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UCIロード世界選手権2022「ウロンゴン」エリート男子個人タイムトライアル

エリート女子個人タイムトライアルに続き、今年の世界選手権初日となる9/18に開催されるエリート男子個人タイムトライアル。

「世界最速」を巡る戦いを詳細に振り返っていこう。

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最初にトップタイムを記録したのは9番手出走のエドアルド・アッフィニ(イタリア、26歳)。しばらくの間ホットシートに座り続けていたアッフィニだが、19番手出走のブルーノ・アルミライル(フランス、28歳)が第1計測地点ではアッフィニから13秒遅れだったが第2計測地点で16秒更新。さらにフィニッシュでも18秒更新となり暫定首位に立った。

その直後のイヴ・ランパールト(ベルギー、31歳)も第1計測地点こそアッフィニには届かなかったが第2・フィニッシュともにアルミライルをさらに1秒更新して暫定首位に。

その次の優勝候補でもあるシュテファン・ビッセガー(スイス、24歳)もやはり第1計測地点ではアッフィニを上回ることはできなかったが、第2計測地点ではランパールトを7秒、フィニッシュ地点では22秒も更新して圧倒的な暫定首位に立つこととなった。

フィリッポ・ガンナも倒したことのある若き才能ビッセガー。ついに彼の時代がやってくるか?


ビッセガー出走から1時間半後の38番出走となったマグナス・シェフィールド(アメリカ、20歳)が第1計測を9秒更新。2時間塗り替えられることのなかったアッフィニの記録がついに打ち破られた。

そのまま第2計測地点でもビッセガーの記録を21秒更新。さらにこの第2計測地点の記録を、2019年ツール・ド・ラヴニール覇者トビアス・フォス(ノルウェー、25歳)が20秒も更新。一気にビッセガーの記録が40秒も塗り替えられることとなった。

第1計測地点の記録はさらにイーサン・ヘイター(イギリス、24歳)が更新して暫定首位に。その後の走りにも大きな期待が寄せられたが、彼は第2計測地点前にチェーン落ちというトラブルに見舞われ、脱落。

さらに上位入り間違いなしとみられていたネオプロのシェフィールドも、カメラには映っていなかったがどうやら落車に見舞われたようで、最終的には大きく遅れてのフィニッシュとなってしまった。イネオスの期待の若手たちは素晴らしい走りを見せてくれたが、いずれも不運に泣くこととなった。


そして、第1計測地点の最高記録を叩き出したのが、最後から4番目の出走となるシュテファン・クン(スイス、28歳)

アッフィニよりも13秒早く、暫定首位のヘイターの記録も2秒更新。直後のタデイ・ポガチャルは16秒遅れの暫定8位と振るわず、エヴェネプールは0秒60遅れでわずかに届かず、そしてフィリッポ・ガンナも2秒以上の遅れを見せることに!

クンがついに、念願の頂点を掴み取るか!?


コーナーを、中間分離帯を、すべてギリギリのラインを取って攻めに攻めていくクン。女子レースでもグレース・ブラウンがギリギリのコース取りを行った結果好成績を叩き出していたが、まさにクンもそういった走りの中、誰よりも速い速度で駆け抜けていく。1分半前に出走しているバウケ・モレマも軽々と追い抜き、モレマもその背後につこうとするがいとも簡単に引き千切られていく。

トビアス・フォスがフィニッシュ地点で、シュテファン・ビッセガーが1時間半守り続けていたトップタイムを46秒81更新して圧倒的な暫定首位。

しかしフォスが残した第2計測地点の記録をクンがさらに11秒53更新。

エヴェネプールは第2計測地点で15秒50遅れで暫定3位、フィリッポ・ガンナも何かアクシデントでもあったのか、39秒45遅れと大失速。

すべての障壁が取り払われ、クンが待ち望んでいた世界最強の座が、現実的なものとなってきた。


しかし――残り1㎞。この時点でクンは39分07秒08。対してフォスのフィニッシュタイムは40分02秒78。つまりクンはラスト1㎞を55秒70で駆け抜ける必要がある。

最後に小さな登りが待ち構えている中、この差は――微妙では?

残り300mで17秒05。そして――残り50mで、40分02秒78を超える。フィニッシュラインでの記録は40分05秒73。わずか2秒95、フォスの記録に届かなかった。


この瞬間、トビアス・フォス。2019年ツール・ド・ラヴニール覇者でありながら、これまでTTでの勝利は国内選手権のみ。TTは強くても、決して世界の頂点に立つとは思われていなかった男の、まさかの勝利であった。

年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。


最後わずか3秒届かなかったクン。第2計測地点からフィニッシュまでの間に15秒も失うこととなったわけだが、この最終区間ではビッセガー、エヴェネプール、ヘイターよりも遅い区間5位。前半をハイ・ペースで刻み過ぎ、最後まで力を残せなかったという結果と言えるだろう。

なお、クンに加えてチームメートのアルミライルも10位に入り込み、女子でもグレース・ブラウンとヴィットーリア・グアッツィーニが上位に入り込むなど、FDJは男女とも今大会で「意外な」部分も含めて大活躍。共通して使用しているラピエールのバイクにも何か秘密があるのかもしれない。

そんなFDJを打ち倒し、今年の「最速」はノルウェー人の手に。

強豪選手が集まるユンボ・ヴィズマの中で、フォスは引き続き存在感を示していくことができそうだ。

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