UCIロード世界選手権2022「ウロンゴン」エリート女子個人タイムトライアル
いよいよ開幕した今年の「世界最強」決定戦。今年はオーストラリア東岸、シドニーから南70㎞に位置する港町「ウロンゴン」を舞台に繰り広げられる。
その初日はエリート男女の個人タイムトライアル。まずは女子個人タイムトライアルの方を見ていこう。
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序盤でトップタイムを記録したのは地元オージーの逃げスペシャリスト、グレース・ブラウン(オーストラリア、30歳)。
7.2㎞地点に用意された第1計測地点ではそれまで暫定首位であったアリソン・ジャクソン(カナダ、33歳)を30秒以上更新して堂々たる暫定首位。コーナーでもかなり攻めたコース取りをしており、地元での優勝に向けた気合は十分だ。
そしてこのブラウンの成績、実際圧倒的であった。フィニッシュ地点ではそれまで暫定首位であったシリン・ファンアンドローイ(オランダ、20歳)を2分近く更新。平均時速でもファンアンドローイが42.3㎞/hなのに対しブラウンは44.7㎞/h。平均時速で2㎞/hもの大差がついている。
注目されていたロッタ・コペッキー(ベルギー、26歳)も1分半、ミーク・クローガー(ドイツ、29歳)も2分以上の大差がつけられ、次第にブラウンが圧倒的であることが明らかになりつつある。
昨年の東京オリンピック個人TTで4位。今年はリエージュ~バストーニュ~リエージュ2位など、着実に成績を伸ばしつつあるブラウン。このまま世界の頂点を掴み取ることができるか?
その最大のライバルと目されていたのは昨年3位、そして東京オリンピック個人TT優勝のアネミーク・ファンフルーテン(オランダ、39歳)が出走。ブラウンのこの驚異的な記録を打ち破れるとしたら、彼女かロイッセルかファンダイクくらいかと思っていたが——ファンフルーテン、全然遅い。
第1計測地点でブラウンから26秒遅れの暫定5位。ブラウンから大きく遅れるのはまだしも、それ以外の選手たちと比べても(本来の彼女のポテンシャルからすると)平凡な記録といったところで、明らかに調子が悪い。コーナーも全然攻められていない様子が見受けられ、ジロ・ツール・ブエルタの同年制覇(トリプルツール)を達成している圧倒的な今年のファンフルーテンが、ここにきて疲労が明確な影響を表し始めたか。
ロードレースで復活すればよいのだが・・・。
いよいよブラウンの世界王者が現実味を帯びつつあったとき、ついにその第1計測の記録を更新する選手が現れる。最後から2番目の出走となる、昨年2位のマーレーン・ロイッセル(スイス、30歳)。さすがの走りでブラウンの記録を1秒更新する。
さらに、最終出走のディフェンディングチャンピオン、エレン・ファンダイク(オランダ、35歳)がさらにこのロイッセルの記録を9秒更新。ブラウンからは10秒更新し、いよいよ頂上決戦が開幕する。
2周目のマウント・アスリー頂上に設定された第2計測地点ではロイッセルが失速し始めてブラウンから12秒遅れで通過するが、ファンダイクは継続してペースを上げ続けブラウンを22秒更新。
過去2回の世界王者を経験しているファンダイクのさすがの走り。このまま強さを見せつけて最後まで行くのか。
最終的にはロイッセルはブラウンから29秒差でフィニッシュ。後半でかなり失速――あるいはブラウンが後半にかけてペースを上げていた――ことが良く分かる。
そしてファンダイクもまた、後半にかけてはブラウンよりも遅いペースで進行するようになったようだが・・・それでも、第2計測地点まで蓄積していた貯金は十分だったようだ。最終的にはブラウンの記録を12秒更新し、堂々たる世界選手権TT連覇を果たすこととなった。
最終的には勝てなかったものの、間違いなく飛躍したグレース・ブラウンも笑顔で表彰式に立ち、地元ファンたちの声援を一身に集めることに。チームメートのヴィットーリア・グアッツィーニも4位に入り、U23アルカンシェルも獲得。今年、チームとしても非常に大きな成果を上げつつあるこのFDJスエズ・フチュロスコープは、来シーズンの爆発にも大いに期待したいところ。
結果として、思ったよりも厳しい登り(見た感じ平均時速20㎞もいかないスピードで登っていた様子が見受けられた)と、テクニカルなコーナリングが勝敗を分けた印象のある今大会のTTコース。
このあとの男子も、不運の多いシュテファン・ビッセガーや、今年ツールのTTでコーナリングで失敗していた印象の強いフィリッポ・ガンナなどの優勝候補たちにも、やや不安が残る結果となっている。
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