恐ろしい風景を生み出しかねないということを、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは見せつけてくれた。
最終日第8ステージ。登坂距離11.3㎞・平均勾配9.2%という超難関峠プラトー・ド・ソレゾンへと登る山頂フィニッシュ。その登り初めでメイン集団の先頭に立ったクライスヴァイクは、ログリッチとヴィンゲゴーを背後に控えさせながら、一気にそのペースをカチ上げた。
途端に、集団から有力選手たちが脱落していく。まずは総合8位のマッテオ・ヨルゲンソン。そして残り8.5㎞で総合6位のダヴィド・ゴデュ。残り8.2㎞でブランドン・マクナルティとラヴニール覇者トビアスハラン・ヨハンネセン、残り7.4㎞で総合4位のテイオ・ゲイガンハート、そして昨年ジロ総合2位のダミアーノ・カルーゾまでもが、あっという間に突き放されていった。
残り6㎞ですべての逃げ集団を捕まえ、先頭集団となったクライスヴァイク率いるメイン集団には、もうログリッチとヴィンゲゴーと総合3位ベン・オコーナー、他総合9位のジャック・ヘイグ、総合12位のエステバン・チャベスの計6名しかいなくなっていた。
そして残り5.7㎞。クライスヴァイクが腰を上げ、さらにペースを上げると、ヘイグ、チャベスは一瞬にして突き放された。唯一生き残ったオコーナーも、連続するクライスヴァイクの加速に耐えきれず、ついに残り5.4㎞で脱落してしまった。
すなわち、クライスヴァイクは残り11㎞から5.7㎞にわたり、たった一人ですべてのライバルを突き放し、先頭にチームのエースとサブエースだけを残すという偉業を成し遂げたのである。しかもその後、それだけの仕事をしたにも関わらず、彼は区間9位で悠々とフィニッシュするというおまけつきで。
ステフェン・クライスヴァイクが、今回、近年でも稀にみるレベルの好調さでツールに臨もうとしていることが良く分かる。
その力を維持したまま、ツール・ド・フランスでエースを頂点に送り込めるか。
今年の主な戦績
ツール・ド・ロマンディ総合7位
セップ・クス(アメリカ、28歳)
クライマー、180㎝・61㎏、出場日数28日
2018年ツアー・オブ・ユタで突然頭角を現し、翌年のブエルタ・ア・エスパーニャではグランツール初勝利。そして2020年ツールにおける、プリモシュ・ログリッチ最高の右腕としての走り。今でこそヨナス・ヴィンゲゴーがその位置に立っているように思うが、昨年ツールでは区間1勝するなど、まだまだトップクライマーとして信頼できるアシストであることは間違いない。
前哨戦ツール・ド・スイスでは総合上位も期待されたが、Covid-19の影響でチーム毎撤退したため結果は得られず。その混乱が、本番での彼の走りに影響しなければいいのだが。
今年の主な戦績
フォーン・アルデシュ・クラシック3位
ツール・ド・ロマンディ総合12位
クリストフ・ラポルト(フランス、30歳)
スプリンター、191㎝・76㎏、出場日数23日
今年からユンボ・ヴィズマ入り。期待されていたが、その期待に応える、ある意味それ以上の結果をもたらしてきており、シーズン冒頭に発表されたツールメンバーには入っていなかった中で、しっかりとその座を獲得した。
3月には上記写真にあるようにパリ~ニースでログリッチ、ファンアールトと共に終盤で抜け出し、自身初のワールドツアー勝利獲得。北のクラシックでもベノートと共にファンアールトのアシストとして奮迅し、E3サクソバンク・クラシックではファンアールトのアタックに食らいついていき、こちらもワンツーフィニッシュを達成した。
そして前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、第5ステージであわや逃げ切りという状況の中で、最後の最後、しっかりとファンアールトをリードアウトしてこれを捕まえ、エースにしっかりと勝利を届けた。
今回のツール・ド・フランスも、ファンアールトのマイヨ・ヴェール獲得の上で決して欠かすことのできない重要な選手となるだろう。
今年の主な戦績
ヘント~ウェヴェルヘム2位
E3サクソバンク・クラシック2位
ロンド・ファン・フラーンデレン9位
ティシュ・ベノート(ベルギー、28歳)
パンチャー、190㎝・72㎏、出場日数18日
こちらもワウト・クラシック班強化を目的に新加入を果たした男。ストラーデ・ビアンケを制し、ブルターニュ・クラシック2位や今年もドワースドール・フラーンデレン2位・アムステルゴールドレース3位などクラシックでは十分にエースを張れる実力があると共に、過去にパリ~ニースの山岳ステージで逃げ切るなど、登坂についてもかなり適性をもつ。
上記ラポルトの項目で言及したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージでも、終盤に猛牽引を働き逃げを捕まえるうえでの大きな貢献を果たしている。今回、ローハン・デニスが出場しなくなったこのチームにおいて、平坦牽引から山岳序盤の牽引において力を発揮するのは間違いないだろう。
今年の主な戦績
ドワースドール・フラーンデレン2位
アムステルゴールドレース3位
E3サクソバンク・クラシック9位
ネイサン・ファンフーイドンク(ベルギー、27歳)
ルーラー、193㎝・78㎏、出場日数22日
年初ツールメンバーが発表されたときにメンバー入りしていたローハン・デニスが急遽出場しなくなり、代わりに選ばれたのがこのファンフーイドンクである。デニスの代役であり、またそれはすなわち、昨年引退したトニー・マルティンの代役でもある、重要な役割。しかし今年の北のクラシックやパリ~ニースでは、エースたちを発射させる前段階の牽引を担う、すなわちクイックステップ・アルファヴィニルのアルデンヌ・クラシックにおけるドリス・デヴェナインスのような役割を担う男として、かなりの実績を誇ってきた男だけに、その素質は十分すぎるものがある。
今大会も、どうしても集団の先頭を牽く姿が多くなるだろうが、その活躍にしっかりと期待していきたい。
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