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ジロ・デ・イタリア2021 第14ステージ

イタリアを舞台に開催される今年最初のグランツール。サイモン・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、エガン・ベルナル、レムコ・エヴェネプールなどが覇を競い合う、なかなか予想のつかない3週間。

第14ステージはチッタデッラからゾンコランまでの205㎞山岳ステージ。

いよいよ今大会の目玉の1つである「悪名高きゾンコラン」が登場。

その前に登場する2級山岳もそれなりの難易度ではあるものの、基本的にはやはり最後のゾンコランで決着がつくことになるだろう。

エガン・ベルナルは引き続き力を見せつけそのマリア・ローザを盤石なものとするか。

それともアレクサンドル・ウラソフやジュリオ・チッコーネ、あるいはサイモン・イェーツなどが反撃に出られるか。

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アクチュアルスタート直後にヴィクトール・カンペナールツ(キュベカ・アソス)トーマス・デヘント(ロット・スーダル)など逃げを得意とする面々が次々とアタックをかけるが簡単には決まらない。

そのうち、集団の先頭に立ったエドアルド・アッフィニ(ユンボ・ヴィスマ)の加速によって唐突に集団の先頭付近が千切れ、11名の小集団に。

同じくらいの数の追走集団もできたものの、これ以上逃げの人数を増やしたくないイネオス・グレナディアーズがフィリッポ・ガンナを先頭に本気の追いを見せたことでこの追走集団は吸収。

その後もいくつか逃げに乗ろうとするアタックが散発的に出るものの、そのすべての思惑は無に帰し、最終的には最初にできた11名がそのままこの日の逃げとして確定した。

アンドリー・ポノマー(アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス)
レミー・ロシャス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ヴィンツェンツォ・アルバネーゼ(EOLOコメタ)
ロレンツォ・フォルトゥナート(EOLOコメタ)
ジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィスマ)
エドアルド・アッフィニ(ユンボ・ヴィスマ)
ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)
ジャコポ・モスカ(トレック・セガフレード)
アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチーム・エミレーツ)

タイム差は最大で8分を超えるほどにまで広がったが、アスタナ・プレミアテックの選手がイネオスの前に出てタイムコントロールを開始。

のこり58.1㎞地点の2級山岳をメイン集団が通過した頃にはタイム差が6分を切り、逃げ切りはやや難しくなってきた。

そしてこの2級山岳からの下りで、アスタナ・プレミアテックが攻撃を開始。

一時、メイン集団からイネオス・グレナディアーズの総合首位エガン・ベルナルジョナタン・カストロビエホ、そしてアスタナ・プレミアテックの総合2位アレクサンドル・ウラソフゴルカ・イサギレルイスレオン・サンチェスハロルド・テハダの4名、そしてバーレーン・ヴィクトリアスのペリョ・ビルバオの計7名が抜け出す形に。

総合3位ダミアーノ・カルーゾ、同4位ヒュー・カーシー、5位サイモン・イェーツなどは30秒ほど差をつけられて追走し、総合7位のレムコ・エヴェネプールはさらにそこから遅れる。

アスタナの大胆な攻撃ではあったものの、下り切って登り返しに入ったところで結局また集団は1つになった。


上記の動きによって一時は5分を切っていた逃げ集団とメイン集団とのタイム差も、集団が1つになったあとは落ち着き、再び6分を超える。

のこり14㎞でついにゾンコランの登りに突入。先頭からはすでにアルバネーゼやロシャス、さらにはここまでひたすら牽引し続け、メイン集団とのタイム差維持に貢献し続けてきたアッフィニも脱落。

そして残り11㎞で先頭からトラトニクがアタック。そのまま独走を開始する。

さらに残り10㎞からフォルトゥナートもアタック。ベネット、モレマ、オリヴェイラといった有力勢はここについていけない。

ここまでついてきた今大会最年少(18歳)のポノマーもまた、ここでついに脱落してしまう。


先頭が残り10㎞を切ってメイン集団とのタイム差は5分27秒。

メイン集団ではアスタナ・プレミアテックのゴルカ・イサギレが牽引。その後ろにはルイスレオン・サンチェス。普段はそのあたりから集団先頭を支配し始めるイネオス・グレナディアーズはまだアシストを4枚残してはいるが先頭には出ない。ゆえにタイム差もそこまで急激には縮まらない。

