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スーパープレステージ2020-2021 第5戦 ボーム

シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「スーパープレステージ」の第5戦が、12/6(日)にベルギー・アントウェルペン州の街ボームを舞台に開催された。

アップダウンの激しい地形で石畳やサンドセクション、泥にまみれた非常に走りづらい登りなどが走者を苦しめる。

担ぎ区間などは少ないものの、全体的にパワーと体力を必要とするハードコースとなった。


1.女子レース

今回は6周

2周目には現在総合首位で第1戦・第2戦を優勝している世界王者セイリン・アルバラードアルペシン・フェニックス)と総合2位で過去2戦を優勝しているルシンダ・ブラントテレネット・バロワーズライオン)、そして総合4位で前節2位のデニーセ・ヴェツェマパウェルズ・サウゼンビンゴール)の3名がパックになって先頭へ。

これを単独4位で追いかけるのがわずか18歳のパック・ピーテルス(アルペシン・フェニックス)。今年のU23ヨーロッパ王者であり、エリートカテゴリのレースでもここまでコッペンベルフクロスで8位、メルクスプラスで9位、そして前回のUCIワールドカップ初戦ターボルでは6位と目覚ましい活躍を見せているオランダの至宝である。

しかし4周目に入るとアルバラードとブラントの2人旅に。

そして5周目の冒頭のバイク交換エリアで二人ともバイク交換をしようとした際に、先頭を走るブラントが交換し終えたバイクを投げ捨てた際、それを受け取る者がおらず、そのまま後ろを走っていたアルバラードの目の前に。

これに絡んで落車するアルバラード。さすがにブラントも足を止め彼女が追いつくまで待っていたが、このときの落車が原因なのか、これまでのレース同様マウンテンバイクなどでの疲れが癒えておらず体力が続かなかったのか、このあとのアルバラードはずるずると遅れていく。

結果、ブラントがスーパープレステージ3連勝。途中に挟まっていたX2OトロフェーやUCIワールドカップも含めると3大シリーズ戦5連勝となり、今期圧倒的に絶好調であることを示し、スーパープレステージ総合でもアルバラードと同点首位に立った。

【スーパープレステージ女子 第5戦ボーム リザルト】

スーパープレスティージュ第5戦ボーム女子 リザルトB

【スーパープレステージ女子 第5戦までの総合リザルト】

スーパープレスティージュ女子第5戦までの総合リザルト


2.男子レース

男子は9周

3周目には先頭5名が固定される。総合首位でヨーロッパ王者のエリ・イゼルビットパウェルズ・サウゼンビンゴール)、総合2位で元ベルギー王者のトーン・アールツテレネット・バロワーズライオン)、総合4位で第3戦メルクスプラス及び前節ターボル勝者のマイケル・ファントールノート(パウェルズ・サウゼンビンゴール)、総合6位のコルネ・ファンケッセルトルマンス・シクロクロスチーム)、そしてワウト・ファンアールトチーム・ユンボ・ヴィズマ)の5名である。

後方からは現ベルギー王者のローレンス・スウィーク(パウェルズ・サウゼンビンゴール)、さらには今年20歳の若き才能ライアン・カンプ(パウェルズ・サウゼンビンゴール)が追走。

その後ろには来年イネオス・グレナディアースに移籍することが決まっている今年ベイビー・ジロ覇者トム・ピドコックトリニティ・レーシング)の姿もあった。

しばらくの間、この「先頭5名」は変わらず推移していくことに。

パワーを必要とする登り区間ではたびたびファンアールトがペースを上げて抜け出そうとするも決まらず、本来の彼の実力が十分に発揮されていないことをはっきりと示していた。

逆に6周目くらいからはイゼルビットとアールツが先頭で抜け出し、これをファンアールトとファントールノールトがかろうじて追いすがるような場面も見られるようになっていき(ファンケッセルはこの頃には脱落)、ファンアールトにとっては苦しい時間を過ごすことに。

そしてレース終盤。7周目。コース前半の難関「泥の登り」の中腹でトーン・アールツがタイヤをとられてバイクを下りる。

さらにその頂上付近で今度はワウト・ファンアールトがミスをしてバイクを下りる形に。その背後にいたファントールノールトもその巻き添えを食らって足を止め、その隙に先頭を走っていたエリ・イゼルビットが独走を開始する。

さらにその後のカーブでアールツが単独で落車し、8周目には今度はファンアールトが落車。

スリッピーな路面でホイールに絡みつく泥がバイクコントロールを難しくしているのは確かだが、このライバルたちの「自滅」によってイゼルビットの逃げ切りは確定的に。単独で追走を仕掛ける形になったのもチームメートのファントールノートということで、この日最もミスをせず安定した走りを見せていたイゼルビットが今期スーパープレステージ2勝目、シーズン通算6勝目を飾り、スーパープレステージ総合争いでも2位アールツをさらに引き離す格好となった。

【スーパープレステージ男子 第5戦ボーム リザルト】

スーパープレスティージュ第5戦ボーム男子 リザルトB

【スーパープレステージ男子 第5戦までの総合リザルト】

スーパープレスティージュ男子第5戦までの総合リザルト


今期シクロクロス参戦後、最初の2戦ではいずれも表彰台に登る結果となったワウト・ファンアールト。

しかし今回の「ボーム」では、ついに表彰台すら失う結果に。

しかも最後は完全に体力を失ってしまったような様子で、トーン・アールツから突き放されての4位である。

さすがのワウト・ファンアールトも、あまりにも絶好調すぎたロードレースでの疲労が抜け切れていないのか。直近でも複数回の授賞式があったり、妻のサラさんが出産間近という事情もあるだろう。

それでも、ロードレースとシクロクロスという二足の草鞋を履くワウト・ファンアールトが、シクロクロス専門でその実力をめきめきと伸ばしつつあるエリ・イゼルビットや、ベテランのアールツ、ファントールノートらにはっきりと敗北しつつあることは、一つの時代の変化を感じさせるのに十分なものであった。

あとは、同じく二足の・・・いや今年は別としてもマウンテンバイクとの「三足の草鞋」すら履いているマチュー・ファンデルポールが参戦したときに、果たしてどんな走りを見せるのか、が気になるところ。

この苦しさはファンアールトだけのものなのか。それともファンデルポールもやはり味わうものなのか。


そんなマチュー・ファンデルポールの参戦は来週12/12(土)X2Oバドカマー・トロフェー第3戦「アントワープ」で予定されているはず。

ここにはワウト・ファンアールトは残念ながら出場しないが、シクロクロス本業選手たちが覇を競い合う今年のトップリーグで、果たして「怪物」がどんな戦い方を見せるのか、実に楽しみだ。


参考:昨年のイゼルビットとファンデルポールの戦いの記録


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