先頭残り8㎞。ここでイネオスのジャンニ・モスコンが先頭に出て牽引を開始。ここからイネオス山岳トレインが始動。アスタナのアシストは完全に脱落し、ウラソフは1人になる。

先頭残り7㎞でモスコンが脱落。ジョナタン・ナルバエスが集団先頭に。

先頭ではフォルトゥナートがトラトニクに追い付く。タイム差はまだ5分16秒。

先頭残り5㎞。メイン集団は残り6㎞。ナルバエスが終了。すでにヴィンツェンツォ・ニバリアッティラ・ヴァルテルも遅れる。集団先頭はジョナタン・カストロビエホに。

タイム差は少しずつ縮まっていく。先頭残り3㎞、メイン集団は残り4㎞。タイム差は3分51秒。カストロビエホが牽引中。まだメイン集団の数はそれなりに残っており、サイモン・イェーツの傍にもアシストのニック・シュルツがしっかりとついている。

先頭残り2.4㎞。50秒差で追いかける追走集団(ベネットやモラノがいる集団)からアレッサンドロ・コーヴィがアタック。16%の激坂勾配で。まだ22歳のネオプロ2年目。

先日の第11ステージ2位に続く好走。彼もまた、このジロ・デ・イタリアで成長しつつある男だ。

先頭残り2.3㎞。12%勾配区間でフォルトゥナートが加速。トラトニクを突き放し、単独先頭に。

先頭残り1.9㎞。先頭フォルトゥナートと3番手のコーヴィとのタイム差は45秒。メイン集団とのタイム差は3分16秒。ミケル・ニエベ(チーム・バイクエクスチェンジ)ダヴィデ・フォルモロ(UAEチーム・エミレーツ)が脱落。レムコ・エヴェネプールが集団の後方に。

そしてカストロビエホも脱落。ベルナルのアシストはダニエル・マルティネスのみに。

先頭残り1㎞。タイム差3分。ルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO)ヤン・ヒルト(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)が脱落。そしてエヴェネプールもついに脱落。ジョアン・アルメイダがアシストのために降りてくる。

集団もいよいよ20名未満に。アレクサンドル・ウラソフも、かなり苦しそう。


そして先頭残り900m。サイモン・イェーツがここでアタック。

前に出てからは一切振り返らず、ひたすら30秒間、まっすぐ前だけを見てダンシングで突き抜けていく。

そしてここにぴったりと食らいつくベルナル。

サイモン・イェーツはそのあとも背後のベルナルを気にせずひたすらにペダルを踏んでいく。その姿はここまで少しずつ山で遅れ続けていたことがすべて幻だったかのような圧倒的な走りだ。

しかしベルナルも焦ることなく冷静にこの後輪を捉え続ける。そして残り500mを切ってから無線をいじり、背後を振り返り、それからついに、ベルナルも腰を上げ、サイモン・イェーツを突き放していった。


だが、その走りも先頭のフォルトゥナートを捉えることはできなかった。

1996年生まれの25歳。2016年にはティンコフのトレーニーとしてコンタドールと同じチームで短期間走り、その後はバルディアーニやヴィーニザブを経て、今年からEOLOコメタの一員に。

そしてチームとしてはProチームになってからの初の勝利、そしてフォルトゥナート自身にとってもプロ初勝利を、このジロ・デ・イタリア、しかも伝説のゾンコランで成し遂げることになるなんて・・・

第14ステージ


そしてエガン・ベルナルはサイモン・イェーツを11秒突き放しての区間4位。

総合2位ウラソフを1分22秒、総合3位カルーゾを39秒突き放して自身の地位を盤石に。

ただ、サイモン・イェーツもここで躍進し、一気に総合2位に上り詰める。

第14ステージ終了時点の総合タイム差

まだタイム差は1分33秒。

まだ今大会最も厳しいステージを迎えてはいない。それは第16ステージ、総獲得標高5,700m超えの超難関ステージ。


まだまだ結末は予想できない。

果たして最後に微笑むのは一体、誰だ?

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